上 下
87 / 91

87.初めて ※R18

しおりを挟む
「本当に私でいいの?」
「まだ言うか」
「冷静になったらやっぱり欲情しないなって気付いちゃったのかと思ってた」
「ばかおまえ船で手ぇ出さなかった俺の鉄の理性に感謝しろ」

言いながら手慣れた動作で私の服を脱がせていく。

「慣れててムカつくわ」

ムスッとしながら言うと、ウィルが嬉しそうな笑みを深めた。

「俺はおまえが処女ですげぇ興奮する」

そんなこだわりなかったんだけどなぁと上機嫌にキスをされて、それだけであっさり嫌な気持ちが消えていく自分に笑ってしまう。

「馬鹿にしてたくせに?」
「いやぁ心底惚れた女に他の男の手垢がついてないって最高だよな」

責める口調で言っても悪びれる様子もなく、いたるところにキスを落としながら私の緊張を解いていく。
優しい手と唇で触られて、どこもかしこもじんわりと熱を持ち始めていた。

あっという間に一糸まとわぬ姿にされて、今更ながらに電気を消してもらえば良かったと後悔する。
けれどウィル自身も服を脱ぎ去った瞬間、やっぱり消さなくて良かったとすぐに意見が変わった。

何度か見たことのある裸体に、おかしいくらいに鼓動が乱れて呼吸もままならない。

「すけべ」

私が身体をじっと見ていることに気付いたのか、ウィルが悪戯っぽい顔で言う。
だけどそんなのに構わず手を伸ばしてその肌に触れた。

それを合図に深く口づけられる。
何度も角度を変えて繰り返されるそれに、頭の芯が痺れていく。
擦り合わされる舌の違和感は快感に変わり、下唇を甘噛みされてびくりと身体が跳ねた。
服を取り払って密着した身体は汗ばんで、吐息交じりの小さな声が意思に反して漏れてしまう。

「……ウィルも初めてだったら良かったのに」

あっという間に息が上がって、的確に追い上げられていくのが悔しくてそんなことを言えば、ウィルが苦笑して私の頭を撫でた。

「そらお前より長く生きてるからそれなりにはな」

私が嫉妬をすればするほどウィルは嬉しそうだ。

「そのかわり経験値活かして死ぬほど気持ちよくしてやるよ」

にっこり笑われて顔が引き攣る。

だけど触れる手はずっと優しくて、丁寧に丁寧に身体をひらかれていく。

すごく大事にされているのがわかって、少し泣きそうになった。

「前と触り方が全然違う……」
「……悪かった」

何気なく口にした言葉にウィルが渋面を作る。

「あの頃は自覚したばっかで手ぇ出すの必死で耐えてたんだよ。なのにおまえが馬鹿な事言うから理性が一瞬吹っ飛んだ」

本当に申し訳なさそうに言いながら、私の目許にそっとキスをする。

「もうあんな風にはしないと誓う」

真摯な表情で言って、ふたたび深く口づける。
何度もキスを繰り返しながら、優しい手が私の身体を溶かしていく。
不安も恐怖も少しもなかった。
気持ち一つでこんなにも感じ方が変わってしまうのかと思うと不思議だった。

時間をかけて感度の上がった身体に、ゆっくりと熱の塊が押し入ってくる。

「痛くないか」

ウィルは苦しそうに眉根を寄せて、自分だってつらいのに私の身体を気遣った。
ぽたりと鎖骨の辺りにウィルの汗が落ちる。
相当我慢しているのだろう。

「……ん、だいじょうぶ……っはぁ、」

繋がった場所からぞわぞわと快感が這い上がっていく。
初めてなのにこんなに感じてしまっていいのだろうか。
ウィルの言う通り私はすけべな女なのかもしれない。
ぐっと奥まで押し入って、圧迫感に耐えるように手を伸ばして縋りつく。

繋がっているという事実が嬉しくてたまらなかった。

「レーナ」

乱れた髪をかき上げながら、静かな声が私を呼ぶ。

「愛してる」
「……ぁッ、!」

耳元で低く囁かれて、それだけで快感の波が大きくなった。
ぎゅっと目を閉じると、ウィルに強く抱きしめられて息が詰まった。

「っ、わるい、ちょっと今危なかった」
「へ……?」
「なか、すげぇ気持ち良くて焦ったわ……」
「……ウィルもちゃんときもちいい?」
「気持ちよすぎてやべーんだって」
「うれしい……わたしもきもちいい」
「……痛くねぇなら動きてぇんだけど」
「いいよ。いっぱいしてね」
「っ、ああもう!」
「あぅっ!」

どうしてだか怒ったような声で首筋に噛みつく。
痛くはなかったけれど、代わりに別の快感を得て声が上がる。

ウィルはもう何も言わずにゆっくりと動き出した。
引き抜かれる動きにぞくぞくと肌が粟立つ。
抜ける直前で再び奥まで押し込まれて、繰り返すうちにその動きが少しずつ速くなっていった。

私にできることはなにもなく、すっかり翻弄されて、あとはもう嬌声を上げ続けることしかできなかった。


結果から言うと、多少の痛みはあったが初めてだというのに死ぬほど気持ち良かった。

これも経験値の差ということだろうか。

本当にムカつく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。 王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

“用済み”捨てられ子持ち令嬢は、隣国でオルゴールカフェを始めました

古森きり
恋愛
産後の肥立が悪いのに、ワンオペ育児で過労死したら異世界に転生していた! トイニェスティン侯爵令嬢として生まれたアンジェリカは、十五歳で『神の子』と呼ばれる『天性スキル』を持つ特別な赤子を処女受胎する。 しかし、召喚されてきた勇者や聖女に息子の『天性スキル』を略奪され、「用済み」として国外追放されてしまう。 行き倒れも覚悟した時、アンジェリカを救ったのは母国と敵対関係の魔人族オーガの夫婦。 彼らの薦めでオルゴール職人で人間族のルイと仮初の夫婦として一緒に暮らすことになる。 不安なことがいっぱいあるけど、母として必ず我が子を、今度こそ立派に育てて見せます! ノベルアップ+とアルファポリス、小説家になろう、カクヨムに掲載しています。

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

処理中です...