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蛍蝉と有鞠一族
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きっと、本来ならば、暇つぶしとして一過性の話題となるのがやっとだろう。
しかし、そうはならなかった。
それはなぜなのか。
有鞠天菜。
彼女は村神とよばれ、村の人々から慕われている。
そして、そう呼ばれるに至る逸話が存在していた。
村を襲う自然災害。
そんな危機を予知し、未然に防ぐ方法を村人達へ伝えていた。
最初は皆、信じなかった。
しかし、度重なる彼女の予知は全て的中し、その超自然的な力を信じるものは徐々に増えていった。
そして、いつしか皆が信じるようになった。
最終的に、彼女は村の守り神、村神と呼ばれるようになったのだ。
今年。
そして、今日。
この村中で蛍蝉が一斉に飛び立つ。
そう広めたのが、この場にいる天菜であったのだ。
その中でもここは、皆が知らない天菜達だけの秘密の場所なのだった。
故意に皆には伝えなかったのだ。
「……凄い綺麗。」
ボソリ。
利奈の思考が彼女の口からノンフィルターで漏れ出る。
綺麗。
それは、紛れもない事実であった。
様々な表現方法がある。
しかし、どれも適切ではない。
具体的ではなく、抽象的なものとなるが、それが的確なものであった。
「……利奈ちゃん?」
「うん?」
「これを……この景色、見れて良かった?」
「うん!最高だよ!」
それは、嘘偽りのない利奈の本心だ。
「そっか……良かった……。」
「えぇ、良かったです。」
利奈の返答に満足したのだろう。
天菜と梨居菜は微笑んだ。
「……さて、いくら夏といってもこのままじゃ風邪になっちゃうから戻ろっか。」
どれくらい時間が経ったのだろう。
そんな時、天菜が口を開いた。
「うん、そうだね。」
「はい、参りましょう。」
二人も彼女に賛同し、歩き出した。
元来た道を歩き、帰って行く。
行きに一度通ったということもあり、ずんずんと進む利奈。
そして、そんな彼女の後に着いて行く二人。
前を歩く彼女の後ろ姿に見惚れる天菜が口を開く。
「りい?」
「はい。」
「……やっぱり、私……利奈のこと……取り戻したい……。」
「はい。」
やりとりをしていくうちに利奈との距離が空いていく。
それほど会話に集中してしまっていたのだ。
「協力してほしい……。」
「はい。」
「……人を集めて。」
両者の間の空気が変わる。
張り詰めた緊張感。
背筋が自然と伸びるようなひんやりとする。
しかし、そうはならなかった。
それはなぜなのか。
有鞠天菜。
彼女は村神とよばれ、村の人々から慕われている。
そして、そう呼ばれるに至る逸話が存在していた。
村を襲う自然災害。
そんな危機を予知し、未然に防ぐ方法を村人達へ伝えていた。
最初は皆、信じなかった。
しかし、度重なる彼女の予知は全て的中し、その超自然的な力を信じるものは徐々に増えていった。
そして、いつしか皆が信じるようになった。
最終的に、彼女は村の守り神、村神と呼ばれるようになったのだ。
今年。
そして、今日。
この村中で蛍蝉が一斉に飛び立つ。
そう広めたのが、この場にいる天菜であったのだ。
その中でもここは、皆が知らない天菜達だけの秘密の場所なのだった。
故意に皆には伝えなかったのだ。
「……凄い綺麗。」
ボソリ。
利奈の思考が彼女の口からノンフィルターで漏れ出る。
綺麗。
それは、紛れもない事実であった。
様々な表現方法がある。
しかし、どれも適切ではない。
具体的ではなく、抽象的なものとなるが、それが的確なものであった。
「……利奈ちゃん?」
「うん?」
「これを……この景色、見れて良かった?」
「うん!最高だよ!」
それは、嘘偽りのない利奈の本心だ。
「そっか……良かった……。」
「えぇ、良かったです。」
利奈の返答に満足したのだろう。
天菜と梨居菜は微笑んだ。
「……さて、いくら夏といってもこのままじゃ風邪になっちゃうから戻ろっか。」
どれくらい時間が経ったのだろう。
そんな時、天菜が口を開いた。
「うん、そうだね。」
「はい、参りましょう。」
二人も彼女に賛同し、歩き出した。
元来た道を歩き、帰って行く。
行きに一度通ったということもあり、ずんずんと進む利奈。
そして、そんな彼女の後に着いて行く二人。
前を歩く彼女の後ろ姿に見惚れる天菜が口を開く。
「りい?」
「はい。」
「……やっぱり、私……利奈のこと……取り戻したい……。」
「はい。」
やりとりをしていくうちに利奈との距離が空いていく。
それほど会話に集中してしまっていたのだ。
「協力してほしい……。」
「はい。」
「……人を集めて。」
両者の間の空気が変わる。
張り詰めた緊張感。
背筋が自然と伸びるようなひんやりとする。
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