これも何かの縁(短編連作)

ハヤシ

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短編連作物語『これも何かの縁』紹介

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児童養護施設育ちの若夫婦を中心に、日本文化や風習を話題にしながら四季を巡っていく連作短編集。

テーマは生き方――差別と偏見、家族、夫婦、子育て、恋愛・婚活、イジメ、ぼっち、オタク、劣等感、コミュ障――それぞれのキャラが自ら抱えるコンプレックス・呪いからの解放が、物語の軸となり、それらを『きれいごとなし』で語っていきます。

そして『縁の形』も変わっていきます。近しい縁が薄まって敵対したり、反対にお互い嫌っていた関係が共感の方向へ変化したり……(第二部の四条夫妻と小林和江の関係、小林和江と母の関係など)
どうぞ、彼らの『縁の行方』をご覧あれ。

本編第一部は、四条夫婦を中心にハートフル・コメディチックな話や風習についての雑学話が続きますが、後半から『きれいごとではいかない四条静也の黒い部分』が顔を出します。

本編第二部は、コンプレックスを抱えるフェミニスト・福田みすず、独身アラフォー女子・小林和江、ほか第二部より登場するイジメられっこだったオタク漫画家・沢田文雄や漫画家の卵・長山春香などなど世間の呪いにかけられたキャラクターたちが解放されていくお話です。もちろん四条夫妻も登場します。

恋愛に縁がない福田みすず、仕事と家庭は両立できないと考える小林和江、世間一般の人の目が怖い沢田文雄、人間の世界を醜いと考える長山春香、彼らはどういった縁を築き、人生に折り合いをつけていくのか――ということでドラマ性は第二部の方が強いです。

第二部でも後半、児童養護施設をキーワードに、差別について『きれいごとなし』で小林一家が物語ります。
彼らの視点で語られる、四条夫妻や長山春香に対する偏見は、四条静也が仕方ないと考える『差別と偏見』とリンクします。

世間が良しとする価値観から、そして、差別と偏見から逃れるのは難しいけど、そこから少しでも自由になれる生き方をキャラクターを通して考えてみました。

では、各話について簡単なあらすじを紹介していきましょう。

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プロローグまたは番外編(5編)
――「蝉」「中秋の名月」「豚草」の3編はイジメられっこ『長山春香』を軸にした連作となってます。『長山春香』は本編・第二部から登場する主要キャラクターです。

※劇中、長山春香へのイジメが止みますが、なぜイジメが止んだのか、本当の理由は本編第二部にて明らかになります。

「蝉―僕のランク」
学校で下位ランクの『僕』、最下層女子『長山春香』に何を思う。
学園もの。ちょい辛め。シリアス。

「あだ名―中秋の名月」
白井月子が自分のランクを守るために犠牲にしたのは?
テーマはイジメ。シリアス。己の容姿に劣等感を抱える月子が犯した罪とは?

「豚草―腐女子の誇り」
中学時代、下位だった長山春香、白井月子、そしてもう一人「モヤシ」こと八島麗華の話。こちらはほんのりコメディ。シリアス度は低め。

「秋のお彼岸―浮気な魚・アラフォー独身女子の幸せ」
恋愛や結婚を一歩引いて見ている冷静な未婚アラフォー女子・小林和江が主人公。本編の主要キャラクターです。お彼岸のプチ雑学あり。浮気する男は下等生物であることを科学的観点から語る。

「血液型診断―四条夫妻の秋の休日」
若夫婦のほのぼのハートフルなお話。血液型、重陽の節句(栗の節句)の雑学ネタ入り。四条夫妻登場。本編の主人公カップルです。

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本編・第一部(24編)

「聖夜―ああ人権! 言論の自由VS女性の権利」
若夫婦・四条静也と理沙の聖夜。性夜になるのはお約束だが、その前になぜか女性の人権VS男性差別の議論に。

「大晦日の願い―目指せ健康長寿」
おせちの雑学を織り交ぜつつ、四条カップルのほのぼのハートフルな物語。

「煩悩の年越し―子孫繁栄・正しい性欲」
柚須風呂、年越し蕎麦のうんちくを織り交ぜた四条カップルの……煩悩物語。ちょっとエッチ。

「元日のお雑煮―太もも大好き」
お雑煮のもっちりした白いお餅に理沙の太ももを重ね合わせる静也……。

「年賀状―人間関係は難しい」
実は人間関係を築くのが苦手な四条カップル。彼らには友だちがいない――成人式の苦い思い出がよみがえる。

「セクハラ鏡餅―表現の自由VS女の人権」
フェミニスト・福田みすずが登場。表現の自由VS女性の人権――セクハラ男・黒野先輩を交え、下らない戦いが始まった。鏡餅についての雑学あり。

「セクハラ恵方巻き―いやらしい由来」
静也VSフェミニスト・みすず。セクハラ男・黒野先輩のせいで、またもや下らない戦いが勃発。恵方巻きのいやらしい驚くべき由来とは。

「悩ましき桃の節句―マタニティブルー」
理沙が妊娠。それはマタハラか? 静也&みすずVSアラフォー独身女・小林主任。桃の節句・ひな祭りの雑学もあり。

「嫁き遅れの雛人形―ブスですみません・フェミニストみすずの誕生」
今回は福田みすずが主人公。美人妹さりなも登場。容姿に劣等感を持つみすず。伯父からの数々の侮蔑。フェミニズムに目覚めるまでの過去とは。

「桜づくしのお花見―四条カップルのまったり休日」
静也と理沙の桜づくしの休日。お花見の由来や歴史、桜餅、桜茶、桜湯の雑学満載。ほのぼの雑学物語。

「鯉づくしの端午の節句―四条カップルの地味で豊かなGW」
静也と理沙の鯉づくしの休日。端午の節句の由来や歴史、柏餅、ちまき、菖蒲湯の雑学満載。ほのぼの雑学物語。

「梅雨の季節の和菓子の日―縁の始まり」
静也と理沙の縁の始まりとなる中学時代の出会いとは。理沙が健康長寿にこだわる理由が明かされる。和菓子の日、夏越しの祓、ドクダミ湯について雑学満載。

「七夕伝説―二人ぼっち・普通の人たちとの深い溝」
職場の周囲の人間となじめない理沙。実は今現在も静也と理沙には友だちがいない。自分たちと世間の間には大きな天の川が流れていた。七夕関連の雑学満載。

「七夕への願い―アラフォー独身女子・小林和江の生き方」
今回の主人公はアラフォー独身女・小林和江。妊娠した理沙に眉をひそめる彼女だが……。彼女には彼女なりの考えがあった。

「お盆の過ごし方―四条夫妻のゆるゆるお盆計画」
お盆休みを家で地味に過ごす予定の静也と理沙の計画。お盆の由来や歴史、雑学満載。

「お盆―家族と共に」
理沙と静也、亡くなった家族への思いを抱え、その縁を思う。彼らの子どもの時代が垣間見えるお話。盆棚、薄荷湯、ホオズキなど夏ならではの雑学あり。

「文鳥と栗の節句―ふっくら・ぷっくり・もっこり」
文鳥、栗の節句についての雑学。理沙の母の話、理沙と静也の結婚の時の話が明かされる。

「十五夜・月見に思う丸いお腹―専業主婦はダメ?」
専業主婦VS働くママ。静也、ついに福田みすずに敗れる? 中秋の名月・お月見の由来・歴史など雑学満載。

「秋の夜・封印された黒い過去―静也の児童養護施設時代」
ついに赤ちゃんが生まれた。その時、静也の胸に去来したものは――イジメと暴力に支配されていた児童養護施設時代の生活だった。静也の苦い思い出とは? 無痛分娩についてのうんちくあり。本編第一部の中で核となる物語。

「神無月・縁結びの神様―幸せ耳掃除」
四条カップルの赤ちゃんの名前が決まる。神無月の意味、縁結びの神様について雑学満載。

「深秋の休日・帰る家―理沙の児童養護施設時代」
理沙の児童養護施設時代の話。イジメにあう理沙。静也のアドバイスによって切り抜けるが……。ママとなった理沙は、いじめっ子だったボスに思いを馳せる。

「クリスマス・コンプレックス―恋愛弱者の作戦」
フェミニスト・福田みすずの学生時代。彼氏をつくろうとするも、コンプレックスが邪魔をする。そんな彼女の痛い過去とは。今後の福田みすずの核となる話。

「厄落としの忘年会―結婚の条件」
アラフォー独身女子・小林和江の人生哲学とは。

「巡る四季・紡がれる縁―不幸からの逃走―」
静也の過去の話。友だちがいないってそんなに悪いことなのか? 担任にも眉をひそめられていた静也の学校生活とは。きれいごとでは生きていけない。差別は必要悪――静也の黒さが垣間見られるお話。

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本編・第二部(28編)

「面倒な年賀状―赤ちゃんの写真入り」
微妙な問題をはらむ子どもの写真付き年賀状。やはり問題が起きてしまった。四条静也VS職場の女性たち。新生児の初正月についての雑学あり。

「新春の争い・お金が縁を左右する―敵は親族」
小林家のお正月。アラフォー独身女子・和江と弟夫婦との確執が始まる。弟夫婦の小林和彦・真理子に敵視される和江。だが、和江も負けていない。お金の問題は縁をふりまわす。

「元日の苦い縁談―イケメンだけど最低ランク?」
フェミニスト・おブスな福田みすずに縁談が。そのお相手は……やはりワケありだった。暇つぶしに縁談を受けてしまうみすずだが……。

「鬼は外・心の中に棲む鬼―周りは鬼だらけ」
年賀状事件からその後、静也は相変わらず女性陣と距離を置いていた。そんな静也を理解する理沙。節分・豆まきの由来・歴史など雑学満載。

「真冬の日のドライなお見合い―寒い打算」
福田みすず、イケメン郷田浩とお見合い。その結果は……。寒々しい思いをしつつも、打算が働く。

「出しっぱなしの雛人形―そこまでして結婚したい?」
福田みすず、ついに見合い相手のイケメン郷田浩の家へ行くことに。意外と郷田家との相性は良く、みすずの心は揺れる。が、常にこの問いが心に巣くう。そこまでして自分は結婚したいのか?

「春のお彼岸・この世も悪くない」
お墓参り。四条カップルとすれ違う小林和江。弟夫婦とのいざこざは収束するのか。和江の解決策とは。
お彼岸の雑学満載。そしてオタク漫画家・和江の従弟である沢田文雄の話が出る。(文雄は今後の主要キャラとなります)

「満開の桜に夢を見る―子のいない女はやっぱり不幸」
小林和江の義妹・真理子の思い。和江とは相性が悪い真理子。その専業主婦としての誇りとは。娘の恵美子に抱く夢とは。

「桜の葉―フェミニストの逆襲」
福田みすずのお見合い編、決着。呪いが解けたみすずVS郷田浩の凄まじい戦いをご覧あれ。

「風のない日の鯉のぼり―オタク漫画家の生きる道」
小林和江の従弟であるオタク漫画家・沢田文雄がついに登場。カースト下位、社会不適合者。自身に劣等感を抱く彼の過去とは。

「五月晴れの動物園―自立できなくてすみません」
福田みすずの美人妹さりなの話。自立って何? 離婚、そして元夫について語る。

「漫画編集者・父の日を想う―イクメンなんてクソ食らえ」
さりな元夫、漫画編集者で沢田文雄の担当でもある浅野仁の話。お待たせ、ついにあの長山春香も登場。

「雨に沈む醜い世界―最下層に置かれた漫画家の卵・長山春香」
壮絶なイジメを経験した漫画家の卵・長山春香の話。なぜ春香は標的にされたのか、そして四条静也と理沙との接点、なぜイジメが止んだのか、本当の理由も明らかにされます。(ここで番外編の話とつながります)

「海の日の孤独なる幸せ―漫画家沢田文雄とアシスタント長山春香の生き方」
社会からの爪弾き者の沢田文雄と長山春香、それぞれの視点から話が進む。海の日の雑学あり。

「真夏・孤独と幸福の狭間で―育児がこんなに辛いなんて」
近所の主婦に子への虐待疑惑のウワサが。理沙も近所の目が気になり、過酷な育児に心が疲弊する。

「地蔵盆・子どもを見守るお地蔵さん―虐待疑惑」
虐待主婦の話に進展が。地蔵盆の雑学あり。

「中秋の黒い同窓会―元イジメっ子VS元イジメられっ子」
オタク漫画家・沢田文雄、高校の同窓会へ。そこでイジメっ子元同級生と会う。沢田文雄のとった行動とは。

「祝・お誕生日―恵まれた子と恵まれない子」
涼也1歳の誕生日。日本には赤ちゃんの将来を占う『選び取り』という風習があったようで。幸せな四条カップルの姿をご覧あれ

「秋の夜長―孤独死、上等」
孤独死、上等。死は安らぎ。長山春香にとって遠ざけたいのは人であり世間だった。けれど『漫画の世界』が、まだ長山春香とこの世との縁をつなげている。

「深秋の醜い争い―縁が形を変えていく」
和彦VS和江。沢田文雄も無関係でいられなくなり。和彦の児童養護施設の子どもたちへの偏見が露見。果たしてこれは差別なのか? 四条夫妻を擁護する和江。そして長山春香を擁護したい文雄がとった行動とは。文雄を長らく苦しめていた劣等感が消えていく。

「仲良しホッペ―パパのお顔は痛い」
涼也に頬ずりしたら泣かれてしまった静也。男ながらにスベスベホッペを目指す。
シリアス話が続いているので、ここで箸休め的な軽い物語を入れました。

「それぞれの道①長山春香―漫画の力・未来と縁を結ぶ」
長山春香、最終編。沢田文雄の漫画が春香に影響を与える。惨めな過去に囚われ、自尊心を奪われ、自分を粗末にしてきた春香は、ついに未来を得た。この世に一矢報いたい。自分は表現者として生きたい。逃げから攻めに転じる春香の姿をご覧あれ。

「それぞれの道②小林和江―差別と縁を切るのは難しい」
和江VS母・敏子。母の児童養護施設の子に対する差別と偏見に唖然とする和江。母のことを一番理解していたと思い込んでいた自分を反省。それは傲慢なことだった。正論では人の気持ちを動かせない。差別はあって当たり前と割り切り、母と距離を置くことになった和江が行く道とは。

「それぞれの道③小林和彦―娘のために縁を操る」
和江の弟・和彦視点の話。児童養護施設の出身者を擁護する姉の和江と従弟の沢田文雄のことが気に入らない和彦。でも……なぜ彼らのことが気に障るのだろうか。
罪悪感を押し殺し、家族のために生きることを改めて決意する。それが和彦の正義だった。

「それぞれの道④福田みすず―クリスマスと縁を切る」
小林和江が宣伝していた沢田文雄の漫画を手にするみすず。その内容は!
呪いが解かれた清々しい福田みすずの姿をご覧あれ。お独り様クリスマス、上等。

「それぞれの道⑤郷田浩―ブスとは縁を切りたいのに」
漫画コミック誌を手にする郷田浩。それが自分と福田みすずをモデルにした話だと分かり……。
なぜ当初、郷田はみすずとの縁談を受けたのか、ゲスな思いが明かされる。

「それぞれの道⑥沢田文雄―世間のランクと縁を切る」
郷田浩と福田みすずをモデルにした沢田文雄の漫画は大反響を呼んだ。
沢田文雄は郷田浩に思いを馳せる。世間のランクを気にして、劣等感を募らせていたのは郷田も同じだった。でももう高校時代とは縁を切る。小林家からも出ていく。『真っ当な人たち』とは離れ、自由になる沢田だった。

「それぞれの道⑦四条カップル―この縁が続きますように」
最後はやっぱり四条カップルで締め。本編・最終回。
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