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6.すれ違い
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最初のデートはオーランドの教えてくれた店での食事だった。もちろん、メレデス夫人のガーデンパーティーの後、オーランドが気を利かせて二人きりにしてくれたおかげだ。
堅苦しくなく、それでいて清潔感のある酒場。いつも仲間同士で集まる酒場では分厚い肉が主流だが、その店では串に一口サイズの肉と野菜が鮮やかに盛られていた。
エミリアはその美しさにひとしきり感動すると、品よく丁寧に頬張っていた。
二度目のデートは教会へ、町並みを二人で並んで見ながらお互いのことを話していた。
シルヴェスタは、これまで女性と真剣に交際したことがないことを。エミリアは望まぬ結婚から逃げてきたこと、それから実は占いが得意ではないことを打ち明けた。
「貴方が最初に声を掛けてくれた時、この町でやっていく自信を失っていたの。ちょうど、ある夫人とトラブルになっていてね……貴方が声を掛けてくれて、話をして救われたわ、久しぶりに楽しかった」
「俺も、君みたいに楽しく話をする子は初めてだった。たくさん笑う君に癒されていたよ」
シルヴェスタの手は緊張で震えていた。エミリアはその手に優しく触れた。
「エミリア、君が好きだよ」
「シルヴェスタ、私も貴方が大好き」
お互いの手を取り合うと、示し合わせたように鐘が鳴った。まるで二人を祝福するように。
ーーそれが数週間前の出来事だ。
「エミリア、また仕事か?」
エミリアは以前住んでいた狭い安宿から越して、こじんまりとしているがそれなりの宿に泊まっている。毎朝焼き立てのパンが食べられると、涙目で喜んでいた。
彼女はパンを頬張りながら、身支度を整えている。
「ええ、そうなの。前より良い所に泊まってるし頑張らなくちゃ」
「一緒に暮らせばいい」
「まだだめよ、貴方に甘える訳にはいかないわ。私は家出の身なんだから」
相変わらずほとぼりが冷めるまでは屋敷に戻れないらしい。親の決めた婚約者とやらが諦めるのをじっと待っているようだ。彼女の済む町には、半年便りがなければ縁談は無かったことになるという暗黙のルールがあるらしい。
「それにしても、最近デートだってまともに出来てないじゃないか」
「貴方だって忙しいんだもの、仕方ないでしょう?」
あれからエミリアは少しだけ改心した。このままのやり方では良くないと、タロットカードを勉強している。タロットの才能はまだ開花していないようだが、相変わらずの観察眼と話術で乗り切っている。
最近では占いというよりも彼女に話を聞いてもらいたいだけの者の方が多い。アドバイスを貰ってみんな満足そうに帰っていく。そんな話題の彼女に、是非主催するパーティーで置いておこうと依頼が増えているのだ。
喜ばしいことだが、自分より仕事を優先されるのは面白くない。
「俺は今日久しぶりの休みなんだ、ずっと会いたくて寂しかったよ」
「私も会いたかった、でもごめんね。貴方は今日も仕事だと思っていたのよ……ウェスやオーランドは?」
ウェスは仕事中、オーランドは旅行中であと二、三日は帰ってこない。
「……俺たちは恋人なんだよね」
「そうよね、今度話し合いましょう」
エミリアは話を遮るように、シルヴェスタの頬にキスをした。
ーーせっかく恋人になれたのに。
シルヴェスタは颯爽と部屋を出ていく彼女の背中を恨めしそうに見つめた。頬へのキスくらいでは誤魔化せない。
堅苦しくなく、それでいて清潔感のある酒場。いつも仲間同士で集まる酒場では分厚い肉が主流だが、その店では串に一口サイズの肉と野菜が鮮やかに盛られていた。
エミリアはその美しさにひとしきり感動すると、品よく丁寧に頬張っていた。
二度目のデートは教会へ、町並みを二人で並んで見ながらお互いのことを話していた。
シルヴェスタは、これまで女性と真剣に交際したことがないことを。エミリアは望まぬ結婚から逃げてきたこと、それから実は占いが得意ではないことを打ち明けた。
「貴方が最初に声を掛けてくれた時、この町でやっていく自信を失っていたの。ちょうど、ある夫人とトラブルになっていてね……貴方が声を掛けてくれて、話をして救われたわ、久しぶりに楽しかった」
「俺も、君みたいに楽しく話をする子は初めてだった。たくさん笑う君に癒されていたよ」
シルヴェスタの手は緊張で震えていた。エミリアはその手に優しく触れた。
「エミリア、君が好きだよ」
「シルヴェスタ、私も貴方が大好き」
お互いの手を取り合うと、示し合わせたように鐘が鳴った。まるで二人を祝福するように。
ーーそれが数週間前の出来事だ。
「エミリア、また仕事か?」
エミリアは以前住んでいた狭い安宿から越して、こじんまりとしているがそれなりの宿に泊まっている。毎朝焼き立てのパンが食べられると、涙目で喜んでいた。
彼女はパンを頬張りながら、身支度を整えている。
「ええ、そうなの。前より良い所に泊まってるし頑張らなくちゃ」
「一緒に暮らせばいい」
「まだだめよ、貴方に甘える訳にはいかないわ。私は家出の身なんだから」
相変わらずほとぼりが冷めるまでは屋敷に戻れないらしい。親の決めた婚約者とやらが諦めるのをじっと待っているようだ。彼女の済む町には、半年便りがなければ縁談は無かったことになるという暗黙のルールがあるらしい。
「それにしても、最近デートだってまともに出来てないじゃないか」
「貴方だって忙しいんだもの、仕方ないでしょう?」
あれからエミリアは少しだけ改心した。このままのやり方では良くないと、タロットカードを勉強している。タロットの才能はまだ開花していないようだが、相変わらずの観察眼と話術で乗り切っている。
最近では占いというよりも彼女に話を聞いてもらいたいだけの者の方が多い。アドバイスを貰ってみんな満足そうに帰っていく。そんな話題の彼女に、是非主催するパーティーで置いておこうと依頼が増えているのだ。
喜ばしいことだが、自分より仕事を優先されるのは面白くない。
「俺は今日久しぶりの休みなんだ、ずっと会いたくて寂しかったよ」
「私も会いたかった、でもごめんね。貴方は今日も仕事だと思っていたのよ……ウェスやオーランドは?」
ウェスは仕事中、オーランドは旅行中であと二、三日は帰ってこない。
「……俺たちは恋人なんだよね」
「そうよね、今度話し合いましょう」
エミリアは話を遮るように、シルヴェスタの頬にキスをした。
ーーせっかく恋人になれたのに。
シルヴェスタは颯爽と部屋を出ていく彼女の背中を恨めしそうに見つめた。頬へのキスくらいでは誤魔化せない。
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