上 下
4 / 27

4. ※R18

しおりを挟む
後宮入りするハメになった流れを思い出して改めて腹が立つ。

血の繋がった家族ながら本当に始末に負えない。
こんなクソ貴族ばかりのさばらせやがってという思いが常にある。
だから私は王というものが大嫌いだ。

どうせ後継ぎの新王も同じ人でなしに決まっている。
現に後宮は以前のまま存続しているし、国内の様子も一向に良くなる気配がない。
王という地位に胡坐をかいて、好き放題しているやつなのだろう。

いっそ暗殺してやりたいが、どうせまた無能が王になるだけだ。
それに殺してしまったら養父の生活はどうなる。
私が上手くやっている間は、養父の生活は一応実家が保証してくれる。定期連絡を途絶えさせたら暴れてやると言っておいたから、さすがにそこはきちんとするだろう。

ならば新王に気に入られて、一日でも長くここで生きなければ。

そう思ったが、どうやらその目論見は上手くいかなさそうだ。



「ベッドに横になるがいい」
「はぁ……」

処女だと告げて面倒臭そうなため息をついた王に、言われた通りに仰向けになって天井を見上げる。
誘い文句を口にする甲斐性はないので無言でいたら、ギシッとベッドが軋んだ。
王様が乗り上げたらしい。

「服の裾をまくりなさい」
「うす」

王様からの命令なのだから従わざるを得ないのは当然だ。
だが張りのない声で力なく言われると、どう反応していいか困ってしまう。
出来ればもっと腹の底から声を出してほしい。
そうしたらもっとなんかこう、反抗心とかバリバリの尖った、あるいは従順なふりをしたしおらしい返事を返せるのに。
彼に対する態度を決めかねて、中途半端な返答になってしまう。

「下着を取って足を広げて」

淡々と言われたことをこなしていく。
本来は恥ずかしがったり悔しがったりする場面なのだろうけど、なんとも言えない既視感に襲われおとなしく従う。

下半身が思い切り露出した状態の私を、王様が無感動に見下ろす。
王様が何かの容器を取り出して開けた。

「ひえっ」

股間に垂らされた何かがひやりと冷たくて、思わず声が出る。
間抜けな反応に、しかし王様は何も言わなかった。

「少しじっとしていなさい」

そう言ってぬめぬめした何かを纏った指を、あらぬ場所に出し入れする。
しばらく無言の時間が続いた。

あーなんだろこれ。あれだ。わかった。この既視感。
医者の触診かっつー。

繰り返される挿入感に多少の吐き気を覚えつつ、このやり取りが何に似ているか思い出せたことに少しテンションが上がる。

どうやら、このぬめぬめは潤滑剤的なものらしい。
そして今、処女である私が痛みに大騒ぎしないように慣らしているようだ。

いきなり突っ込んでぎゃーぎゃー悲鳴を上げさせるのは好みじゃないのかもしれない。
そこは先王と違うらしい。残忍な性質は受け継がなかったのだろうか。

マイナス五万ポイントくらいだった好感度がほんの少しだけ浮上する。

どうかこのままノーマルなセックスで終わってくれますように。
処女はもはやどうでもいいが、やっぱり痛いのは嫌だ。
初心者なのだからその辺は忖度して欲しい。

そんで最後にこう言えばいいんでしょ? 「気持ち良かったですぅ」とか「最高でしたぁ」とか。
とりあえず男なんて適当に褒めときゃいいんだって養父の店にくるおっちゃんたちが言ってた。
セクハラまがいのことばっか言ってくる人たちだったけど、妙なところで役に立つものだ。

もうすっかり触診気分で、心には余裕があった。
事後のことに考えを巡らせていると、王様がようやく手を止め下履きをわずかにずり下ろした。

ここからが本番だ。

わずかに身構えた。

けれど彼は自分で数度擦ってから、あっさりと挿入を果たした。

ロクな前戯もなく、互いに服も脱がない状態で呆気に取られてしまう。
それから何度か機械的に動いた後すぐに果てたらしく、また深いため息を吐き出した。
特に呼吸が乱れるでもなく、汗一つかかず、煩わしそうな顔をしてイチモツを抜く。

「……大儀であった」

ぼそりと言って、己の身なりを整える。
そのまま私の股グラを布で拭って、裾を直すとさっさと退室してしまった。

いやパンツ穿かすの忘れてるわとか。
終わった後もっとなんかあんだろとか。

下手どころの騒ぎではなくて何も言えなかった。

ひとり部屋に残されてしばし呆然とする。
そうしてあとから怒りがふつふつと湧いてきた。

なんだあいつ。
張っ倒すぞ。
しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。 しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。 一体どういうことかと彼女は震える……

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

侯爵令嬢は限界です

まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」 何言ってんだこの馬鹿。 いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え… 「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」 はい無理でーす! 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。 ※物語の背景はふんわりです。 読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!

誰ですか、それ?

音爽(ネソウ)
恋愛
強欲でアホな従妹の話。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

処理中です...