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飲み会の帰りにノクトが迎えに来てくれる。

浮き立つ心を抑え込んで出社する。
満員電車の圧迫感なんてちっとも気にならなかった。

事務所に入ると、待ち構えていた篠宮がニヤニヤと寄って来たけれど華麗にスルーして自席についた。
どうせこの後死ぬほど絡まれるのだ、勤務中くらい放っておいてほしい。


順調に仕事を片付けて定時で終えると、案の定微笑みを浮かべた創設メンバーに囲まれて連行された。

所長の加藤に同僚の清田。それに上司の篠宮と彼の同期の藤下。
総勢五人で、ちょっといい飲み屋に入る。

みんないい人たちなのだけど、普段一切しない私の恋愛事情を聞きたくて仕方ないみたいだ。
ありがたいことに、どうやら今日は奢ってくれるらしい。

「あの私、この後予定あるので九時前にはお開きでお願いしますね」
「オッケーオッケー」

牽制のために言うと、軽い調子で請け負ってくれる。
無理に引き止めたりはしない人達だ。この飲み会だって、本当に私が嫌がれば帰してくれただろう。

要は私も嫌ではないのだ。
詳細は言えないけれど、この幸せを誰かに聞いてもらいたい気持ちは確かにあった。


「インフルって聞いたけど、もう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで。むしろ前より元気なくらいです」

乾杯の音頭を終えるなり、心配そうな所長に聞かれてガッツポーズを作って見せる。
仕事を振る時は容赦ない鬼だけど、普段はちゃんと人間の心を持っているのだ。

「そうか良かった。じゃあ心置きなく聞けるな」

にっこり笑って身を乗り出す。
どうやら回答を間違えたらしい。

それから手加減のない質問タイムがスタートしてしまった。

「一緒に住んでるってマジ? どこで知り合ったの?」
「どこ……というと難しいんですけど、強いて言うなら家の前……?」
「お仕事は何をされてる方なの?」
「ええと……とある組織のトップ的な?」
「疑問形かよ。何、相手金持ちなの?」
「いやそういうわけでも……」
「組織のトップなのに?」
「稼ぐタイプの組織ではないというか……」
「宗教関連とか? もしかしてお布施とかしてないよね」

冗談ぽく言う清田ににこりと無言の笑みを返す。
当たらずとも遠からずだ。

「え……もしかしてあんた……」
「いえ違いますよ? あ、でも確かにカリスマ性はすごいです!」
「急に元気になるじゃん」

ノクトの素性に関して、のらりくらりとかわしていたのとは打って変わって活気づく私に、篠宮が噴き出した。

「いやホントかっこいいんです! 顔の造りが神の領域で! 声もうっとりするような美声でスタイルも完璧で。それから優しさの極みでインフルエンザの時もずっとつきっきりで……!」

ノクトの良さをありったけ並べ立てると、篠宮たちが半信半疑と言った顔で半笑いを浮かべた。

まだ引くのは早いと思う。
今日は彼らの好奇心を満たすために来たのではなく、推しのプレゼンをしに来たのだから。

私の飲み会はここからが本番だ。
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