蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

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蟻喜多利奈の、自称ありきたりな夏休み

2

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扉を開ける。
すると、彼女の予想通りの訪問者がそこに立っていた。


「おはよう、利奈。」
声だけでも涼しげな美しい女性のものが、彼女へ向けられた。
感覚的にもそこだけ一瞬ヒンヤリと心地良い爽やかな涼しさが通った気がした。

「あはは、こんにちは、じゃないかな?」
苦笑いし、利奈が返事をする。

「……利奈は今起きたばかりでしょう?だから、おはよう。」

「あはは、バレちゃったかー。」
その返しに、再度苦笑いする利奈。

庵銅路歩子。
利奈の友人で、クラスメイトだ。

「……ご飯食べてからにする?それとも今から宿題する?」

きっと利奈が言うことは分かっているのだろう。
冷蔵庫を勝手に開けている。

家主である利奈は、そんな行為を指摘することはない。
それに、それが当たり前と考えていたので不快にすら思っていなかったのだ。
二人の関係性が、そこに表れていた。

「うーん、なら軽く食べようかな。」

「分かった。……でも、少し無理でもちゃんと食べないと駄目だよ?……いや、まずは水分を取ろうね?」
まるで姉か母か。
路歩子がそんなことを言う。

彼女が来た理由。
それは、利奈が一人でいると、いつまでも布団から出ないままになってしまうのを阻止する為だ。
朝食を作るのは、謂わばついでだ。
極力規則正しい生活のまま、次の登校日を迎える為に来た。

「あはは、うん。」
全く否定出来ない正論だ。
いつの間にか用意されていた飲み物に口を付ける。

爽やかな喉越しのスポーツ飲料水。
それが身体の隅々まで染み渡る。
砂漠に降り注ぐ恵みの雨。


「何か栄養あるさっぱりしたもの作るから、待ってて。」

「ありがとう、ロボっち。」
素直に感謝を伝える。

「いつものこと。気にしないで。」

「ま、まぁ……それもそっか。いつもありがとうね。」

「うふふ。」
彼女の言葉を聞き、満足げに微笑む路歩子であった。

「……ロボっちと結婚出来る人は幸せなんだろうなー……。」
何気なく呟いた一人言。

キッチンで調理し始めている路歩子の耳に届いていなくとも何ら不思議ではない。
それほどの小ささだ。

「……っ!?ほ、本当に!?本当なの!?」
利奈に瞬時に近づく路歩子。
今までに見たことないほど大きな声とスピードだ。

「うわっとと!?」
驚き仰け反る利奈。
後少しでキスしそうだった。
それほど両者の距離は近かったのだ。
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