大好きなのにゼッタイ付き合えない

第一章

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　なんで楓真が私の部屋にいるかって言うと……楓真のお母さんは、外国で働いている。
　そして、お父さんは毎月決まって出張が入っている。
　両親がいない間、年の離れたお兄さんである悠真くんが楓真の面倒を見ていたけど、悠真くんも大人になって忙しくなってしまった。
　だから、お父さんが出張の間だけ、お隣である我が家で生活することになったんだ。
　とはいえもう中学3年生だから、夜ごはんだけ食べに来て、さっさと家に戻ることが多いんだけどね。
　中2くらいまでは、ひとりは怖いーってずっと我が家に住み着いていた可愛い男の子だったのに。今は見る影もなく、ちょっと大人になってしまっている。
　だから今日も夕飯後に帰り支度をしかけている楓真を捕まえて、私の部屋にお呼びして「彼氏のふりをして」とお願いしたわけなんだけど……。
「ウソつきになりたくないのはわかるけど、意味ないと思うけどな」
　呆れた顔で、正論を言う。
「意味はある！　楓真もわかるでしょ。見栄はったことがバレたら、学校でどういう扱いになるか」
　思春期真っただ中にいる私たちが、学校で浮いた行動をとればどうなるか。楓真も身をもって知っているはずだ。
　見栄を張ってウソついただなんて知られたら……考えただけで恐ろしい。
「うーん、それは……そうだよなぁ……」
　学校で浮きたくない気持ちは、楓真もいっしょ。
　よしよし、あと一押し。
「どうせ、みんな1回確認したら飽きるだろうから！　お願い、明日ヒマでしょ？」
「明日なのかよ」
　土曜日、みんなで水族館に行くついでに「年上の彼氏も連れていこうかなぁ」なんて言っちゃったわけで。なんでそんなこと言っちゃったんだろう。
「明日は部活も塾もないし……しょうがないな」
「やった！　助かる！」
　あきれたように息をフッと吐きつつ、1日だけ、楓真が彼氏になってくれることになった！
「その代わり、もう二度と見栄を張るなよ」
「はーい」
　良かった、これで平穏に学校生活を送れる！