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2巻

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 俺、九重ここのえつぐみの朝は主婦と同じくらい早い。
 浴衣ゆかたっぽい寝巻きから私服に着替え、階段を降りて洗面所へ向かう。
 2階には、俺と双子の妹達――雲雀ひばりひたきの部屋、物置に使っている部屋、クローゼット、そしてトイレがある。
 1階はリビングダイニングキッチン、洗面所、風呂、トイレ、両親の寝室、父の書斎しょさい。庭付き一戸建いっこだてなので良い家だ。
 雲雀と鶲は時間になれば起きてくると思うので、本当にヤバくなるまで放っておくことにする。
 顔を洗い終わった俺は、不意に込み上げて来る欠伸あくびみ殺しながらキッチンに入り、冷蔵庫を開けた。


「……パン、オムレツ、野菜スープで良いか」

 無難に考えをまとめつつ、中の食材に手を伸ばす。双子は中学生だから今は給食があるけど、もちろん高校生になったら、弁当は毎日作って持たせるよ。
 売店で買うから弁当なんていらない、とか言われたら悲しいな……。
 パンをトースターに入れ、オムレツを作るためフライパンに卵を落としながら、1人そんなことを考え小さくぼやく。うん、悲しい。
 時間ギリギリに起きて来た双子に朝食を食べさせ、迎えに来てくれた幼馴染おさななじみ飯田いいだ美紗みさちゃんと一緒に、玄関から送り出す。
 時刻は月曜の朝6時前だ。これだけ早いのは部活の朝練があるから。
 俺はつらいだなんて思わない。むしろ、これが俺の一番の仕事だと言っても良いからね。
 新聞を取って、食器を片付けて、ゴミの日ならゴミ出し、掃除、洗濯、庭の草毟くさむしり、そこらの主婦と同じ生活をしてると思う。あぁ、明日は卵の特売日だからスーパーに行くか……。
 仕事が入って無い時の生活はこんな感じ。
 それで1日が終わってしまうけれど、先週の土曜日から新たに追加されたことがある。
 そう――妹達はVRMMO【REALリアルMAKEメイク】、通称R&Mをやりたがるんだろうな。


     ◆ ◆ ◆


 結果は当たりだった。
 部活が終わり、2人して体操服のまま帰って来たかと思うと、しっかり者の鶲だけでなく、雲雀ですらそそくさと宿題を終わらせた。もちろん、分からない問題は鶲に聞いていたけれど。
 夕飯の手伝いも、後片付けも率先そっせんして手伝ってくれた。そんなにゲームがしたいのか。
 そわそわ、そわそわ。
 時計と俺をちらちら見ながら、2人はパソコンをいじっていた。双子の反応は分かりやすい。気を使わなくても、やりたいのなら素直にやりたいと言えば良いものを。
 遠足に行く直前の小学生みたいな反応も、最初は面白かったが、10分くらい見ていたら飽きてしまった。食器洗いをキリの良いところで終わらせ、タオルで手をいた俺は、苦笑しながら2人に問い掛ける。


「ったく、やるのか?」
「い、良いの!?」
「ん、やる。ゲーム」

 俺が言うとすぐ2人は表情を輝かせた。雲雀はバッと勢い良く俺の顔を見て、鶲はテレビの横にあるゲーム用のヘッドセットを手に取る。
 こういう時、双子でも性格の差が出て面白いよな……ああ、それより。
 気になっていたことがあったので、俺は鶲に視線を向けた。


「そう言えば、美紗ちゃんが自室からログインするって言ってたろ? どうなるんだ?」
「いろいろ……ん、調べた」
「まず美紗ちゃんがログインする時には、つぐぃがログインしてることが必要。15歳以下のプレイヤーがログインしようとすると、『ゲームに参加させますけど良いですか?』っていうようなウィンドウが、つぐ兄ぃのところに出るんだって~」

 鶲に続いて、雲雀も補足してくれた。ちなみに、元気いっぱいの雲雀は俺のことを「つぐ兄ぃ」と呼ぶ。そしてやや感情の薄い口調の鶲は、「つぐにい」と語尾を伸ばさない。


「許可すると、つぐ兄の側に現れる。だから気にする必要、無し」
「なるほど。俺が承諾しょうだくすれば万事ばんじOKか……」
「ん、美紗ちゃん水曜日来る。時間はあとで」

 へぇ、本当に俺がいるだけで良いのか。んで、美紗ちゃんが次にログインできるのは明後日の水曜日、と。俺には予定も何も無いし、別に構わない。


「あー、そうそう。水曜日って言ったら、バランス調整のメンテがあるみたい。しかも10時間も!」
「すごいなそれ。お知らせ見ても良いか?」
「ん」

 雲雀が不意に思い出したように、元気良く言った『メンテナンス』。
 10時間にも及ぶとは、随分ずいぶんいろいろと調整するみたいだな。パソコンをいじっていた鶲に断り、俺も公式ホームページをのぞく。


【お知らせnew】
 いつも皆様には【REAL&MAKE】(以下R&M)をご愛顧あいこいただき、感謝申し上げます。この度はご要望を沢山たくさんいただきまして、誠にありがとうございました。
 つきまして皆様に、バランス調整のための、メンテナンスのお知らせがございます。

 期間2×××年××月××日(水)、9時00分~19時00分まで(予定)。


 1、不遇職ふぐうしょくとされる職の改善について
 要望掲示板にて不遇だという意見が多数出た職、人数が1けたしかいない職に微調整を加えます。
 2、スキルについて
 意味をなさない、または不具合のあるスキルに微調整を加えます。
 3、生産アイテムについて
 生産されたアイテムに【レア度】を設定します。0~10の範囲で、数字が大きいほどレア度が高くなります。効果が大きくなる物、新しい効果が付与される物などもあります。
 ※レア度3が、NPCの店で売っている商品相当になります。
 4、携帯食料について
 携帯食料がいつでも買えると、特定のスキルが普及ふきゅうしないとの指摘を受けました。携帯食料を、一次職レベル30以下の専用アイテム、とします。
 5、HP/MPポーションについて
 無味無臭むみむしゅうきる、とのご意見を沢山いただきました。無調整のポーションは、全て青汁味に変更します。別の味を付加させることは可能です。
 6、NPCクエストの重要性について
 討伐とうばつ採取等のクエストに比べ、NPCによるクエストの需要が低くなっているため、重要度を上げます。NPCは死に戻りしませんので、大事に扱ってください。
 ※例えば商人の護送クエストの場合、1ヶ月放置→物流停止→在庫不足→物価上昇→街の破綻はたん、となるケースもあります。


【お知らせ】
 本日2×××年××月××日付けで、悪質なハラスメント行為、不正行為の認められた11人のアカウント処理をさせていただきました。


「なんか、重要そうな調整と、遊び心のある調整……みたいだな」
「ん、面白い。でもポーション青汁味、いや
「この調整、つぐ兄ぃの時代が来るかもね!」

 雲雀の言葉に、それは無いだろう、と心の中で返しながらホームページを閉じた。
 さて、ゲームに使うのはネット回線だけだから、パソコンを立ち上げれば、あとのことは全部ヘッドセットがしてくれる。
 昔のゲームにはいろいろ規制や制限があったみたいだが、今となってはそれも遠い昔。雲雀が言うには、「昔のゲームもそれはそれで面白いんだよ」らしいけど。
 今は20時過ぎ。双子は毎日のように朝練があるので、ゲームするのは現実リアルの時間で1時間(ゲーム内時間で2日間)だけだな。
 不満の声は上がらなかった。いつも通りヘッドセットを装着し、ボタンを押す。
 ――視界が暗転する。


     ◆ ◆ ◆


 R&M内の時刻は朝方だった。アイコン表示のないNPC達が噴水広場に露店ろてんを構え、品出しをしている。
 頭上に小さく、赤い逆三角形のアイコンが出ているのが、プレイヤーらしい。
 黄色はPK経験のあるプレイヤー、緑はイベントNPC……うん覚えた。
 まず俺が最初にしないといけないのは、ゲーム内での大事な大事な相棒あいぼう、リグの召喚しょうかん
 ウィンドウをいじり、召喚陣からポンッと出て来たリグを肩に乗せると、リグは元気にフードの中へダイブした。
 頭からフードに突っ込んだため、まさに頭隠して尻隠さず。まぁ、可愛いから良し。


「シュ~」
「えーと、まず道具屋行って硝子がらすすな買うでしょ~」
「次、ギルド?」
「なぁ。美紗ちゃんとのレベル差は、開いても良いのか?」

 道具屋へ向かう途中、予定を話し合うヒバリとヒタキに、俺は疑問を口にした。
 最初もレベル差があったけど、初心者支援……だっけ? 低レベルだとレベルが上がりやすいから追い付けた訳で、これからはどんどん差が開いてしまうんじゃないか? 
 俺がそんなことを言うと、2人は一瞬だけキョトンとして、楽しそうに笑う。


「大丈夫だよ、ツグ兄ぃ。心配無用無用!」
「このゲームはレベル以外に、自分の戦うセンス必要。ミィちゃん強い、大丈夫」
「そう、私達の誰よりも強いし。だからちょっとレベル差が開いたからって、ミィちゃんが付いて来れないなんてことは無いよ」

 STR(力)極振きょくふりに近いミィちゃんが弱い訳がない、と力説され、そうかも……と流されてしまう俺。ちなみに「ミィ」というのが、美紗ちゃんのプレイヤー名だ。
 確かに俺より強いな。どうやら俺の杞憂きゆうで終わった。と言うより、2人の言葉に全力で納得してしまった。
 道具屋に入ると、双子はすぐにカウンターのオバサンと話し始めたので、暇な俺は周囲を見回す。すると、店のすみに大きな麻袋あさぶくろがドンッと置いてあった。
 赤錆あかさびだらけの屑鉄くずてつ……か? 現実ならリサイクルに回せるだろうけど、この世界ではどうなんだろう。立派な資源になるんだろうか? 


『あー、それは商人からタダで引き取った奴なんだよね。邪魔じゃまだし、あとで鍛冶屋かじやに売ろうかと思ってんだ』
「……これ、俺に売っていただけませんか?」
『えぇ!?』

 双子の接客を終えたオバサンが話し掛けてきたので、俺は購入したいと告げた。
 俺が持つ錬金れんきんスキルのレベル上げのため、この屑鉄には貢献こうけんしてもらおう。鍛冶は無理だが、アクセサリーくらいなら俺でも作れるはず。多分。ただしセンスは期待するな。
 驚いてるオバサンを尻目しりめに、俺の意図を理解したらしい2人がうんうん、とうなずく。
 価格は麻袋いっぱいの屑鉄2袋で1000ミュ。破格だ。
 両者にとってお得な買い物を終え、道具屋を出た。



【小天使ちゃん】見守る会【小悪魔ちゃん】part2


 1:ロリコン紳士

【ここは元気っ子な見習い天使ちゃんと大人しい見習い悪魔ちゃん、生産職で女顔のお兄さんを温かく見守るスレ。となります】

 前スレ埋まったから立ててみた。前スレは検索で。
 やって良いこと『思いの丈を叫ぶ・雑談・全力で愛でる・陰から見守る』
 やって悪いこと『本人特定・過度に接触・騒ぐ・ハラスメント行為・タカり』
 紳士諸君、合言葉はハラスメント一発アウト、だ! 
 ・
 ・
 ・
 611:ロリコン紳士
 ロリっ娘達がいないとつまんないな。どこいった!


 612:ロリコン紳士
 >>611 知るか!


 613:ロリコン紳士
 >>611 他愛も無い会話してるけどなwww


 614:ロリコン紳士
 忍者目指してる俺がついて行けないでござる。バレ怖くて距離取りすぎたorz


 615:ロリコン紳士
 >>611 気になるよな。絡まれてないか、とか。


 616:ロリコン紳士
 >>614 忍者汚い。流石汚い忍者!


 617:ロリコン紳士
 >>614 ばっちぃ忍者


 618:ロリコン紳士
 >>615 同感!


 619:ロリコン紳士
 >>614 忍者になりたいだけなのにフルボッコw
 >>615 同感だなー


 620:ロリコン紳士
 >>619 我々にとって、忍者は敵なのです。


 621:ロリコン紳士
 >>619 我々にとって、忍者はオモチャです。


 622:ロリコン紳士
 >>620 >>621 やめてあげてよぉwww彼のHPは0よ!


 623:ロリコン紳士
 >>620 >>621 なんという統率力! これが、これが君達を動かす妬みだとでも言うのかっ!


 624:ロリコン紳士
 に、忍者になりたいけどりある魔法使いなんでござる。


 625:ロリコン紳士
 脱線話すらこの連帯感。まぁ、今さらかwwww


 626:ロリコン紳士
 >>624 す、すまん。


 627:ロリコン紳士
 >>624 ごめんなさい


 628:ロリコン紳士
 >>624 申し訳ない!


 629:ロリコン紳士
 >>624 陳謝します。


 630:ロリコン紳士
 >>624 許してにゃん


 631:ロリコン紳士
 >>626~629 わ、分かれば良いんだ。分かれば(´;ω;)
 >>630 赦さん


 632:ロリコン紳士
 >>631 wwwwww


 633:ロリコン紳士
 >>631 くそワロタww


 634:ロリコン紳士
 まぁ、ロリっ娘ちゃん達が帰って来ないと、話が捗らないのは確か。


 635:ロリコン紳士
 >>634 えっ?


 636:ロリコン紳士
 >>634 え?


 637:ロリコン紳士
 >>634 捗らない?


 638:ロリコン紳士
 >>635 えっ? えっ?


 639:ロリコン紳士
 もwうwいwいwかwらwそwのw流wれwww


 640:ロリコン紳士
 ロリっ娘ちゃん達帰って来るまで解散~


 641:ロリコン紳士
 次の街に行った、とか無いよな?


 642:ロリコン紳士
 >>641 不吉すぐるww


 643:ロリコン紳士
 >>641 それはない。
 ・
 ・
 ・
 713:ロリコン紳士
 あ、ロリっ娘ちゃん達帰って来たよー。


 714:ロリコン紳士
 やっぱクエストだったか。安心安心。


 715:ロリコン紳士
 さて、紳士は通常営業に戻りますよーwww


 716:ロリコン紳士
 >>713 >>714 ほんと良かった良かった。流石にアースから来てすぐは死に戻り確定だろ。


 717:ロリコン紳士
 >>716 確かに。革鎧は心許ないってレベルじゃねぇぞ! www


 718:ロリコン紳士
 そういやさ、テイマーってレベル20毎にテイム枠+1されんだよな?


 719:ロリコン紳士
 >>718 どした?


 720:ロリコン紳士
 >>718 そだよー。


 721:ロリコン紳士
 いやはや、お兄さんが次にテイムする魔物何かなー……って。思っただけ


 722:ロリコン紳士
 >>721 あー(察し)


 723:ロリコン紳士
 >>721 あー(納得)


 724:ロリコン紳士
 >>721 それは俺も気になる。もふもふ系来い!


 725:ロリコン紳士
 >>724 虫だろJK


 726:ロリコン紳士
 >>725 またかよww


 727:ロリコン紳士
 >>724 爬虫類とか面白くない? 爬虫類。


 728:ロリコン紳士
 >>724 可愛かったら何でもOKだなぁ


 729:ロリコン紳士
 全裸待機しよーぜ。


 730:ロリコン紳士
 >>729 俺もーノ


 731:ロリコン紳士
 >>729 付き合おうノ


 732:ロリコン紳士
 >>729 余の裸が見たいとは、なかなか殊勝な……。


 733:ロリコン紳士
 >>732 ちwげwぇw見せんなきたねぇwww
 ・
 ・
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 838:ロリコン紳士
 なぁおまいら、メンテのお知らせ見たか?


 839:ロリコン紳士
 >>838 見た(ごくり)


 840:ロリコン紳士
 >>838 ザワッザワッ


 841:ロリコン紳士
 >>838 あますとこなく全て見させてもらったぜ!


 842:ロリコン紳士
 >>838 な、なぁこれって、これって


 843:ロリコン紳士
 >>838 もしかして


 844:ロリコン紳士
 ポーション青汁味で騒いだ奴誰だよ! 俺が青汁飲めないの知ってんだろ! 要望掲示板の奴ら許さんんんんんんんんんっ!


 845:ロリコン紳士
 >>844 も、もちつけ


 846:ロリコン紳士
 >>844 気持ちは分かる。スゴく分かる!


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