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44.深夜会議
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その夜、ウィルが話を終えて出ていったあと。
いつもなら幸せな気持ちで眠りについているのに、ふと厨房の食糧庫の鍵を閉めたかが気になって部屋を出た。
別に盗み食いをするような人はエミリオくらいしかいないから放っておいてもいいのだけど、今日は妙に気になる。
嫌な予感と言うか、胸騒ぎと言うか。
とにかくなにかがいつもと違う気がして、部屋にじっとしていられなかった。
鍵のことなんて、部屋を出る口実に過ぎなかったのかもしれない。
ただ単純に、いつもとウィルの様子が違う気がして、いてもたってもいられなかっただけかもしれない。
そう思い至ったのは、食堂から明かりが漏れていることに気付いてからだ。
気配を殺して扉の前でそっと聞き耳を立てる。
そっと扉を開けると、声で誰がいるのかすぐにわかった。
ウィルとミゲル。その二人をはじめとする、幹部に分類される年長組五人だ。
何やら深刻な話をしているようで、皆いつもと声のトーンが違う。
それは何かの計画のようだった。
明日、こちらから船を襲うという物騒な話が、誰の反対もなく淡々と進んでいく。
聞いているうちに、徐々に顔が強張っていった。
いつもは向こうから仕掛けられた襲撃に応戦だけだ。
それが今回は、こちらから襲うらしい。それも、相手は商船なのだと言っている。
今までの海賊同士の小競り合いとは明らかに違う。
どうして、と問いたくても、問う相手はいなかった。
心拍数が勝手に上がっていく。
ウィル達は厳しい顔つきで、商船を襲う手順を話し合っている。
そうして奪った財産をどうするか、襲った後の商船をどうするかを、冷静に決めていった。
そっとその場を離れる。
震えそうな足で、ゆっくりと。
次第に歩調は早くなって、部屋に着くころにはほとんど駆け足になっていた。
ベッドに突っ伏して考える。
すっかり海賊生活に馴染んだつもりでいたが、それはとんだ勘違いだったのかもしれない。
海戦にも人死ににも慣れたなんて思っていたけれど、海賊同士の小競り合いだったから容認できていただけなのだろうか。
あちらから襲ってきたのだから、やり返すのも仕方ないと正当化していただけなのだろうか。
戦場に立ったこともない私が、そんな偉そうなことを言える立場ではないのは分かっている。
分かってはいるが、何の罪もない商船を襲うことを、私は是とすることが出来るのだろうか。
そんなことを混乱する頭で考える。
簡単に受け入れることはできない。
だって商船は悪者ではない。
犯罪者ではないのだ。
では、海賊は犯罪者だから殺していいのか。
それならウィル達が殺されても文句は言えないのか。
そもそも、殺してはいけないものとの線引きはなんなのか。
自分の中で何一つ整理が出来ず眠ることも出来ないまま、じりじりと夜が明けていく。
私はどうすればいいのだろう。
答えは見つけられなかった。
いつもなら幸せな気持ちで眠りについているのに、ふと厨房の食糧庫の鍵を閉めたかが気になって部屋を出た。
別に盗み食いをするような人はエミリオくらいしかいないから放っておいてもいいのだけど、今日は妙に気になる。
嫌な予感と言うか、胸騒ぎと言うか。
とにかくなにかがいつもと違う気がして、部屋にじっとしていられなかった。
鍵のことなんて、部屋を出る口実に過ぎなかったのかもしれない。
ただ単純に、いつもとウィルの様子が違う気がして、いてもたってもいられなかっただけかもしれない。
そう思い至ったのは、食堂から明かりが漏れていることに気付いてからだ。
気配を殺して扉の前でそっと聞き耳を立てる。
そっと扉を開けると、声で誰がいるのかすぐにわかった。
ウィルとミゲル。その二人をはじめとする、幹部に分類される年長組五人だ。
何やら深刻な話をしているようで、皆いつもと声のトーンが違う。
それは何かの計画のようだった。
明日、こちらから船を襲うという物騒な話が、誰の反対もなく淡々と進んでいく。
聞いているうちに、徐々に顔が強張っていった。
いつもは向こうから仕掛けられた襲撃に応戦だけだ。
それが今回は、こちらから襲うらしい。それも、相手は商船なのだと言っている。
今までの海賊同士の小競り合いとは明らかに違う。
どうして、と問いたくても、問う相手はいなかった。
心拍数が勝手に上がっていく。
ウィル達は厳しい顔つきで、商船を襲う手順を話し合っている。
そうして奪った財産をどうするか、襲った後の商船をどうするかを、冷静に決めていった。
そっとその場を離れる。
震えそうな足で、ゆっくりと。
次第に歩調は早くなって、部屋に着くころにはほとんど駆け足になっていた。
ベッドに突っ伏して考える。
すっかり海賊生活に馴染んだつもりでいたが、それはとんだ勘違いだったのかもしれない。
海戦にも人死ににも慣れたなんて思っていたけれど、海賊同士の小競り合いだったから容認できていただけなのだろうか。
あちらから襲ってきたのだから、やり返すのも仕方ないと正当化していただけなのだろうか。
戦場に立ったこともない私が、そんな偉そうなことを言える立場ではないのは分かっている。
分かってはいるが、何の罪もない商船を襲うことを、私は是とすることが出来るのだろうか。
そんなことを混乱する頭で考える。
簡単に受け入れることはできない。
だって商船は悪者ではない。
犯罪者ではないのだ。
では、海賊は犯罪者だから殺していいのか。
それならウィル達が殺されても文句は言えないのか。
そもそも、殺してはいけないものとの線引きはなんなのか。
自分の中で何一つ整理が出来ず眠ることも出来ないまま、じりじりと夜が明けていく。
私はどうすればいいのだろう。
答えは見つけられなかった。
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