蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

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宣戦布告

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まるで今生の別れのような大袈裟な雰囲気が彼女らを包む。
それが、路歩子の逆鱗に触れてしまった。

「あああああ!?利奈!?利奈ー!?りな!リナ!?私の利奈に触れるな!」
ドカーン!
路歩子の背後に、目に見えない噴火が見えた。

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

再始動。
奇妙奇天烈。
人間ならあり得ない動き。
関節を無理矢理に動かしながら二人の間に割って入った。

「流れで触りたかったけど触ってないっ!」
叫びながら彼女の言葉を訂正する流奈。
そして、勢いを受け流す。

さながらアメリカのアクション映画のラスト付近かのように派手に吹き飛ぶ利奈の私物。
しかし、そんなことを気にしていれるほど、逃げ出した利奈には余裕などなかった。

「ぐ、グキギ……ガガガ……。」

「このっ!馬鹿力のポンコツロボット……!」

ギギギ……。
プロレスのロックアップ。


「……最近ガス抜きしてなかったし……そろそろかなって思ってたけど……。」
そんなことを呟き、元来た道を振り返る。

少し離れた位置には自身の住むマンション。
ここからでも彼女らの騒音は届く。

生命の危機に瀕しているわけではない。
それなのに、彼女の脳裏には走馬灯が過る。

類似した無数の記憶。
路歩子の暴走は、今日が初めてではなかったのだ。

利奈が路歩子以外の者達と談笑していた時。
利奈が風邪で休んだ日。
その他もろもろ。

嫉妬。
路歩子内の器を表面張力でギリギリまで注がれていたそれが、彼女にかかる水分で溢れ出てしまう。

暴走。
普段の路歩子は一部を除き、人前では大人しい。
そんな彼女が暴れ出した。
利奈は、その都度為す術なく押し倒されていた。
その為、今回のように誰かしらが間に入り、彼女を止めていたのだ。


「……二人とも、怪我してなければ良いけどな……。」
再度の呟き。

それは、まさにその時であった。
爆発。
それは、利奈の部屋のベランダから聞こえたものであった。

吹き飛んで来た物があった。
窓だ。
ベランダの窓が飛んで来たのだ。

ぶつかる。
確実に当たる。
このままでは利奈にぶつかり、彼女は怪我をしてしまうだろう。

逃げなければならない。
しかし、足がすくんで動けない。

目を瞑る。
そして、両腕を前に構え、ガード姿勢をとる。
しかし、衝撃が来ることはなかった。


数秒が経過した。
目を開く。
目の前には、何人もの後ろ姿。
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