あなたにかざすてのひらを

あさまる

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選ばれるのを待っている彼女らは、緊張している。
駄目だ。
真剣に決めなければならない。

「よし、決まったよ。それなら……。」


この状況になった原因。
彼女がまた自身の前に現れたから、二人との距離が変わった。
その変化は、決して良かったことだけではない。
しかし、結果的に良い方に転がった。
それなら、それなりの感謝をしなければいけないだろう。


「み、みさちゃん……がその……じょ、女王様……で……お願い……。」
彼女が最初の女王様に選んだのは、美咲であった。

「っ!?」
飛び上がるように立ち上がる美咲。
胸元でガッツポーズをしている。
これから起きることを想像しているのだろう。

その喜びのせいだろう。
彼女のファンには到底見せられないような姿になってしまっている。
純粋なものではなく、邪悪な笑みを浮かべているのだ。

「あ、あぁ……ああぁ……。」

「……そんな……そんなことって……。」

こちらはこちらで落胆している。
この世の終わりかのように、膝から崩れ落ちるエル。
そして、ゆかりに至っては座っている気力もないのだろうか、倒れてしまっている。

「よ、よし……。なら女王様のめ、命令……いくよ……。」
はぁはぁ……。
運動など一切していないのに、息が上がり、彼女の肩が上下に大きく動いている。
なんともひどい興奮の仕方だ。

「う、うん……。」
どうしたのだろう?
こんな様子の彼女も珍しい。
その姿に、少し引いてしまうかすみ。

「こ、こっち、こっち来て!ほら、早く!時間は有限だから!」
バンバンバンバン!
座っている自身の太ももを高速で叩く美咲。

「うん?」
言われた通り、美咲の元へ向かうかすみ。
しかし、どうすれば良いのか分からない。

「ほら、立ってないで座って、座って!」
バンバンバンバン!
未だに自身の太ももを叩いている美咲。

「す、座るって……。」
どこに?
しかし、もう一ヶ所しかないだろう。

「……。」
キラキラ……。
期待するようにかすみを見る美咲。

「うぅ……。」
なるほど。
つまり、こういうことだろうか?
美咲の太ももの上に座るかすみ。

「っ!!」
ビクッ!

「うわぉっ!?」
美咲に体重をかけた途端、彼女の身体が大きく跳ねた。
それに驚き、つい間抜けな声を出してしまうかすみ。

「……。」
未だに息が荒い美咲。
かすみの首元に熱い吐息がかかる。
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