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家族になりました。

大丈夫だよ。

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「こら日菜!無茶しちゃダメだろ!」

俺は日菜を叱った。
日菜を叱るのは初めてかもしれない。

ビクリとする日菜。
俺がテーブル叩いて怒鳴ってたから慌てて来てくれたんだろうな。

その光景を思うだけで日菜の優しさを感じて微笑ましく感じてしまう。


とりあえず点滴してた場所、消毒して止血しなければ。

点滴を引っこ抜いたからか手に血が滴っていた。


「ごめんな、ちょっと痛いかもだけど消毒して強めに押さえるかんな。」

俺は消毒し、絆創膏を貼るとギュッと押さえつけた。

「太陽っ……痛いっ」


「すーぐ終わるから。………よし、もういいよ!頑張ったな。」


俺が手を離すと日菜は涙を拭った。

「日菜、点滴勝手に抜いちゃだめだろ?」

「ごめんなさい…。太陽が怒ってたから、早く行かなきゃって思って……」


日菜は少し暗い顔でそう言った。



「しゃーねーな。じゃーもう一回点滴繋ぐから、早く腕出して。」

「……」


え。また?とでも言いたげな顔で俺を見る日菜。
本当は少し落ち着いたから少し様子見でもいいんだけど……

ちょっと、からかいたくなる顔だ。



「日菜ちゃーん?はやくしてください?」


「………ヒック。」

おれが少し煽ると日菜は泣き出してしまった。

相当嫌だったのだろう。

小児科では注射を怖がる子はたくさん見て慣れているが、日菜はとても可愛らしくてしょうがない。


「じゃあ俺から一つ提案です。消化に良さそうなモノ作ってくるから、それを食べるのと、経口補水液を少しずつ飲めるならチックンするの無しにしよう。」


俺がそう言うと日菜はパッと顔が明るくなり

「日菜頑張る!!」

と笑顔になった。



俺はすぐに煮込んだうどんと経口補水液を持って行った。

「少しずつでいいから食べてみろ。無理はするなよ。」


「うん。」

そう言うと日菜はうどんをすすり始めた。

「アチッ!」

「こら、ふーふーしてから食べなさい。ほら、食わせてやるから。」


俺が食べさせると恥ずかしかったのか少し顔を赤らめて食べ始めた。




「もういいのか?」

「うん。ごちそうさま。」

日菜はうどんを三分の一ほど食べた。
今の日菜にとってはとてもがんばったと思う。


「よく食ったな。えらいえらい。」

俺がそう言って頭をポンポンと撫でると日菜は嬉しそうな照れているような顔で下を向いた。


「じゃあ飯も食えたしもう少し寝ること。いいな?」

「……うん。」


日菜は少し納得がいかないような顔をしていたが、カルテ整理もまだだったため俺は寝室を出て仕事部屋に移動した。





時刻は深夜の12時を過ぎたくらいだろうか。

カルテ整理も終わりシャワーを浴びて、俺も寝るために寝室へと向かった。



寝室のドアを開けた瞬間そこには目がパッチリとしている日菜の姿。

「起きてたのか。」

「あ……えっと……」



「眠れないなら俺のとこ来ても良かったのに…」

そう言って俺は日菜のおでこに手を当てた。

「まだ熱高そうだな……」

「大丈夫だよ。」

出た、大丈夫…。
なんでもう少し頼ってくれないのかなぁ…


そりゃこんなすぐには無理か。

にしても小一ってこんなにも人に気を遣える年齢なのだろうか疑問に思う。



そんな事を考えていると日菜は起き上がり俺の目を真っ直ぐと見つめてこう言った。


「太陽は私のこと邪魔じゃないの?恨んでないの?」


そんな質問に俺は少し動揺した。
でも多分さっきの女が日菜に散々そう言ってきたのだろう。
それはなんとなくだけど分かっていた。


「どうして俺が日菜の事恨むんだ?」

俺は聞き返した。すると日菜は少し黙った後、口を開いた。


「パパとママは私のせいで死んだから……。だからみんな日菜の事嫌いで邪魔で恨んでるっておばさん言ってたから…。」


やっぱりあのババアか。

こんな小さな子の口からそんな言葉が出てくるなんて辛すぎるだろ。


俺は言葉よりも先に
日菜を強く抱きしめていた。


「大丈夫。嫌いでも恨んでも邪魔でもない。俺は日菜の事大好きだよ。日菜のパパとママももう側にはいられないけどずっと日菜の事大好きだと思うよ。」


それが俺に言える精一杯の言葉だった。

こんなことしか言えない自分が情けない。


でも本当に日菜の事一生大事にする覚悟は出来てる。



それの言葉で安心したのかそれから日菜が寝るのは早かった。
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