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「うちの親が本当にごめん」
「ううん、うちも似たような感じだったし、ごめんなさい」

庭のベンチに腰を下ろした途端、頭を下げ合う。
それからしばらく、なんとも気恥ずかしい沈黙が落ちた。

手は繋がれたままで、意識がそこにばかり集中してしまう。

「……あの、ね。さっきアーロンのお母様に言ったこと、本当だから」

それでもきちんと言いたくて、私から口を開いた。

「私の態度が変だった時があったでしょう。あの時からずっと、好きだったの」

全身に変な汗を掻きながら、それでも懸命に伝える。
アーロンが私のために急いで帰ってきてくれたのを嬉しいと思ったように、私も彼に嬉しいと思ってもらいたかった。

「だから、ミュスカーが冷たくなったのは私のせいで、アーロンは何も悪くないのよ」
「それは違う」

繋いでいた手が一瞬ほどかれて、それから寂しさを感じる間もなく指先が絡んだ。
心臓が変な音を立てる。

「嘘をついてまでアメリアを手に入れたんだ。あいつはアメリアを大切にする義務があるのに、それを放棄した。許せないよ」

厳しい口調と表情に驚く。
私のために怒ってくれているのだ。こんなに嬉しいことがあるだろうか。

アーロンは私が困っていると思ったのか、ハッとしたあとで表情をやわらげた。

「ごめん。せっかく二人きりなんだ、楽しい話をしよう」
「……そうね。会えなかった間のこととか聞きたいわ」
「はは、仕事と勉強ばかりだったからつまらないよ?」
「それでもいいの。アーロンがどんなことを考えて、どんなものを見てきたのか知りたい」

アーロンのことならなんだって。
自分が向き合うことを放棄してしまったあの日から、無理やりアーロンのことを考えないようにしていた。
最後に話せて良かったなんて、それだけのことを心の支えにして。

「それに昔のことも。アーロンがいつから私のことを好きだったのかとか。是非知りたいわ」
「……まともに顔を見ながら話せる気がしないな」

アーロンが少し頬を赤らめてまぶたを伏せる。
その仕草がとても可愛らしくて、胸がじわりと温かくなる。
かっこいいアーロンももちろん好きだけど、こういう顔も好きなのだと今更気付く。
これからもっと色んな顔が見られるのかと思うと幸せだった。

「ふふ、私も。さっきからずっと恥ずかしくって逃げ出したい気持ち。けど、前にそれで大失敗してるから」
「じゃあ、逃げられないようにずっと捕まえとかなくちゃ」

アーロンが冗談めかして笑い、繋いだ手に力を込める。
私も同じだけの力を返して、お互い赤い顔のまま笑い合った。

それから思い出話に花が咲き、いつから好きだったのとか、どれくらい好きなのかとか、子供みたいに競い合って話をした。

自然に距離が縮まり腕が触れ合って、また沈黙が落ちる。
今度は気まずいものではなくて、心が満たされていく感覚があった。

アーロンの肩に頭を乗せると、手がほどかれてそっと肩を抱き寄せられた。
風がそよいで、葉擦れの音だけが静かに聞こえてゆっくりと目を閉じる。
心臓がとくとくと心地よいリズムを刻んでいた。

「……アメリア、」

「アーロン兄様ぁ!」

アーロンが私に呼びかけた瞬間、静寂を破るような声が響き渡る。

ばちりと目を開けて、声のした方を見る。
そこにはとても嬉しそうな笑みを浮かべて、息を切らせて走ってくるリリィがいた。
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