11 / 31
蛍蝉と有鞠一族
2
しおりを挟む
「利奈ちゃん、そんなに楽しみだったの?」
「うん!だって、その為に来たんだからさ!」
ニコニコ。
笑顔で天菜の質問に答える利奈。
「えー?そこは嘘でも私に会いに来たって言ってくれないとー……傷つくなぁー。」
決して本気で言っているわけではない。
ヘラヘラと笑いながら天菜が口にした。
「……え?……あ、あはは、もちろんそれもだよ!もう、意地悪しないでよ。」
利奈は、天菜の返しに今度は誤魔化すように笑って見せた。
「……。」
好ましいやりとりだ。
二人の会話に、口角がやや上がっている梨居菜であった。
「そういえば、私と花府井先輩って名前似てますよね。」
「そうでしょうか?」
「そうですよー、お揃いですよー。」
ニコニコ。
まだ笑顔の利奈。
普段なら特段気にするでもないようなことを口にした。
利奈と梨居菜。
似ていると言えば似ていると言えるだろう。
しかし、やはりこの場で言わなくとも良いようなことだ。
それでも口にしたのは、いつもよりもテンションが高くなったからだろう。
「……。」
天菜は彼女らのやりとりに何も言わない。
しかし、徐々に不機嫌になるのが梨居菜には分かった。
「……ふふふ、そうですね。……しかし、それを言うなら有鞠さんも含めて私達の名前は皆、なで終わる仲間ですよ。」
フォローを入れる梨居菜。
「あー、確かに。なら私達は仲良しってことだね。」
「……利奈ちゃん……!」
天菜の顔から嬉しさが零れ落ちる。
先ほどとは真逆に喜びが見える。
「……さて、そろそろ着きますよ。」
鬱蒼とした森の道を歩いていくと、そこへたどり着いた。
周囲の木々とは比べ物にならないほどの大樹。
そして、その周辺には仄かに光る小さなもの達。
千年に一度、成虫になると伝えられている虫。
蛍蝉だ。
名前の通り、昼間は騒々しく鳴り続け、月夜の照らす時となれば、こうして綺麗に光るこの場所にのみ生息するものだ。
ここにしかいない存在であり、知る者が極めて少ない。
その姿を見れば、どんな願いも叶う。
古くから残る、数少ない村の文献の中に、そんなことが記されていた。
利奈が受け取った葉書。
それには、天菜が送ったものであった。
その内容は、今年はこの蛍蝉が一斉に土から這い出て成虫となり、舞うだろうとあうものだ。
千年に一度しか現れない。
そんなまゆつば物、普通なら皆信じないだろう。
「うん!だって、その為に来たんだからさ!」
ニコニコ。
笑顔で天菜の質問に答える利奈。
「えー?そこは嘘でも私に会いに来たって言ってくれないとー……傷つくなぁー。」
決して本気で言っているわけではない。
ヘラヘラと笑いながら天菜が口にした。
「……え?……あ、あはは、もちろんそれもだよ!もう、意地悪しないでよ。」
利奈は、天菜の返しに今度は誤魔化すように笑って見せた。
「……。」
好ましいやりとりだ。
二人の会話に、口角がやや上がっている梨居菜であった。
「そういえば、私と花府井先輩って名前似てますよね。」
「そうでしょうか?」
「そうですよー、お揃いですよー。」
ニコニコ。
まだ笑顔の利奈。
普段なら特段気にするでもないようなことを口にした。
利奈と梨居菜。
似ていると言えば似ていると言えるだろう。
しかし、やはりこの場で言わなくとも良いようなことだ。
それでも口にしたのは、いつもよりもテンションが高くなったからだろう。
「……。」
天菜は彼女らのやりとりに何も言わない。
しかし、徐々に不機嫌になるのが梨居菜には分かった。
「……ふふふ、そうですね。……しかし、それを言うなら有鞠さんも含めて私達の名前は皆、なで終わる仲間ですよ。」
フォローを入れる梨居菜。
「あー、確かに。なら私達は仲良しってことだね。」
「……利奈ちゃん……!」
天菜の顔から嬉しさが零れ落ちる。
先ほどとは真逆に喜びが見える。
「……さて、そろそろ着きますよ。」
鬱蒼とした森の道を歩いていくと、そこへたどり着いた。
周囲の木々とは比べ物にならないほどの大樹。
そして、その周辺には仄かに光る小さなもの達。
千年に一度、成虫になると伝えられている虫。
蛍蝉だ。
名前の通り、昼間は騒々しく鳴り続け、月夜の照らす時となれば、こうして綺麗に光るこの場所にのみ生息するものだ。
ここにしかいない存在であり、知る者が極めて少ない。
その姿を見れば、どんな願いも叶う。
古くから残る、数少ない村の文献の中に、そんなことが記されていた。
利奈が受け取った葉書。
それには、天菜が送ったものであった。
その内容は、今年はこの蛍蝉が一斉に土から這い出て成虫となり、舞うだろうとあうものだ。
千年に一度しか現れない。
そんなまゆつば物、普通なら皆信じないだろう。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
蟻喜多利奈のありきたりな日常
あさまる
ライト文芸
※予約投稿にて最終話まで投稿済です。
※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。
苦手な方はご遠慮下さい。
この物語は、自称平凡な女子高生蟻喜多利奈の日常の風景を切り取ったものです。
※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。
誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【随時更新】140字創作百合/CPなしツイノベログ
りつ
ライト文芸
ツイッターなどで書いた140字(前後)の創作百合/CPのないツイノベのログです。1本ずつに繋がりはないのでどこからでもお読み頂けます。ハッピーなものからビターなもの、SFチックなものまでいろいろ。じわじわ増えます。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
初愛シュークリーム
吉沢 月見
ライト文芸
WEBデザイナーの利紗子とパティシエールの郁実は女同士で付き合っている。二人は田舎に移住し、郁実はシュークリーム店をオープンさせる。付き合っていることを周囲に話したりはしないが、互いを大事に想っていることには変わりない。同棲を開始し、ますます相手を好きになったり、自分を不甲斐ないと感じたり。それでもお互いが大事な二人の物語。
第6回ライト文芸大賞奨励賞いただきました。ありがとうございます
菊の華
八馬ドラス
恋愛
ガラ悪い印象だけど少し照れ屋な女の子赤崎菊と、周りからモテモテで友達の多い女の子星野麗華が友情の少し先の関係に気づき始める日常系百合作品。幼馴染として近くにいるからこそ気づかないこの思いを彼女たちはどう呼ぶのか。「これは友情とは違う別の”何か”」ーーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる