上 下
114 / 151
16

16ー3

しおりを挟む
人間の汚さと呼ぶべきか。
それとも、本質と言うべきか。
その光景を間近で見ていた彼女ら。
何度も繰り広げられるそれらに、辟易していた。
そして、その結果、彼らとの交流を極力避けていった。

人間に心を許してはいけない。
友情や、血縁関係のあるものでも意図も簡単に争いを引き起こす。
そんな生き物だ。
それが、彼女らの導き出した結論であった。


「……と、まぁざっくりだけど私達の過去はこんな感じ……。それぞれ住んでいたところが違うから、色々あったんだけどそこは今回は省略させてもらった。」

「うん、ありがとう。」

人に歴史ありとは良く言ったものだ。
彼女らのことを全く知らなかった。
表面上の、極々一部しか理解していなかった。
かすみはそれを痛感した。

「少し、休憩しますか?色々とあって疲れたでしょう?」
かすみへ向けられたエルの言葉。

「大丈夫だよ、それよりもっと聞きたい。皆のこと、もっと知りたいよ。」
そうだ。
せっかく話してくれると言っているのだ。
早く聞きたい。
もっと知りたい。

「あぁ、かすみ……私のかすみ……。私に興味を持ってくれて凄く嬉しいけど、そいつの言うこと聞いた方が良いと思う。」
頬を染め、その幸せを噛み締めるかのように目を瞑る美咲。
そんな彼女がかすみへ言う。

「え?じゃ、じゃあそうしよっかな……。」

「……うん、それが良い。」

そんな流れで休憩をとることとなった。
しかし、そこからが彼女らの本番であった。

なぜこんな暗い過去の話をしだしたのか。
もちろん、かすみに知ってもらいたいという気持ちもあった。
しかし、彼女らにはそれ以上の打算があった。

「……時に、かすみちゃん?」
切り出したのは、ゆかりであった。

「うん?」

「……ただのんびりと休憩してるのも悪くないけど、暇じゃない?」

来た。
ついに来た。
エルと美咲。
二人が唾を飲む。

頼む、乗ってくれ。
そう願っていた。
期待と不安。
ドキドキと、ゆかりを含めた三人の心臓が高鳴る。

「うーん、まぁ、暇……かなぁ?」

「……よしっ!ありがとう、かすみちゃん。」

「ナイスですっ!流石かすみさんです!」

「よし!やっぱり私のかすみ、信じてた!大好き!」

「え、え?」
彼女らの喜び様に困惑するかすみ。

「……なら一つ、ゲームしない?」

「ゲーム?テレビゲームはうちにないよ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妊娠したのね・・・子供を身篭った私だけど複雑な気持ちに包まれる理由は愛する夫に女の影が見えるから

白崎アイド
大衆娯楽
急に吐き気に包まれた私。 まさかと思い、薬局で妊娠検査薬を買ってきて、自宅のトイレで検査したところ、妊娠していることがわかった。 でも、どこか心から喜べない私・・・ああ、どうしましょう。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】殿下、私ではなく妹を選ぶなんて……しかしながら、悲しいことにバットエンドを迎えたようです。

みかみかん
恋愛
アウス殿下に婚約破棄を宣言された。アルマーニ・カレン。 そして、殿下が婚約者として選んだのは妹のアルマーニ・ハルカだった。 婚約破棄をされて、ショックを受けるカレンだったが、それ以上にショックな事実が発覚してしまう。 アウス殿下とハルカが国の掟に背いてしまったのだ。 追記:メインストーリー、只今、完結しました。その後のアフターストーリーも、もしかしたら投稿するかもしれません。その際は、またお会いできましたら光栄です(^^)

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...