115 / 161
8巻
8-3
しおりを挟む
「うわぁ、湖で乗った船よりおっきい~!」
ヒバリが大きな船を見上げている。結局10分くらいでたどり着いてしまった。
ヒタキも、黙ってはいるものの目を輝かせていた。
しばらく3人で船を眺めていたが、ここが集落の入り口だということにハッと気づく。邪魔になる場所に屯するのはいただけない。
誰も見ていないのをいいことに、俺達はスッと表情を戻して集落の中に入っていく。
そこは見た感じ、ごく普通の集落といった印象だった。
穏やかな空気が流れており、ゆっくり過ごすには最適だと思われる。船の乗り場があるのでどんどん発展するのかもしれないが、それはそれでいいかもな。
他の街と同じく中心には広場が設けられており、とりあえずそこで一休み。
真ん中には噴水の代わりに、ヒバリやヒタキくらいの大きさの石像が置いてあり、花壇のようなものにグルッと囲まれていた。石像は女神像で、多分エミエール様なんだろうけど、お世辞にも似ているとは言いがたい。
そんな広場の柔らかい芝生に腰を下ろし落ち着いていると、ヒバリが口を開いた。
「えっとぉ、自前のギルドルームがあるから宿探しはいいとして、時間はまだいっぱいあるから、んん~」
両脚の間に陣取ったメイの頭を撫でつつ、俺は悩む彼女を眺めるだけ。一生懸命考えてるんだから、口を出さない方向で。
たまに突拍子もないことを言ったりするから、お兄ちゃんは楽しみだったりする。
「ヒバリちゃん。海が目の前だから、海系の面白いこと、探したらいいと思う」
「あっ、そっか~。そうだね、ありがとひぃちゃん!」
「ん」
ヒタキが悩めるヒバリに助け船を出した。
具体性はあまりないけど……まぁ皆で考えればいいか。お兄ちゃん的に、2人が仲良しなことがとても嬉しい。
明日も平日。ヒバリとヒタキは学校だから、そんなに遅くまでゲームできないからな。遊ぶのはまた明日にして、今回はブラブラだけにしよう、ということになった。
立ち上がって服を払い、どちらへ行こうかとあたりを見渡す。
船着き場は航海の準備なのか、人が荷物を持って忙しなく行き来しているからちょっと危ない。
かと言って、集落内にはヒバリ達が楽しめそうなものがない。ううん、悩ましい。
「あ、すみませ~ん。このあたりに美味しい魔物って出ますか~?」
聞き方がヒバリらしいけど、尋ねられたNPCさんはかなり困惑していた。
そりゃそうだ。でも、ノリのいい人だったらしく指を差しながら教えてくれている様子。
「美味しい魔物」って、魚とか海藻とか?
とても嬉しそうに表情を輝かせたヒバリが帰ってくると、よくやったという意味を込めて軽く頭を撫でた。
カツオなら1匹捌いたことあるし、今回もがんばろうと思うよ。美味しい料理を家族に用意するために。
「えっとね、向こうの方に入り江? みたいな浅瀬? っぽい潮だまり? があるから、遊ぶならそこがいいって」
「……ん、潮だまりは小さなカニや小魚がいるから、現実世界でも子供達の格好の遊び場」
「むぅ。子供でも、魔物だって倒せるんだけどなぁ~。でもでも、カニとか魚とか楽しみ!」
楽しそうに話すヒバリにヒタキが応じた。
「子供」という言葉に少しばかり頬を膨らませるヒバリだったが、すぐに笑みを浮かべた。
小さなカニや小魚は素揚げでも十分美味しい。善は急げと、俺達は目的の場所へ歩き出す。
目的地へは2~3分でたどり着くことができた。目と鼻の先ってやつだな。
海は透明度が高く、かなり先の海中まで見ることができた。遠浅で波も穏やかだが、所々にごつごつした岩が転がっており、泳ぐのはどうかなぁという感じ。
何人か人がいるけど、結構沖の方だから邪魔にはならないと思う。
小桜と小麦は濡れるのがそこまで好きじゃないので、水辺からやや遠目に。同じく濡れたくない派のリグは、俺の頭上から高みの見物って感じだな。
メイは濡れるのを気にしないので、ヒバリとヒタキの側にいた。
「ヒバリちゃん。こういう岩のくぼみにある潮だまりに、逃げそびれがいる。一網打尽にして私達の糧にしたい」
岩が削られて出来たくぼみにヒタキ達が向かったので、俺も慌てて追いかける。
「おぉ、カニさんこんにちは! 美味しい食材になってね!」
「めめっめめぇめ」
どうやら小さなカニを見つけたらしい……と思っていたら、ヒバリがいきなり手刀を振り下ろし、それが寸分違わずカニの甲羅にヒットする。
するとヒタキが勢いよく振り返って、滅多に見せないいい笑顔で報告してくれた。
「……笑顔でカニにチョップ。カニは無事アイテムになった」
「お、おぅ」
彼女は両手でハサミの形を作り、2度ほどチョキチョキ。た、楽しそうでなにより。
ヒバリが渡してくれたカニをインベントリにしまい顔を上げると、彼女は次なる獲物を求めてもう岩場へと戻っていた。
そんな、一回一回持ってこなくても……別にいいけど。
潮だまりで遊ぶヒバリ達を横目に見ながら歩いていると、ヌルッとした感触がして俺は足元を凝視した。
「お? これ、岩海苔ってやつか?」
モサモサしていかにも美味しそうな岩海苔だ。しかし、頭にリグが乗っていることを忘れ、前屈みになったのがいけなかった。
「シュ? シュ~、シュ! シュシュ~!」
「お、おぉぉぉっ、リグ!」
「シュ~シュッシュ」
いきなりのことにバランスを崩したリグが、海へ落ちてしまった。
俺は慌ててリグを引き上げ、フードの中に戻して一息。水深が数センチしかなくてよかった。
い、いやなじけんだったね……。
ヒバリ達は相変わらず楽しそうにしている。
俺はインベントリから空の水筒を取り出し、岩海苔をこそぎ取って詰めていく。これで料理を作ったら、真っ先にリグへ献上するからな。
たくさん採っても使い道に困るかもなので、この水筒に入るだけにしておく。
【栄養満点な岩海苔】
ミネラルたっぷり海の恵み。佃煮にするも、お煎餅の隠し味に使うのも思いのまま。
ある地方では、真っ黒で不気味に揺らめくことから「悪魔」と呼ばれているが、美味しく食されてもいる。
説明文を見ると、これまた個性的な文章だった。
でも岩海苔の佃煮って、確かにたまに食べたくなるよな。お米もあるから今度作ってみようか。
何度整理してもぎゅうぎゅう詰めになってきてしまうインベントリに、岩海苔水筒がきちんと収納されたことを確認したら作業完了。
フードから出て、また頭に上ってきたガッツ溢れるリグの背中を撫でつつ、少し離れた場所にいるヒバリ達の元へ。
「あっ、ツグ兄ぃ!」
双子が潮だまりから顔を上げて……って、ヒバリよ。ゲームの仕様で下着が見えないからって、堂々とスカートをたくし上げて、海産物置き場にするのは……。
「ん、ツグ兄。なんかやってたけど、いいものあった?」
「いいもの……かどうかは分からんけど、岩海苔だな。佃煮にでもするよ」
表情を輝かせて「佃煮!」と叫んだヒタキに、俺が毒気を抜かれたのは言うまでもない。
その後もしばらく遊んでいたら、いつの間にか……もうお昼前ってところか?
ウインドウを開けば正確なゲーム時間や現実世界の時間が分かるけど、その必要はない。
とりあえず、遅くならないようログアウトして寝ないとな。ヒバリとヒタキは学校があるからね。
「今日の海遊びは突発だったけど、明日はちゃんと調べて、美味しい魔物とか狩りに行きたい!」
「ん、寝る前に調べよう。明日に支障が出ない程度に」
海辺から集落に戻る道すがら、ヒバリがグッと拳を握って言い、ヒタキが力強く頷いた。
俺も「支障が出ない」って言葉を信じて頷いておこうかな。遊ぶのはいいけど、体調に支障が出ちゃいけない。2人は成長期でもあるし、「無理はダメ、絶対」ってやつだ。
やがて集落の中に入り、小さな女神像のある広場に着いた。さっきより人が多い。この人達は寄港している船の関係者だろうか。
15歳以下の子を連れている時点で少なからず目立つんだが、冒険者の数も多いので、まだましだと思う。心持ちだけど。
「……よし、今日はもうログアウトしよう!」
芝生の隅っこに座ってすぐ、ヒバリが良い案を思いついた! とばかりに笑顔を見せてくれた。さっき調べ物が、って言っていたので、この流れも少しは予想してたけど座ってすぐか。
これが現実だったら、顔を背けて聞こえないフリをしてしまいそうだ。お兄ちゃん実はちょっと腰が重いからな。
俺が遠くを見るような目をしたことが分かったのか、ヒバリは指遊びしながら視線を逸らし、乾いた笑みを浮かべて何度も頷く。
「す、座ったばかりで悪いとは思うけど、今日はもうやることも思いつかないから。だからね、うんうん」
「ん、ヒバリちゃんの意見に賛成。面白いこと言えないから出直すのはいい案。お笑い担当としては致命的」
「お、お笑い担当……」
ヒバリの言葉が途切れると同時にヒタキが突っ込んだ。その発言自体が面白かったので、俺は思わず復唱してしまう。ヒバリだってキョトンとしてるじゃないか。
ま、まぁ、本人の自己申告は置いておこう。ヒタキは面白いことが大好きだから、あながち間違ってない。
さて、そうと決まったらさっと立ち上がる。
ここでログアウトして大丈夫、だよな? 一応、像のある広場だし。
あまり魔物と戦ったりできなくて、構ってあげられなくてごめん、とリグ達を撫でてから、ウインドウを開いて【休眠】にする。
明日もそうだけど、明後日の出航時はてんやわんやしそうだなぁ……いや、まだ来ていない日のことを心配するのはやめておこう。ええと、フラグになってしまうんだった。
「じゃあ、ログアウト」
双子にやり忘れがないか確認し、俺はウインドウを開いて【ログアウト】ボタンをポチッと。
すぐに意識が遠のく……と言うより、遮断されると言った方が近いか?
この感覚がダメな人もいるらしいけど、幸いなことに俺は大丈夫。
◆ ◆ ◆
目を開くと見慣れた自宅のリビングでホッとする。
帰ってこられないなんてあり得ないけど、少しだけ想像しちゃうというかなんというか。
そんなことを考えていたら雲雀と鶲も起きてきて、いの一番に伸びをする。それ、すごい気持ちいいよな。
「んん~、まずお風呂入っちゃおうかなぁ」
「それはいい案。お風呂は明日への活力にもなる」
「そうだねぇ。あぁでも、これ片付けないと!」
起きた途端に2人で話し出した。
俺はそれに参加せず、脱いだヘッドセットをテーブルの上に置いて立ち上がる。
ゲームの片付けは雲雀の言うとおり彼女達の仕事なので、俺はキッチンの流しに浸け置きしておいた食器を洗うことにした。
食べてすぐ浸けたし、そこまで頑固ではないはず。中身はうどんだったし。
そのとき、リビングの扉を開く音が聞こえた。
リビングを覗いてきちんと片付けが済んでいるかを確認し、それからエプロンを手に取って気を引き締める。
食器に傷をつけないようにしながら手早く洗っていると、不意に俺の携帯が鳴り響いた。
メールだったのでそのまま食器洗いに集中。
携帯が鳴ってから5分くらいで洗い終わり、手を拭いてエプロンを所定の位置に戻し、携帯を持ってソファーに座った。
「……ええと、なになに」
【差出人:母】
【宛先:九重鶫】
【件名:近いうちに帰ることが決まりました~!】
【本文:とは言っても、金曜の夜に帰って、日曜のお昼頃に出るんだけどね。具体的なことが決まったらまたメールします。追伸――携帯は携帯してないと意味ないよ、つーくん】
「嵐がやってくるのか……」
突然のメールに戦々恐々とした俺は、メール画面を閉じて携帯をテーブルの上へ。
いつの金曜かは分からないが、今月中でないことは確かだ。それだけは確信できる。
そして、なぜ携帯を放置していることがバレた……。
俺は昔から携帯を携帯しない子だったから、それを見越しての追伸かもしれない。とりあえずポケットに入れておくようにしよう。
お風呂から上がってリビングに来た雲雀と鶲に、母さんのメールのことを話したら、久々に会えると、とても嬉しそうでなにより。
湯冷めしないうちに2人を部屋に行かせて、俺も戸締まりやゴミ集めを終わらせ、風呂に入った。
楽しそうな話し声が聞こえる双子の部屋の前を通って、自分の部屋へ。
パソコンのメールを確認してからベッドに入り、携帯を手に取って母さんのメールに返信する。忘れてたわけじゃないから安心してほしい。
「これ、親父も帰ってくるんだろうか?」
ふと、そんな予感が口をついて出た。
雲雀と鶲を徹底的に可愛がるだけならいいけど、親父はちょっとうざ……違う、愛がうるさいんだ。久々に会うときのことを考えると、諦め半分、嬉しさ半分。
携帯を枕元に置き、俺は布団を被った。
明日も主夫をしないとだからな。主夫は体力勝負なところもあるし。さて、寝よ寝よ。
ロリコンは】LATORI【一日にしてならず】part7
(主)=ギルマス
(副)=サブマス
(同)=同盟ギルド
1:かなみん(副)
↓見守る会から転載↓
【ここは元気っ子な見習い天使ちゃんと大人しい見習い悪魔ちゃん、生産職で女顔のお兄さんを温かく見守るスレ。となります】
前スレが埋まったから立ててみた。前スレは検索で。
やって良いこと『思いの丈を叫ぶ・雑談・全力で愛でる・陰から見守る』
やって悪いこと『本人特定・過度に接触・騒ぐ・ハラスメント行為・タカり』
紳士諸君、合言葉はハラスメント一発アウト!
ギルマスが立てられないって言ってたから代理でサブマスが立ててみたよ。上記の文、大事! 絶対!
・
・
・
762:夢野かなで
今日も今日とて1日の疲れをロリっ娘ちゃん達の見守りで癒やして参りまっしょい。明日への活力源は、ここに……!
763:黒うさ
>>756 とりあえず、前にも話題になってたかもだけど初心者は鈍器が一番だよ! 撲殺天使の知り合いがいるから間違いない!
764:かなみん(副)
何人か新しいギルメン選んだので、次の掲示板になるちょうどいい感じで加入してもらうね。みんな、仲良くしてね~。
765:焼きそば
北の試される大地……。野菜とか美味しそう。
766:プルプルンゼンゼンマン(主)
>>759 え、俺この間当たった変装セット初級編装備して船に乗るつもりだよ? ロリっ娘ちゃん達にとって俺達はモブ、彼女達が途方もない困難に当たってしまったときだけ少しだけ手を貸す。貸せたら良いな、的な。俺達は紳士だから!
767:ナズナ
>>756 武器が下手なら魔法でいいと思う。今は必中扱いだからMPとスキルがあればある程度楽しい、かも? 多分ないとは思うけど、マニュアル操作きたら悲しみの大河に沈むことになる。
768:空から餡子
ジャガイモ、中世、ジャガイモ警察、うっ頭が……!
769:もけけぴろぴろ
新人さんかぁ~。かなみんの隣でチラッと申請者見せてもらったけど、めっちゃ個性的な名前多くね? って感じ。さすが紳士!
770:白桃
船から海釣りしてもいいって書いてあったから、ちょっと奮発して釣り竿買っちゃった。これならリヴァイアサンは無理でも、シーサーペントくらいなら大丈夫。美味しいの釣れたら良いなぁ。
771:iyokan
>>764 うわぁ~い、ロリコン同志が増えるぞ! ロリッコチャンタチカワイイヤッター!
772:つだち
とりあえず、幼馴染に鈍器の魔法使いオススメしとく。みんな相談に乗ってくれてありがとー。
773:さろんぱ巣
>>768 そいつらどこにでもいるな。出来ればジャガイモより魔法とか魔物とか、そっち突っ込んでほしい。
774:ちゅーりっぷ
みんな先回りの馬車が来たぞー! のりこめー!
775:甘党
ロリコンはこのギルド、ショタはあっちのギルド、っていつか言われるようになるんだろうか……。り、理想郷か……!
776:こずみっくZ
>>774 わぁい^^
・
・
・
819:わだつみ
船でっけぇ~! 豪華客船かよ! 見たことないけど!
820:密林三昧
乗り物酔いに効く薬、薬屋の婆ちゃんから買ってきた。これで思い込み酔いも大丈夫、だと思いたい。これはゲームゲームゲーム。
821:中井
>>810 無理はよくないよ。のんびり一緒に行こう。
822:ましゅ麿
ある程度の露払い、ってか無駄に強い敵は普通にいないか。この前、蜂蜜鬼神が暴れてたもんなぁー。とおいめー。
823:黄泉の申し子
あれ、本当に女神像かよ。ギルドのポイントけちったな。うちは巨乳好きな奴らが教会にあるのと同じ女神像用意してたから、あれ見慣れたらなぁ。でも実は効果が一緒。
824:氷結娘
料理買い込んじゃった。王都の料理に慣れたら他行くのやんなっちゃうかもー。でもロリコンだから居着くのは無しー。
825:sora豆
>>816 それは、本当か? ……ごくり。
826:餃子
まだ集落の規模だけど、来月くらいには海洋都市まで発展してそう。安全かつ確実に海を渡れるって、魔物の多いここではめっちゃ強みだからなー。新鮮な魚、お刺身、タコ、イカ、ウニ、じゅるっ。
827:コンパス
運がよければ人魚とセイレーンが歌ってるとこ見れるらしいね。楽しみにしておこーっと。心躍る。めっちゃwktk
828:魔法少女♂
うーん、やっぱガラ悪そうなの多いナ☆☆★ 目を光らせねば!
829:かるぴ酢
>>817 あ、それは結構です(真顔)
830:黒うさ
楽しそうにしてるロリっ娘ちゃん見てると幸せになる。こっ、これが母性……! 性別違うけど。
831:ナズナ
割りとうちのギルド、ガチ派とほどほど派とうぇーい派に綺麗に分かれてるよね。ちなみに自分はうぇーい派だぞ☆
832:もけけぴろぴろ
>>820 ぬしも一緒に歩きで行こうず。無理はよくないよ。
ヒバリが大きな船を見上げている。結局10分くらいでたどり着いてしまった。
ヒタキも、黙ってはいるものの目を輝かせていた。
しばらく3人で船を眺めていたが、ここが集落の入り口だということにハッと気づく。邪魔になる場所に屯するのはいただけない。
誰も見ていないのをいいことに、俺達はスッと表情を戻して集落の中に入っていく。
そこは見た感じ、ごく普通の集落といった印象だった。
穏やかな空気が流れており、ゆっくり過ごすには最適だと思われる。船の乗り場があるのでどんどん発展するのかもしれないが、それはそれでいいかもな。
他の街と同じく中心には広場が設けられており、とりあえずそこで一休み。
真ん中には噴水の代わりに、ヒバリやヒタキくらいの大きさの石像が置いてあり、花壇のようなものにグルッと囲まれていた。石像は女神像で、多分エミエール様なんだろうけど、お世辞にも似ているとは言いがたい。
そんな広場の柔らかい芝生に腰を下ろし落ち着いていると、ヒバリが口を開いた。
「えっとぉ、自前のギルドルームがあるから宿探しはいいとして、時間はまだいっぱいあるから、んん~」
両脚の間に陣取ったメイの頭を撫でつつ、俺は悩む彼女を眺めるだけ。一生懸命考えてるんだから、口を出さない方向で。
たまに突拍子もないことを言ったりするから、お兄ちゃんは楽しみだったりする。
「ヒバリちゃん。海が目の前だから、海系の面白いこと、探したらいいと思う」
「あっ、そっか~。そうだね、ありがとひぃちゃん!」
「ん」
ヒタキが悩めるヒバリに助け船を出した。
具体性はあまりないけど……まぁ皆で考えればいいか。お兄ちゃん的に、2人が仲良しなことがとても嬉しい。
明日も平日。ヒバリとヒタキは学校だから、そんなに遅くまでゲームできないからな。遊ぶのはまた明日にして、今回はブラブラだけにしよう、ということになった。
立ち上がって服を払い、どちらへ行こうかとあたりを見渡す。
船着き場は航海の準備なのか、人が荷物を持って忙しなく行き来しているからちょっと危ない。
かと言って、集落内にはヒバリ達が楽しめそうなものがない。ううん、悩ましい。
「あ、すみませ~ん。このあたりに美味しい魔物って出ますか~?」
聞き方がヒバリらしいけど、尋ねられたNPCさんはかなり困惑していた。
そりゃそうだ。でも、ノリのいい人だったらしく指を差しながら教えてくれている様子。
「美味しい魔物」って、魚とか海藻とか?
とても嬉しそうに表情を輝かせたヒバリが帰ってくると、よくやったという意味を込めて軽く頭を撫でた。
カツオなら1匹捌いたことあるし、今回もがんばろうと思うよ。美味しい料理を家族に用意するために。
「えっとね、向こうの方に入り江? みたいな浅瀬? っぽい潮だまり? があるから、遊ぶならそこがいいって」
「……ん、潮だまりは小さなカニや小魚がいるから、現実世界でも子供達の格好の遊び場」
「むぅ。子供でも、魔物だって倒せるんだけどなぁ~。でもでも、カニとか魚とか楽しみ!」
楽しそうに話すヒバリにヒタキが応じた。
「子供」という言葉に少しばかり頬を膨らませるヒバリだったが、すぐに笑みを浮かべた。
小さなカニや小魚は素揚げでも十分美味しい。善は急げと、俺達は目的の場所へ歩き出す。
目的地へは2~3分でたどり着くことができた。目と鼻の先ってやつだな。
海は透明度が高く、かなり先の海中まで見ることができた。遠浅で波も穏やかだが、所々にごつごつした岩が転がっており、泳ぐのはどうかなぁという感じ。
何人か人がいるけど、結構沖の方だから邪魔にはならないと思う。
小桜と小麦は濡れるのがそこまで好きじゃないので、水辺からやや遠目に。同じく濡れたくない派のリグは、俺の頭上から高みの見物って感じだな。
メイは濡れるのを気にしないので、ヒバリとヒタキの側にいた。
「ヒバリちゃん。こういう岩のくぼみにある潮だまりに、逃げそびれがいる。一網打尽にして私達の糧にしたい」
岩が削られて出来たくぼみにヒタキ達が向かったので、俺も慌てて追いかける。
「おぉ、カニさんこんにちは! 美味しい食材になってね!」
「めめっめめぇめ」
どうやら小さなカニを見つけたらしい……と思っていたら、ヒバリがいきなり手刀を振り下ろし、それが寸分違わずカニの甲羅にヒットする。
するとヒタキが勢いよく振り返って、滅多に見せないいい笑顔で報告してくれた。
「……笑顔でカニにチョップ。カニは無事アイテムになった」
「お、おぅ」
彼女は両手でハサミの形を作り、2度ほどチョキチョキ。た、楽しそうでなにより。
ヒバリが渡してくれたカニをインベントリにしまい顔を上げると、彼女は次なる獲物を求めてもう岩場へと戻っていた。
そんな、一回一回持ってこなくても……別にいいけど。
潮だまりで遊ぶヒバリ達を横目に見ながら歩いていると、ヌルッとした感触がして俺は足元を凝視した。
「お? これ、岩海苔ってやつか?」
モサモサしていかにも美味しそうな岩海苔だ。しかし、頭にリグが乗っていることを忘れ、前屈みになったのがいけなかった。
「シュ? シュ~、シュ! シュシュ~!」
「お、おぉぉぉっ、リグ!」
「シュ~シュッシュ」
いきなりのことにバランスを崩したリグが、海へ落ちてしまった。
俺は慌ててリグを引き上げ、フードの中に戻して一息。水深が数センチしかなくてよかった。
い、いやなじけんだったね……。
ヒバリ達は相変わらず楽しそうにしている。
俺はインベントリから空の水筒を取り出し、岩海苔をこそぎ取って詰めていく。これで料理を作ったら、真っ先にリグへ献上するからな。
たくさん採っても使い道に困るかもなので、この水筒に入るだけにしておく。
【栄養満点な岩海苔】
ミネラルたっぷり海の恵み。佃煮にするも、お煎餅の隠し味に使うのも思いのまま。
ある地方では、真っ黒で不気味に揺らめくことから「悪魔」と呼ばれているが、美味しく食されてもいる。
説明文を見ると、これまた個性的な文章だった。
でも岩海苔の佃煮って、確かにたまに食べたくなるよな。お米もあるから今度作ってみようか。
何度整理してもぎゅうぎゅう詰めになってきてしまうインベントリに、岩海苔水筒がきちんと収納されたことを確認したら作業完了。
フードから出て、また頭に上ってきたガッツ溢れるリグの背中を撫でつつ、少し離れた場所にいるヒバリ達の元へ。
「あっ、ツグ兄ぃ!」
双子が潮だまりから顔を上げて……って、ヒバリよ。ゲームの仕様で下着が見えないからって、堂々とスカートをたくし上げて、海産物置き場にするのは……。
「ん、ツグ兄。なんかやってたけど、いいものあった?」
「いいもの……かどうかは分からんけど、岩海苔だな。佃煮にでもするよ」
表情を輝かせて「佃煮!」と叫んだヒタキに、俺が毒気を抜かれたのは言うまでもない。
その後もしばらく遊んでいたら、いつの間にか……もうお昼前ってところか?
ウインドウを開けば正確なゲーム時間や現実世界の時間が分かるけど、その必要はない。
とりあえず、遅くならないようログアウトして寝ないとな。ヒバリとヒタキは学校があるからね。
「今日の海遊びは突発だったけど、明日はちゃんと調べて、美味しい魔物とか狩りに行きたい!」
「ん、寝る前に調べよう。明日に支障が出ない程度に」
海辺から集落に戻る道すがら、ヒバリがグッと拳を握って言い、ヒタキが力強く頷いた。
俺も「支障が出ない」って言葉を信じて頷いておこうかな。遊ぶのはいいけど、体調に支障が出ちゃいけない。2人は成長期でもあるし、「無理はダメ、絶対」ってやつだ。
やがて集落の中に入り、小さな女神像のある広場に着いた。さっきより人が多い。この人達は寄港している船の関係者だろうか。
15歳以下の子を連れている時点で少なからず目立つんだが、冒険者の数も多いので、まだましだと思う。心持ちだけど。
「……よし、今日はもうログアウトしよう!」
芝生の隅っこに座ってすぐ、ヒバリが良い案を思いついた! とばかりに笑顔を見せてくれた。さっき調べ物が、って言っていたので、この流れも少しは予想してたけど座ってすぐか。
これが現実だったら、顔を背けて聞こえないフリをしてしまいそうだ。お兄ちゃん実はちょっと腰が重いからな。
俺が遠くを見るような目をしたことが分かったのか、ヒバリは指遊びしながら視線を逸らし、乾いた笑みを浮かべて何度も頷く。
「す、座ったばかりで悪いとは思うけど、今日はもうやることも思いつかないから。だからね、うんうん」
「ん、ヒバリちゃんの意見に賛成。面白いこと言えないから出直すのはいい案。お笑い担当としては致命的」
「お、お笑い担当……」
ヒバリの言葉が途切れると同時にヒタキが突っ込んだ。その発言自体が面白かったので、俺は思わず復唱してしまう。ヒバリだってキョトンとしてるじゃないか。
ま、まぁ、本人の自己申告は置いておこう。ヒタキは面白いことが大好きだから、あながち間違ってない。
さて、そうと決まったらさっと立ち上がる。
ここでログアウトして大丈夫、だよな? 一応、像のある広場だし。
あまり魔物と戦ったりできなくて、構ってあげられなくてごめん、とリグ達を撫でてから、ウインドウを開いて【休眠】にする。
明日もそうだけど、明後日の出航時はてんやわんやしそうだなぁ……いや、まだ来ていない日のことを心配するのはやめておこう。ええと、フラグになってしまうんだった。
「じゃあ、ログアウト」
双子にやり忘れがないか確認し、俺はウインドウを開いて【ログアウト】ボタンをポチッと。
すぐに意識が遠のく……と言うより、遮断されると言った方が近いか?
この感覚がダメな人もいるらしいけど、幸いなことに俺は大丈夫。
◆ ◆ ◆
目を開くと見慣れた自宅のリビングでホッとする。
帰ってこられないなんてあり得ないけど、少しだけ想像しちゃうというかなんというか。
そんなことを考えていたら雲雀と鶲も起きてきて、いの一番に伸びをする。それ、すごい気持ちいいよな。
「んん~、まずお風呂入っちゃおうかなぁ」
「それはいい案。お風呂は明日への活力にもなる」
「そうだねぇ。あぁでも、これ片付けないと!」
起きた途端に2人で話し出した。
俺はそれに参加せず、脱いだヘッドセットをテーブルの上に置いて立ち上がる。
ゲームの片付けは雲雀の言うとおり彼女達の仕事なので、俺はキッチンの流しに浸け置きしておいた食器を洗うことにした。
食べてすぐ浸けたし、そこまで頑固ではないはず。中身はうどんだったし。
そのとき、リビングの扉を開く音が聞こえた。
リビングを覗いてきちんと片付けが済んでいるかを確認し、それからエプロンを手に取って気を引き締める。
食器に傷をつけないようにしながら手早く洗っていると、不意に俺の携帯が鳴り響いた。
メールだったのでそのまま食器洗いに集中。
携帯が鳴ってから5分くらいで洗い終わり、手を拭いてエプロンを所定の位置に戻し、携帯を持ってソファーに座った。
「……ええと、なになに」
【差出人:母】
【宛先:九重鶫】
【件名:近いうちに帰ることが決まりました~!】
【本文:とは言っても、金曜の夜に帰って、日曜のお昼頃に出るんだけどね。具体的なことが決まったらまたメールします。追伸――携帯は携帯してないと意味ないよ、つーくん】
「嵐がやってくるのか……」
突然のメールに戦々恐々とした俺は、メール画面を閉じて携帯をテーブルの上へ。
いつの金曜かは分からないが、今月中でないことは確かだ。それだけは確信できる。
そして、なぜ携帯を放置していることがバレた……。
俺は昔から携帯を携帯しない子だったから、それを見越しての追伸かもしれない。とりあえずポケットに入れておくようにしよう。
お風呂から上がってリビングに来た雲雀と鶲に、母さんのメールのことを話したら、久々に会えると、とても嬉しそうでなにより。
湯冷めしないうちに2人を部屋に行かせて、俺も戸締まりやゴミ集めを終わらせ、風呂に入った。
楽しそうな話し声が聞こえる双子の部屋の前を通って、自分の部屋へ。
パソコンのメールを確認してからベッドに入り、携帯を手に取って母さんのメールに返信する。忘れてたわけじゃないから安心してほしい。
「これ、親父も帰ってくるんだろうか?」
ふと、そんな予感が口をついて出た。
雲雀と鶲を徹底的に可愛がるだけならいいけど、親父はちょっとうざ……違う、愛がうるさいんだ。久々に会うときのことを考えると、諦め半分、嬉しさ半分。
携帯を枕元に置き、俺は布団を被った。
明日も主夫をしないとだからな。主夫は体力勝負なところもあるし。さて、寝よ寝よ。
ロリコンは】LATORI【一日にしてならず】part7
(主)=ギルマス
(副)=サブマス
(同)=同盟ギルド
1:かなみん(副)
↓見守る会から転載↓
【ここは元気っ子な見習い天使ちゃんと大人しい見習い悪魔ちゃん、生産職で女顔のお兄さんを温かく見守るスレ。となります】
前スレが埋まったから立ててみた。前スレは検索で。
やって良いこと『思いの丈を叫ぶ・雑談・全力で愛でる・陰から見守る』
やって悪いこと『本人特定・過度に接触・騒ぐ・ハラスメント行為・タカり』
紳士諸君、合言葉はハラスメント一発アウト!
ギルマスが立てられないって言ってたから代理でサブマスが立ててみたよ。上記の文、大事! 絶対!
・
・
・
762:夢野かなで
今日も今日とて1日の疲れをロリっ娘ちゃん達の見守りで癒やして参りまっしょい。明日への活力源は、ここに……!
763:黒うさ
>>756 とりあえず、前にも話題になってたかもだけど初心者は鈍器が一番だよ! 撲殺天使の知り合いがいるから間違いない!
764:かなみん(副)
何人か新しいギルメン選んだので、次の掲示板になるちょうどいい感じで加入してもらうね。みんな、仲良くしてね~。
765:焼きそば
北の試される大地……。野菜とか美味しそう。
766:プルプルンゼンゼンマン(主)
>>759 え、俺この間当たった変装セット初級編装備して船に乗るつもりだよ? ロリっ娘ちゃん達にとって俺達はモブ、彼女達が途方もない困難に当たってしまったときだけ少しだけ手を貸す。貸せたら良いな、的な。俺達は紳士だから!
767:ナズナ
>>756 武器が下手なら魔法でいいと思う。今は必中扱いだからMPとスキルがあればある程度楽しい、かも? 多分ないとは思うけど、マニュアル操作きたら悲しみの大河に沈むことになる。
768:空から餡子
ジャガイモ、中世、ジャガイモ警察、うっ頭が……!
769:もけけぴろぴろ
新人さんかぁ~。かなみんの隣でチラッと申請者見せてもらったけど、めっちゃ個性的な名前多くね? って感じ。さすが紳士!
770:白桃
船から海釣りしてもいいって書いてあったから、ちょっと奮発して釣り竿買っちゃった。これならリヴァイアサンは無理でも、シーサーペントくらいなら大丈夫。美味しいの釣れたら良いなぁ。
771:iyokan
>>764 うわぁ~い、ロリコン同志が増えるぞ! ロリッコチャンタチカワイイヤッター!
772:つだち
とりあえず、幼馴染に鈍器の魔法使いオススメしとく。みんな相談に乗ってくれてありがとー。
773:さろんぱ巣
>>768 そいつらどこにでもいるな。出来ればジャガイモより魔法とか魔物とか、そっち突っ込んでほしい。
774:ちゅーりっぷ
みんな先回りの馬車が来たぞー! のりこめー!
775:甘党
ロリコンはこのギルド、ショタはあっちのギルド、っていつか言われるようになるんだろうか……。り、理想郷か……!
776:こずみっくZ
>>774 わぁい^^
・
・
・
819:わだつみ
船でっけぇ~! 豪華客船かよ! 見たことないけど!
820:密林三昧
乗り物酔いに効く薬、薬屋の婆ちゃんから買ってきた。これで思い込み酔いも大丈夫、だと思いたい。これはゲームゲームゲーム。
821:中井
>>810 無理はよくないよ。のんびり一緒に行こう。
822:ましゅ麿
ある程度の露払い、ってか無駄に強い敵は普通にいないか。この前、蜂蜜鬼神が暴れてたもんなぁー。とおいめー。
823:黄泉の申し子
あれ、本当に女神像かよ。ギルドのポイントけちったな。うちは巨乳好きな奴らが教会にあるのと同じ女神像用意してたから、あれ見慣れたらなぁ。でも実は効果が一緒。
824:氷結娘
料理買い込んじゃった。王都の料理に慣れたら他行くのやんなっちゃうかもー。でもロリコンだから居着くのは無しー。
825:sora豆
>>816 それは、本当か? ……ごくり。
826:餃子
まだ集落の規模だけど、来月くらいには海洋都市まで発展してそう。安全かつ確実に海を渡れるって、魔物の多いここではめっちゃ強みだからなー。新鮮な魚、お刺身、タコ、イカ、ウニ、じゅるっ。
827:コンパス
運がよければ人魚とセイレーンが歌ってるとこ見れるらしいね。楽しみにしておこーっと。心躍る。めっちゃwktk
828:魔法少女♂
うーん、やっぱガラ悪そうなの多いナ☆☆★ 目を光らせねば!
829:かるぴ酢
>>817 あ、それは結構です(真顔)
830:黒うさ
楽しそうにしてるロリっ娘ちゃん見てると幸せになる。こっ、これが母性……! 性別違うけど。
831:ナズナ
割りとうちのギルド、ガチ派とほどほど派とうぇーい派に綺麗に分かれてるよね。ちなみに自分はうぇーい派だぞ☆
832:もけけぴろぴろ
>>820 ぬしも一緒に歩きで行こうず。無理はよくないよ。
10
お気に入りに追加
12,745
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。