上 下
134 / 151
19

19ー1

しおりを挟む
「いやぁ、相変わらず凄いなぁ……。ザ・豪邸!って感じだなぁ……。つくづく私とは違う世界の人なんだよなぁ……。何したらこんな家に住めるようになるんだろ?手から無限に石油でも出てるのかな?」
冗談半分、本気半分。
そんな心の声が、ノンフィルターで漏れ出る。
それは、かすみの口から出たものであった。

夏休みもいよいよ終盤となった。
しかし、相変わらず空高く雲が伸びている。
そして蝉の鳴き声も、未だに健在だ。

それは、そんなある日のことである。
かすみはエルの家に来ていた。

ゆかりと美咲。
なり行きとはいえ、彼女らとお泊まり会をしたかすみ。

この期間中、何度か遊びに行ったことならある。
その中には二人きりだったこともある。
かと言って、ゆかりと美咲とは二人きりで出かけたことがないわけではない。

つまり、エルとだけ泊まりで何かをしたということがないのだ。
そんなことは、なんだか仲間外れなような気がしてしまう。

それでは彼女があまりにも可哀想だ。
そう思い、彼女へ連絡をした。
すると、かすみの家ではなく、エル自身の家でそれをしないかと提案されたのだ。


「お待ちしてました、かすみさん!」
広い玄関ホールで彼女を出迎えた少女。
それは、血のように赤黒いドレスに身を包んだエルであった。
良く見ると、普段とは髪型も化粧も違う。

今日は彼女にとっての勝負の日なのだろう。

本来ならそこにいるはずの何人もの使用人の姿はどこにもいない。
そこでするのは、彼女の声と、駆け寄る少し早い足音のみであった。

「ごめんね、待たせちゃったね。」

「いえ、私が楽しみで少し早く準備してしまっただけですので気にしないで下さい。さ、こちらへどうぞ!」
ニコニコ。
心底嬉しそうだ。


「そういえば、今日はエルちゃん一人だけなの?メイドさん、一人も見てないんだけど……。」
長い、長い廊下。
隣り合って歩くかすみとエル。

「はい、今日は私達二人だけです。皆は休みにしてもらいました。……そ、その……。」

「うん?」

「ふ、二人きりになりたくて……その……迷惑……でしたか?」

「っ!?」
ドキッ!
かすみの心臓が跳ね上がる。

かすみよりも年上で、身長も高いエル。
普段は大人びた印象を持たれる彼女だ。
しかし、そんな彼女が今のかすみには堪らなく愛おしい存在となってしまうのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

タイツによる絶対領域

御厨カイト
恋愛
お昼前の授業も終わり昼休みになると、いつも私は彼女である澪と一緒に屋上でのんびり話をしながら過ごしていた。今日も私の膝の間に座り、嬉しそうに体を左右に揺らす澪とまったりと雑談をしていたのだが、その話の流れで澪の足を触る事に。しかし、そこで澪は足が弱いことが発覚し……

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...