蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

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蟻喜多利奈争奪戦に対する防衛準備(下)

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時は進み、一ヶ月が経過した。
平盆高校に、今までにないようなそわそわとした空気が蔓延していた。

それは、日に日に大きくなっていく傾向にあった。
理由は単純だ。
開校して以来の出来事が、この先に待っているからだ。

皆が浮き足だっている。
それは、利奈も例外ではなかった。

彼女は登校し、自身の席に座ると、鼻歌交じりに足をパタパタと動かしていた。
誰が見ても彼女の機嫌が良いのは明白であった。

路歩子がこの状況を、静観しているわけがない。
すぐさに彼女に駆け寄る。
そして、未だに登校して来ない彼女の隣のクラスメイトの席に座る。

「利奈、楽しそうだね。」

「うん。」

「……。」
知らない。
今の彼女が楽しそうな理由が分からない。

今まで、そんなことはなかった。
利奈のことならば、何でも分かった。
確かに分かっていたのだ。

そのはずであった。
しかし、今はそうではない。
彼女の考えがまるで分からない。
それが、路歩子には不安で仕方がなかった。


「……ロボっち?」
妙な間が空いたことで、利奈が再度口を開く。
心配そうに彼女の顔を覗き込んでいる。

利奈の可愛らしい顔が近づく。
その瞳には、整った美しさを持つ路歩子の顔が写り込んでいた。

「……え?あ、うん。えっと……何でそんなに楽しそうなのか、教えて?」

「えー?珍しいね、ロボっちが分からないなんて……。」

「そう……だね……。」
チクリ。
本来、痛むはずはない。
それなのに、路歩子の胸はなぜか痛んだ。

「御亭御蔵高校って知ってる?」

知っているに決まっている。
今年、合同で体育祭を行う高校の名前だ。

「もちろん知ってる。」

「そこね、実は私の親戚のお姉さんが通ってるとこなんだー。」

「……。」
初耳だ。
そのせいで、言語による反応が遅れてしまった。

「ロボっち?」
再度の呼びかけ。

「だ、大丈夫……大丈夫だから続けて?」
今は少しでも彼女の話を聞かなければならない。
少量でも情報を更新する必要がある。
それが、路歩子にとっての最優先事項であった。

「う、うん。それで、また会えるなーって思ったら嬉しくって……。」

「……そ、それって……。」
恐る恐る。
震える声を発する路歩子。

「うん?」

「わ、私といるよりも……?」
一番聞きたいことだ。
しかし、それでいて、最も聞きたくないものでもあった。
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