あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「うん、実は今日聞きたいことがあって呼んだんだ……。」

「え?あっ、そう……なんですか……。」
期待していたようなものではなかった。
落胆を隠せないエル。

「エルちゃん?大丈夫?」

「え、えぇ。大丈夫です。私にお構いなく、続けて下さい。」

「え?そう?」

「はい、お願いします。」
なんだ。
愛の告白ではなかったのか。
しかし、聞きたいこととは一体なんなのだろうか?

「良ければ……やっぱりエルちゃんの過去の話、聞かせてほしいほしいんだ……。」

「っ!?」

「その、やっぱり知りたいんだ……。」

「そ、それは……。」

「……?」

「好奇心で、ですか……?」

「それは……。」
言葉が詰まるかすみ。
好奇心で聞いているのか?
そう聞かれたら、そうだと言える。
しかし、それだけではない。

それならば、なんなのだろうか?
かすみ自身分からない。

「すみません、やはり好奇心だけ、ということでしたら……その……やはりかすみさんのお願いとは言え、話したくは……。」

「違っ、違うよ!それだけじゃない!」

「……?」

「た、確かに好奇心もあるけど……それだけじゃないよ……。」

「それだけじゃない……ですか?」
それではどういうことなのだろう?
かすみの次の言葉を待つ。

「そう、えっと……上手く言えないけど……その……。」
しどろもどろ。
どのように表現すれば良いか分からない。

「ゆっくりで構いません。かすみさんの言葉で聞きたいです。大丈夫、いつまでも待ちます。」

「ありがとう……。」


無音。
待つと言った通り、エルはかすみの次の言葉を待っていた。

「よしっ、言うね。」

「っ!はい、お願いします。」

「ごめん、結局これは好奇心なのかもしれない……。」

「っ!?」
目を見開き、驚きの表情を浮かべるエル。

「エルちゃんのこと、もっと知りたいって思って……エルちゃんは私の色々なこと知ってるけど、私は何も知らなくて……それが不甲斐ないというか……情けないというか……。その……だから、つまり……。」

「……。」
無言で微笑む。
そして、かすみの頬を撫でるエル。

「エ、エルちゃん?」

「大丈夫です。しっかりと、届きました。」

「え?」

「確かに、言語化は出来てませんでした。しかし、かすみさんの気持ちはしっかりと私に届きました。だから大丈夫です。」
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