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「……もう一回……もう一回言って。」
かすみの顔を覗き込むように自身の顔を近づけるゆかり。

座っているかすみに、立っているゆかりが上から覗き込んでいるのだ。
小柄な彼女とはいえ、かすみは圧を感じてしまう。

「っ!?え?いつの間に……え?」

「……そんなこと良いから。もう一回言って……!」

「え、えっと……可愛い……よ?」

「……疑問系は止めて。ちゃんと言い切って。……さ、もう一回。」

「う、うん……ゆかりちゃん、可愛いよ……。」
圧に押されて再度言う。

「……っ!?こ、今度はもっと……いや、もう少し感情込めて。」

感情を込めてくれ。
要求が増えている。

「え、えっと……か、可愛い……よ。」

「……。」
ストン。
俯き、その場に座り込んでしまうゆかり。

「だ、大丈夫……!?」

「……だ、大丈夫……ちょっと腰が抜けただけ……気にしないで……。」
今度はかすみを見上げる形となったゆかり。
そこには先ほどまでの威圧感はなかった。

頬は染まり、目はトロンと蕩け、うっすらと涙が浮かんでいる。
しかし、決して辛いというわけではなさそうだ。

「え、えっと……体調悪いなら……その……そ、そうだ!その着物の帯、少し緩めない?多分息しやすくなると思うんだけど……。」

「……っ!?か、かすみちゃん、大胆……!……で、でも……かすみちゃんなら……良いよ?」

「え?う、うん……。」
普段とは違う雰囲気のゆかり。
明らかに様子がおかしい。
しかし、本人から許可をもらったのだ。
少しでも楽になるようにしよう。

着物など着たことのないかすみ。
覚束無い動きで帯を触る。
時折ゆかりから妖艶な声が漏れるが、集中している彼女の耳には届かなかった。


「ご、ごめん、手間取っちゃって……。どうかな?少しは楽になった?」
なんとか帯を緩めることが出来たかすみ。
ゆかりへそう言う。

「……。」

「ゆ、ゆかりちゃん!?」

ゆかりは座ったまま気絶していた。


「……とんだ見苦しいものを見せてしまった……恥ずかしい……。」

「あはは、大丈夫だよ。それより、もう大丈夫なの?」

数分後。
意識を取り戻したゆかりは酷く落ち込んでいた。
その時には、体調もすっかり良くなったようで、安堵するかすみであった。

「……うん、大丈夫。心配してくれてありがとう。」
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