あなたにかざすてのひらを

あさまる

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19ー3

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「はい!是非そうして下さい!」


「……。」

「……。」

無言になる二人。
耳鳴りがするほどの静寂に包まれた。

「あっ、えっと……。」

「はい、どうしました?」

「おもてなしって……何するの?」
かすみの素朴な疑問だ。

「あっ……。」

「……?」
何かを思い出したのだろうか?
エルの次の言葉を待つかすみ。

「具体的にこと考えてませんでした……。」
エルが苦笑いで言う。

「ふふふ、何それー。」
つい笑ってしまうかすみ。

「ど、どうしましょう……。」
あわあわ。
漫画のような慌て方をするエル。

「エルちゃんが思うもてなし方で良いんじゃないかな?私、気持ちがこもったものならどんなことでも嬉しいよ?」
にっこり。
優しい笑みを浮かべるかすみ。
それは彼女の本心であった。

「っ!?」
今まで何度も彼女の笑みを見た。
しかし、今度のものは、そのどれとも違った。

胸が締め付けられるような感覚に襲われるエル。
そんなものでも、不思議と不快なものではない。
むしろ、好ましいものだ。
そして、その正体が何か分からないものの、何度も味わいたいと思うようなものであった。


「で、では……ま、参りますっ……!」
ふんす!
鼻息荒く気合いの入るエル。

「お、お手柔らかに……。」

「ま、まずは……。」

「まずは?」

「か、肩を揉みます。」

「へ?」
えらく急なものだ。
エルのその予想外の言葉に、素頓狂な声を出してしまうかすみ。

「駄目でしょうか?」
その反応に自信をなくすエル。

「駄目ってことはないけど……ふふふ。」

「ひ、日頃の……その……か、感謝の気持ちを……込めて……ですね……その……。」
なぜ笑われてしまったのか分からないエル。
恥ずかしさに顔が熱くなり、尻窄みになってしまった。

「そういうことなら……お願いしまーす。」
そんな彼女の異変など気にしていないかすみが後ろを向く。

無防備な姿。
エルを信用しているからこそ、背後を見せられるのだ。

ゆかりや美咲を信頼していないというわけではない。
しかし、きっと彼女らに対しては、きっとこうはならなかっただろう。

「し、失礼します。」
声が震えている。
そして、かすみへと伸びていく腕も微かに震えている。

緊張しているのだろう。
ガラス細工にでも触れるかのように慎重に彼女の背中に指を当てる。
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