蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

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御亭御蔵高校による侵攻開始

2

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「そ、そんな人……。」
いない。
自分なぞを誘拐したところで得などないはずだ。

「いないって……確信をもって言える?」

「……。」

「言えないよね、だって……普段利奈ちゃんに擦り寄ってる奴らがそもそも危険な存在なんだもん……。」

「……。」
否定しなければいけない。
しかし、天菜のその言葉を利奈は否定出来なかった。

「ね?だから、私達と戻ろう?」

「……。」
天菜からの申し出に、どう答えるべきか。
利奈には全く分からない。

「利奈ちゃん!」
押しの呼び声。
ゆっくりと彼女の顔へと手を伸ばす天菜。

あと少し。
もう少しで触れることが出来る。

「い、嫌っ!」

パシン!
乾いた音。
それは、天菜が伸ばした手を、利奈が叩いた音であった。

「……え?」
明確な拒絶。
利奈からのそれに、言葉を失ってしまう天菜。

「……。」
二人を見つめる梨居菜。

「お、お願いっ!こんなこと止めて……?」
利奈の言葉。
それを皮切りに、車内の空気が変わった。

「……蟻喜多の者だから……。」

「……え?」

「……私の……愛する子供だから……甘やかしていたけど……。」

「な、何を……。」

利奈の言葉の途中で、遮られた。
バチン!
先ほどの利奈のものよりも大きな音。

利奈は床に伏していた。
それと同時に、彼女の頬に痛みが走る。

「もう良い。これからはもう、こちらのやり方で……本来のやり方で行かせてもらう……。」

「あ、天菜ちゃん……?」

「りい、一度平盆市へ戻ろう。」

「……よろしいのですか?」

「二度は言わない。」

「承知しました。」

窓からの景色は見えない。
しかし、天菜の言い方から、すでに平盆市から離れていることが分かった。
そして、今から戻ると言っている。

それだけ聞けば、利奈の願った通りだ。
しかし、二人のやりとりは、とてもそんな単純なものには思えない。

「……。」
聞きたい。
しかし、聞けない。


数分の沈黙。
揺れと外の音。
それだけしか感じることの出来ない空間。


「……さて……。」
未だ揺れる車内で、天菜は窓を開けた。

彼女が睨む先には、平盆高校。
しかし、まだ距離がある。

「ここは一度、景観を良くしてみてはどうです?」
クスクス……。

「あー……良いね、そうしよう。」
実に良いアイデアだ。
梨居菜の言葉にニヤリと笑みを浮かべる天菜。
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