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【樹玄海暴走編】
第45話 愛のカタチ
しおりを挟む少女は言葉が出なかった。
子供の自尊心を奪い、なおかつ自分たちの都合で子供を置き去りにし、離れ離れで暮らすことを勝手に選び強要する召太の両親に怒りではなく、もはや恐怖を感じたのだった。
「僕は、これから…独りで生きていくしかないんです…」
召太は呟くようにそう言った。
そんな召太を見て、自分の力では助けてあげることができないことを恨みながら、少女は召太をゆっくりと抱きしめた。
そして、場面はアトリエへと戻る。
カスターノは召太の顔を見ながら、一筋の涙を流す。
「私…、だったんだね…」
「えっ?」
カスターノの一言を、召太は聞き返す。
「召ちゃんを守ってあげるって、あの時、私が誓っておきながら…。召ちゃんは駄目なんかじゃないって思っていながら…。私が一番…召ちゃんを信じてあげてなかったんだね…。ごめんね。ごめんね…」
カスターノのはそう言って、その場に崩れ落ちた。
「召ちゃんは、こんなに強いのに…」
そんなカスターノを見て、召太も地面に膝をつき、カスターノを静かに抱きしめた。
「カスターノ…。僕がこうしていられるのは…君のおかげなんだよ。僕は君となら、こんな僕でもいいんだって思えるんだよ。だから…もう僕の前からいなくなるなんてしないで…。本当に…僕には、君が必要なんだ…」
二人は泣きながらそのまましばらく抱きしめあった。
「話は丸く収まったみたいだな…」
二人の様子を見ていた巡がカーヤにそう呟いた。
「そうね。愛と呼ぶには少し不格好で、過保護が過ぎるかもしれないけど、それって言っちゃえば親愛に近いのかもね」
「親愛…」
カーヤの言葉を巡は復唱する。
「でも、それだってまぎれもない愛なのよ」
「あぁ。そうだな」
カスターノと召太。抱きしめあう二人を、巡は親子のように見えた。
気弱な息子のために、自分を偽ってまで守ろうとする母親と、その母親の愛を受けながら、まっすぐ向き合い一人立ちすると決めた無垢な息子のような、そんなどこにでもあるような親子の関係に。
「私たちの愛は、どんなカタチになっていくのかしらね」
カーヤがそう言った。
巡は言葉を探す。
「そうだなぁ…」
カーヤは巡の方を見ると、巡もカーヤを見る。
「まぁ、どんなカタチでもいいよ。お互いを想い合えれば、それが一番なんじゃないの」
「…。ふふっ」
カーヤは巡の言葉に、小さな笑みを浮かべた。
「な、なんだよ?」
「ううん。何でもない!」
普通なら恥ずかしくて言えないようなことも、巡はしっかりと言葉にしてくれることがカーヤは嬉しかった。
あえてそれを巡に伝えないのは、カーヤのささやかな悪戯心だった。
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