あなたにかざすてのひらを

あさまる

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20ー7

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「皆、かすみが欲しいの。分かるでしょ?」
冷たい美咲の声。
今までかすみが聞いたことのないものだ。

「そ、そんな……。」

「お願い……します……かすみさん……。」

「エルちゃん……。」

「かすみさんが私の家に泊まりに来てくれて……本当に嬉しかったんです……。でも、それをいつか失ってしまうのが……恐ろしい……。」

「……かすみちゃん……お願い……私達を……助けて……!」

「ま、待ってよ……待ってよ、皆!」

「かすみ、一つ教えてあげる。」

「美咲ちゃん?」

「かすみね、このままだと来年にはしんじゃうんだよ?」

「え?」
何を言っている?
美咲の言葉を理解出来ないかすみ。

「かすみの病気、もう取り返しがつかないところまで進行しちゃってるの。」

「わ、私の病気……?進行?な、なに言って……。」

吸血鬼である美咲達。
彼女らには人とは違うものが見えていた。
それもその中の一つであったのだろう。

かすみを蝕む病。
詳細は伏せられていたが、今の医学では治療不可能だと言う。

彼女が生き残る為にはどうすべきか。
それこそが吸血鬼となることであった。

「私、この先もかすみさんと一緒に色々なことをしたいです。」

「……私もかすみちゃんにしんでほしくない……。」

「し、しぬ……私が……。」
二人の言葉がズシンとのしかかる。
より現実味を感じるかすみ。

「ねぇ、お願い、かすみ……。」
かすみを見る美咲。
彼女の瞳は今まで見たことのない妖しげな光を放っていた。

鋭い輝き。
そこに囚われるかすみは怯えていた。

「かすみ?」

「私……私は……。」
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