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「あ、あぁ……おかえり、かすみ……。」
笑顔で返す美咲。
しかし、それは少し無理しているのがすぐに分かった。

「ど、どうしたの美咲ちゃん?具合悪いの!?」
彼女の様子がおかしい。
さすがにその異変に気づいたかすみが美咲へ聞く。

「な、何でもないよ……。」

「何でもないわけないでしょ!教えてよ!」

「大丈夫だって……大丈夫だから……だ、大丈夫だけど……お願い、かすみ……ちょっとだけで良いから……。」
ゆっくりとかすみに近寄る美咲。
フラフラと今にも倒れそうだ。

「み、美咲ちゃん?」

「……。」
言葉は出さない。
決して言わない。
しかし、身体が震えている。
何かに怯えているようだ。

きっと彼女は何も言わないだろう。
近寄った美咲を優しく抱き締めるかすみ。

ビクッ。
一瞬反応するが、それを受け入れる美咲であった。


どれくらい経過しただろう。
彼女の震えはなくなっていた。

時計の秒針の音。
そして、互いの心臓音。
それらだけしか聞こえない二人きりの空間。
先に口を開いたのは美咲であった。

「ごめんね、情けないところ見せちゃったね……。」

「そんなことないよ、大丈夫だよ。」
なるべく落ち着いてもらおう。
そんな気持ちで少しゆっくり、そして暖かみのある声でかすみが言った。

彼女がこうなってしまった原因。
確かにそれは気になる。
しかし、今は落ち着きを取り戻したことで良しとしよう。
かすみはそう思っていた。

「やっぱり……。」

「うん?」

「やっぱり聞いてほしい……。良い?」

「もちろんだよ。教えて?」

「今、かすみは自分の年齢分かるよね?」

「え?うん……。」
それがどうしたのだろう?

「本題に入る前に……今からもしかしたら嫌な話になるかもしれないけど大丈夫……?」

ここまで言い渋るのも珍しい。
余程のことなのだろう。

「大丈夫だよ、大丈夫。」

「ありがとう……。かすみ達人間は……精々百年ほど……その……あと八十年から九十年ほど……だよね……。」
なるべく直接的な表現を避けようとしている。
しかし、それはかすみにもよく分かった。

「うん、そうだね……。多分、長くてそれくらいだね……。」

「今、私幸せなんだ……。かすみがいて、かすみが私を見てくれている。」

「……。」

「でも、その幸せな時間も……あとたった百年未満で……。」
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