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こちらはシェルター村です。
法律的に危ないんですけど。
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「身長は何センチ?体重も教えてほしいなぁ」
「173cmで60kgです」
「結構痩せてるんだねぇ。じゃあ、好きな食べ物はぁ?」
「はんぺんです」
「はんぺん?知らないなぁ。出身地では流行ってるのかい?」
「あぁ。まあ、好きな人は好きだと思いますよ」
何この会話。淡々と進められていくものの、自分でもよくわからない。確かに、装備を作る上でこの会話は大切だと思うけど……。それにしても初めましてで凄く気まずい。
それに、
「あ、今気まずいって思ったでしょぉ?大丈夫だよぉ。リラックスリラックスー」
なぜか、俺の心が読まれていることについて悪寒がする。怖い。なんで気まずいとかバレてるの?ああ。とすると、この考えもバレてるのか。え、じゃあこの会話いらなくない?
「会話は必要さぁ。装備を作るのに、モチベーションってものが上がらないからねぇ。もう少しだけ、質問させて?」
「あ、はい。どうぞ……」
「やっぱり緊張してる。リラックスして、会話するだけで良いんだよぉ。まずは肩の力を抜くこと。いいね?」
「分かりました。ところで、装備ってどんなものができるんですか?」
「えへへ。内緒」
うわぁ。俺が一番苦手にしてるやつだ。非日常は好きだ。何が起こるか分からないから。しかし、相手が分かっているものを自分が知らないのはなんとなく釈然としない。負けず嫌いなんだなとつくづく思う。
「よし!会話しゅーりょー!作ってくるからちょっとだけ待っててねぇ。どんなのができるかはお楽しみにぃ」
「はい。よろしくお願いします」
「あははは!まだまだ君はかたいねぇ。何回リラックスしてって言わせるのぉ?まあいいけど」
そういうと、マスターは奥の方に入っていった。あの奥で装備が作られるのか。そういえば、エイルはどんな装備を持っているのだろうか。聞いたことがなかった。
「エイルってどんなの持ってるの?」
「え?私?私はこの剣よ。指で数えられるくらいしか使ったことはないけれど」
エイルが見せてくれたのは。冒険者が使うようなキラキラとした剣だった。……高そう。こんなの作れるくらいの大富豪になれればな……。でもまだ年収100万の下っ端だ。ダンジョンで稼がないと。
「マスター……。変なの作ってこないといいけど。結構ナオヤの事気に入ってたから、よく分からないわ」
「え、気に入ってたら、変なの作るのか?」
「あの人、一回捕まってるのよ」
え。なんでそんな人に頼んだの?鍛冶屋なんて、いくらでもありそうなのに。この村。すると、エイルは続けた。
「作っちゃいけないものを作って、それをお客さんに渡して。それで捕まってるの。釈放されてからは、また鍛冶屋をやっているけれど、いまいち評判は良くなくて。まあ、それもそうよね。一度檻の中にいた人の作ったものなんて、誰も持とうとしないもの」
「じゃあなんで、こんな人に頼んだんだ?何か、特別な理由とか」
「マスターは腕は確かだから。この剣も昔、マスターが作ってくれたの。何回使っても折れないし、手入れもこっちでするからって言われてるけど、やっぱり私もどこかで不安がってるのよ。マスターの言ってること、正しくないんじゃないかって」
場の空気が哀愁漂う感じになってしまった。しかしながら、初耳だ。檻の中にいたなんて。とてもそんな素振りを見せなかったから流行ってないだけかと思っていた。え、マジで大丈夫なのか?普通に心配だ。
そんな俺の心配をよそにマスターは俺たちのところへ戻ってきた。
「出来たよぉー!!いやー張り切っちゃってすぐ作れたよ!はい!開けてみて!」
装備はプレゼントの箱のようなものに入っていた。
初の装備だから!とマスターがおまけしてくれたらしい。まあ、そのおまけあまり必要ないんだけど。
「じゃあ、開けますね」
「はいはーい。あけちゃってぇ」
ぱかっと箱を開けると、中からなんとも説明し難い、白いモコモコとした動物が出てきた。
すると、そばにいたエイルがかっと目を見開いて、怒鳴りだした。
「どういうこと!?マスター!!ナオヤはもう召喚獣を持っているのよ!!それなのに、精霊を増やしてどうするの!?」
は?精霊?こいつが?全くそんな風には見えないけど。モコモコは手のひらにのるサイズで時々きゅいー!などと鳴いている。一言で言うと、非常に可愛い。それでもエイルは怒鳴り続けた。
「精霊使いは一匹しか持ってはいけないのは原則なのよ!?それを鍛冶屋のマスターであるあなたが破ってどうするのよ!」
「大丈夫だよぉ。バレたりなんかしないって。それでバレたなら、僕が責任取ってあげる」
「冗談じゃないわ。もういい。ナオヤ、別のところで作ってもらいましょう」
エイルがマスターに背を向けて歩こうとした、その時だった。マスターがエイルに向けて弾丸をうったのだ。
あまりに瞬間的すぎて、唖然としてしまう。
「貰ってくれないなら怒るけど?死んでもいいんだ。別に僕は構わないけど」
さっきの穏やかなマスターは何処へやら。急に低い声になり、脅してきた。
「ねぇ、エイル。一回貰っとこ。それからまた考えればいいんだし」
「……。すぐに捨てるわよ。この精霊」
そう言ってエイルはモコモコを拾い上げた。
「あなたの事、上の人に報告しておいてあげる。覚悟しときなさい!」
エイルは再びマスターに背を向けてコツコツとハイヒールを鳴らしてドアの方に向かった。俺とダウトもその後を追い、最後にマスターに一礼して、鍛冶屋を後にした。
バタンとしまったドアの向こうがやけに気になって仕方がなかった。
******
少しシリアスな回でした。次は面白おかしくなると思います。
「173cmで60kgです」
「結構痩せてるんだねぇ。じゃあ、好きな食べ物はぁ?」
「はんぺんです」
「はんぺん?知らないなぁ。出身地では流行ってるのかい?」
「あぁ。まあ、好きな人は好きだと思いますよ」
何この会話。淡々と進められていくものの、自分でもよくわからない。確かに、装備を作る上でこの会話は大切だと思うけど……。それにしても初めましてで凄く気まずい。
それに、
「あ、今気まずいって思ったでしょぉ?大丈夫だよぉ。リラックスリラックスー」
なぜか、俺の心が読まれていることについて悪寒がする。怖い。なんで気まずいとかバレてるの?ああ。とすると、この考えもバレてるのか。え、じゃあこの会話いらなくない?
「会話は必要さぁ。装備を作るのに、モチベーションってものが上がらないからねぇ。もう少しだけ、質問させて?」
「あ、はい。どうぞ……」
「やっぱり緊張してる。リラックスして、会話するだけで良いんだよぉ。まずは肩の力を抜くこと。いいね?」
「分かりました。ところで、装備ってどんなものができるんですか?」
「えへへ。内緒」
うわぁ。俺が一番苦手にしてるやつだ。非日常は好きだ。何が起こるか分からないから。しかし、相手が分かっているものを自分が知らないのはなんとなく釈然としない。負けず嫌いなんだなとつくづく思う。
「よし!会話しゅーりょー!作ってくるからちょっとだけ待っててねぇ。どんなのができるかはお楽しみにぃ」
「はい。よろしくお願いします」
「あははは!まだまだ君はかたいねぇ。何回リラックスしてって言わせるのぉ?まあいいけど」
そういうと、マスターは奥の方に入っていった。あの奥で装備が作られるのか。そういえば、エイルはどんな装備を持っているのだろうか。聞いたことがなかった。
「エイルってどんなの持ってるの?」
「え?私?私はこの剣よ。指で数えられるくらいしか使ったことはないけれど」
エイルが見せてくれたのは。冒険者が使うようなキラキラとした剣だった。……高そう。こんなの作れるくらいの大富豪になれればな……。でもまだ年収100万の下っ端だ。ダンジョンで稼がないと。
「マスター……。変なの作ってこないといいけど。結構ナオヤの事気に入ってたから、よく分からないわ」
「え、気に入ってたら、変なの作るのか?」
「あの人、一回捕まってるのよ」
え。なんでそんな人に頼んだの?鍛冶屋なんて、いくらでもありそうなのに。この村。すると、エイルは続けた。
「作っちゃいけないものを作って、それをお客さんに渡して。それで捕まってるの。釈放されてからは、また鍛冶屋をやっているけれど、いまいち評判は良くなくて。まあ、それもそうよね。一度檻の中にいた人の作ったものなんて、誰も持とうとしないもの」
「じゃあなんで、こんな人に頼んだんだ?何か、特別な理由とか」
「マスターは腕は確かだから。この剣も昔、マスターが作ってくれたの。何回使っても折れないし、手入れもこっちでするからって言われてるけど、やっぱり私もどこかで不安がってるのよ。マスターの言ってること、正しくないんじゃないかって」
場の空気が哀愁漂う感じになってしまった。しかしながら、初耳だ。檻の中にいたなんて。とてもそんな素振りを見せなかったから流行ってないだけかと思っていた。え、マジで大丈夫なのか?普通に心配だ。
そんな俺の心配をよそにマスターは俺たちのところへ戻ってきた。
「出来たよぉー!!いやー張り切っちゃってすぐ作れたよ!はい!開けてみて!」
装備はプレゼントの箱のようなものに入っていた。
初の装備だから!とマスターがおまけしてくれたらしい。まあ、そのおまけあまり必要ないんだけど。
「じゃあ、開けますね」
「はいはーい。あけちゃってぇ」
ぱかっと箱を開けると、中からなんとも説明し難い、白いモコモコとした動物が出てきた。
すると、そばにいたエイルがかっと目を見開いて、怒鳴りだした。
「どういうこと!?マスター!!ナオヤはもう召喚獣を持っているのよ!!それなのに、精霊を増やしてどうするの!?」
は?精霊?こいつが?全くそんな風には見えないけど。モコモコは手のひらにのるサイズで時々きゅいー!などと鳴いている。一言で言うと、非常に可愛い。それでもエイルは怒鳴り続けた。
「精霊使いは一匹しか持ってはいけないのは原則なのよ!?それを鍛冶屋のマスターであるあなたが破ってどうするのよ!」
「大丈夫だよぉ。バレたりなんかしないって。それでバレたなら、僕が責任取ってあげる」
「冗談じゃないわ。もういい。ナオヤ、別のところで作ってもらいましょう」
エイルがマスターに背を向けて歩こうとした、その時だった。マスターがエイルに向けて弾丸をうったのだ。
あまりに瞬間的すぎて、唖然としてしまう。
「貰ってくれないなら怒るけど?死んでもいいんだ。別に僕は構わないけど」
さっきの穏やかなマスターは何処へやら。急に低い声になり、脅してきた。
「ねぇ、エイル。一回貰っとこ。それからまた考えればいいんだし」
「……。すぐに捨てるわよ。この精霊」
そう言ってエイルはモコモコを拾い上げた。
「あなたの事、上の人に報告しておいてあげる。覚悟しときなさい!」
エイルは再びマスターに背を向けてコツコツとハイヒールを鳴らしてドアの方に向かった。俺とダウトもその後を追い、最後にマスターに一礼して、鍛冶屋を後にした。
バタンとしまったドアの向こうがやけに気になって仕方がなかった。
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少しシリアスな回でした。次は面白おかしくなると思います。
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