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二度目の訪問も初めての時と同じように事務的な行為でしかなかった。
やっぱり王様なんてロクなもんじゃない。
改めて大嫌いだ。

まともな会話もなく、名前を憶えられたのかすら怪しい。
なんなら産婦人科医の触診の方がもう少し気遣いを感じる。
あの短い逢瀬の中、私の容姿だか言動だかが気に入らなかったのだろう。

ここから寵愛路線にもっていける気がしない。
このままではすぐに飽きられて放逐されるに違いない。

三度目ともなると、口を利くことすらなかった。
王様が部屋に入った瞬間、物わかりの良い私はベッドに横たわり、裾をたくし上げてパンツを脱ぎ捨てた。
彼はやはり生気の感じられない冴えない顔のまま、準備の良い私にひとつ満足げに頷いて潤滑油を塗りたくる。
もう処女じゃないなら、準備時間は最短だ。

潤滑油を塗りたくる。ほぐす。突っ込む。

システム化されて効率的でシンプルだ。
実に潔い。

そうして出すものを出すと、ロクに会話もないまままたさっさと出ていく。
マジでなんなんだあいつ。


これっぽっちも欲情してる気配もないのに、律儀に毎週顔を出す。
謎だ。

王は月~金曜日までを、「部屋付き」と呼ばれる高位貴族の娘から選出された一人部屋持ちを順に回る。
私の割り振りは金曜日だ。
実家であるレゾナント家には現在クズしかいないが、過去の栄光でそれなりの権力者に位置している。
新参者が傅かないのが気に食わないのかと思って、食堂や風呂場で顔を合わせる他の「部屋付き」に探りを入れてみても、誰に対してもそんな感じだと肩を竦められた。

では土日に好きなように呼び出せるという二人部屋以下の娘たちはどうだろう。
下級貴族の娘まで含めると百名以上はいる。
それらの世話をする下女たちも気分次第では対象になりうる。
地位は低くとも見目美しいものを選んでいるのだから、選り取り見取りのはずだ。
気位の高い高慢ちきな娘より、謙虚で素朴な娘が好きという可能性もある。
けれど聞いてみて驚いた。
今の王になってから一度も呼ばれていないという。
それどころか、希望する娘はなんと家に帰らせてもらえるらしい。
実際に家まで帰りつけたかは後宮に住む私達には分からないが、それでも着実に後宮内の娘の数は減っていっているのだという。

何かの罠だろうか。
帰らせてやるという餌をチラつかせて、後宮を出たいと望むものを捕らえて何かの見せしめに……。
そこまで考えて、わざわざそんな回りくどいことをする必要もないなと馬鹿な思考を中断させた。

ではなんだろう。
同性愛者とかなのだろうか。
女相手では興奮しないのだ。
自分で勃たせていたし、その可能性は高いのではないか。

だが色々聞いてまわっても、王様が男色だという話はついぞ聞かなかった。
隠すのが相当上手いのか、それともみんなそれほど王様の動向に興味がないのか。

後宮は話に聞いていたより全然地獄ではないし、女同士の諍いもほとんどなく、意外なほどに穏やかな時間が流れている。
寵愛を競うべき王様が誰に対してもあんな調子だから、争う気も起きないのかもしれない。
皆一様に凪いでいて、このまま波風も立てず平穏に任期まで過ごせればいい。
そう思っているのが伝わってきた。

どういうつもりだあのヤロウという気持ちになるのは、どうやら私だけらしい。

だけど調べれば調べるほど、ますます王への謎が深まってしまっただけだった。

救いようがないほど下手くそなのか、早漏なのか。
あるいは単純に体力が無さすぎるだけなのか。
そういえばいつも死人のような顔色と死んだ魚の目をして訪ねてくる。

もしかして、どこか内臓でも悪いのだろうか。

少し気になったが、すぐに知ったことかと思い直して頭をブルブルと振った。
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