大好きなのにゼッタイ付き合えない

花梨

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第一章

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「ねー、お腹空いたし、混む前にお昼食べよ!」
 栞奈ちゃんの提案で、私たちはフードコートへ行くことにした。私は、手軽に食べられるハンバーガーと、ガムシロップたっぷりのアイスティーを注文。
 食事の間、みんなは楓真の好きなものについて尋ねている。そういえば、私は楓真の好きなものを何も知らない……。
「好きなアイドルとかいますー?」
 まりなちゃんの質問に、楓真はコーラを飲みながら小さく首を振る。
「アイドルとか有名人はあんまり見ないかな」
 へぇ。
「好きな動画配信者とかも?」
「あんま観ない。ショート動画も苦手」
 わかる。私も次から次に流れてくる動画が苦手。
「あ、でもかわいい動物の動画はよく見るかも」
 へぇ、やっぱり動物好きなんだ。
「波奈ちゃんの好きなところは?」
 ドキッとする。急に私の名前がでてきた。
 え、どこって答えるんだろう。ちょっと、楽しみだけど、適当にはぐらかされる予感。
「そうだなぁ」
 楓真は私をちらっと見て、みんなの方を向いた。
「そうだな……いつもまっすぐで一生懸命なところ、かな」
 まっすぐで、一生懸命……。
「時に暴走することもあるけど、自分のことを信じて突き進めるパワーは尊敬してる」
 その言葉に、私は心臓がドキドキしはじめた。
 『思い込んだら一直線に突き進むのは自分の短所』だと思っていた。けど、楓真は尊敬しているって。
 私は、楓真のことぜんぜん見ていなかった。でも、楓真は私を見ていてくれたんだ……。
 どうしよう、恥ずかしくて顔を見れない。
 うつむいて視線を泳がせていると、楓真の白いTシャツに、ホットドッグのケチャップがこぼれているのが見えた。
「ああもう、ホットドッグのケチャップこぼして!」
 慌てて、カバンからウェットティッシュを取り出す。
 シミにならないよう、ケチャップを一生懸命ウェットティッシュで拭いていく。
 まったくもう、抜けてるところがあるんだから。
 なかなか、ケチャップの赤い色が落ちない。
「悪い。あとは自分でやるから。もう大丈夫だから」
 楓真の声で我に返る。夢中でシミ取りをしてしまった。
「やっだぁ、甲斐甲斐しい~。波奈ちゃんはいいお嫁さんになるね」
 栞奈ちゃんが、おばちゃんっぽいしゃべり方でからかってくる。
「そんなんじゃ……!」
「栞奈ちゃん、『いいお嫁さん』は今の時代あまり適切ではないですよ」
 メグちゃんの冷静なツッコミに、栞奈ちゃんは「わかってるよーわざとだよー」と笑った。
 栞奈ちゃんのセリフは冗談であっても、あれこれ世話焼きしまくってるのは事実。
 楓真なんて、ぜんぜん興味ないはずなのに!
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