あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「……。」
つい無言になって、縮こまってしまうかすみ。
首元のくすぐったさに、小さく震えてしまっている。

「お、おぉ、えろぉ……。」

「……なんかえっち。」

ごくり。
生唾を飲むエルとゆかり。
そして、彼女らがぼそりと呟いたものは、幸いにもかすみの耳には届かなかった。

「え、えっと……私はこの後どうすれば……。」

「しょ、しょうね……えっと……えへへ……。」
呂律が上手く回っていない美咲。
まるで飲酒し、酔ったかのようなものだ。

これは大丈夫なのか?
彼女が心配になるかすみ。
「みさちゃん、大丈夫?」

「ら、らいひょーぶ……。」
大丈夫と言いたいのだろう。
しかし、あまりにも酷い。
酷過ぎる。
これはいよいよもって駄目だろう。

「……。」
ベッドで横になってもらうしかない。
最悪救急車を呼ばなければならないかもしれない。
そう思い、かすみが彼女の膝の上から移動しようとする。


「っ!?ら、らめ……かしゅみ……行かないでぇ……。」
ガッチリと後ろから両手を使い、かすみをホールドする。

「でもみさちゃん様子変だよ。ベッド行こう?横になった方が良いよ?」

きっと、それは悪手だったのだろう。
それで美咲は限界になってしまった。
「ベッド!?かすみと二人で……ぶはぁっ!?」

「ひっ!?」
美咲の姿を見て悲鳴を上げるかすみ。

無理もない。
美咲は、かすみの言葉を聞くや否や、勢い良く鼻血を噴出し、そのまま倒れてしまったのだ。
幸いなことに、ホールドしていた手も外された為、彼女も倒れるという状況は回避出来た。

「あ、あらあら……。」

「……意外とピュアだった。」

彼女の反応は予想外だった。
そう言いたげな二人。

「ど、どうしよう!?み、みさちゃん、しっかりして!」
気絶している彼女に必死に呼び掛けるかすみ。

このような状態の時、身体や頭を揺すってはいけない。
以前どこかで習った気がする。
そのせいで、彼女に触れることが出来ない。

「まぁ、放っておいて良いと思いますよ……。」
ため息をつくエル。

「で、でも……。」

「……大丈夫だよ、かすみちゃん。それの顔見てみてよ。」
美咲をそれ呼ばわりのゆかり。

彼女の言われた通り、美咲を見る。
あぁ、これは大丈夫そうだ。
見た目は酷い有り様だ。
しかし、穏やかな吐息を出しながら幸せそうな表情を浮かべている。
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