蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

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蟻喜多利奈争奪戦に対する防衛準備(下)

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「うん……ありがとう。」

「え?り、利奈?」

「駄目!ロボっちはここで待ってて。」

「……。」
利奈をジッと見つめる路歩子。
無言の彼女は、カメラのレンズのような瞳が真っ直ぐに捉えていた。

整った顔。
そんな彼女が無言で見つめる。
それなりの圧と、かなりの魅力。
謂わば、美しさの暴力だ。

「そんな目で見ても駄目!」
一刀両断。
路歩子の美貌に正面から言い切れるのは極僅かだろう。
そんな一握りの中の一人が利奈であった。

「……チッ!」
思惑通りにならず、路歩子は舌打ちをした。

「あ、あはは……。」
二人のやり取りに、ただただ苦笑いするしか出来ない美佳絵。

「もう、行こう、みかえるちゃん。……ロボっちはここで待っててね?」
利奈はそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
そして、美佳絵とともに廊下へ出ようとする。

「う、うん……。」
美佳絵は、彼女に置いていかれないようにと急ぐ。

「……り、利奈……。」
自身の欲望とは真逆なことを利奈に言われた。
しかし、彼女の言葉は絶対的な命令のようなものになっていた。

「来ちゃ駄目!分かった?」

「……うん。」

路歩子をその場に縛らせたのだ。
さながら言葉の縄だ。

人間に危害を加えない限り、命令には従わなければならない。
所謂ロボット工学三原則であった。
しかし、それも路歩子自身の感情により、すぐに打ち壊されてしまった。

二人が廊下へ行き、姿が見えなくなった。
すると、すぐさま路歩子は彼女らの後を追うのであった。

足音を極力を立てないように細心の注意を払っていた。
さながらアサシンの面持ちだ。

廊下の先を歩く二人。
そんな姿を嫉妬の歯軋りに耐えながら後を着けている路歩子。

本来あそこは自分がいるはずであった。
それは、今回だけでない。
これまでも、これからもそのはずだった。
そんな前提が覆ってしまった。
そんな彼女の耳に、二人のやりとりが聞こえる。

「それで、話って何?」

「う、うん。その……今回の合同体育祭のことなんだけど……。」

「あ!うん!凄く楽しみだね!」
感情が前のめりになってしまった。
そのせいで、彼女の言葉に被せてしまう利奈。

「え?あ……そ、そうだね。」
落ち込んでいるように見えた美佳絵の表情が、さらに曇っていく。

「……み、みかえるちゃん?」
流石の利奈でも彼女の異変には気づいたようだ。
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