あなたにかざすてのひらを

あさまる

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このまま部屋に残れば、普段出来ないようなことも出来る。
例えば、かすみのいない間にベッドに潜り込み、好き勝手することが出来るのだ。
しかし、そうすれば、彼女を美咲と二人きりにしてしまう。

一方、彼女に着いていけば、それを阻止することは出来るだろう。
しかし、そうなれば今度はどちらかが部屋に残ることとなり、その間野放しになってしまう。

一時的ではあるが、手を結んだエルとゆかり。
しかし、隙を見せれば裏切ることも厭わないと互いに考えている。
決して油断など出来ないのだ。

「ふ、二人ともどうしたの?」
挙動のおかしい二人にかすみが言う。

「迷ってるなら皆でいけば良いじゃん。」
ぼそり。
恐らくこの場でもっとも彼女らにとって有益であろう解答を呟く美咲。

「っ!?その手がありました!私達も行きます!」

「……うん、私も。」

なぜ敵に塩を送るような行為をしたのか。
二人はそのことが疑問であったが、今は大人しく彼女の提案に乗ろうと考えた。

これなら美咲を含めて全員を視界に入れることが出来る。
変な動きをすれば、すぐに止めることが出来るのだ。

危なかった。
内心焦っていたのは、美咲であった。

もしもの話。
もし、彼女らがこの提案に乗らずにかすみの部屋に残ると言い出せば、二人がノーマークになってしまう。
そうなれば、どんな好き勝手なことをしても止めることが出来ない。

余裕しゃくしゃくに見える美咲。
しかしながら、彼女らが美咲を警戒しているように、彼女もまた、二人のことを少なからず警戒していたのだった。

「ふふふ、なんだか大移動になったね。」
何も知らないかすみ。
彼女が嬉しそうにそんな呑気なことを言っている。

またしても、渦中にいるはずの彼女が蚊帳の外という図が生まれてしまった。
しかし、そのことに気づいていなかった為、無駄に傷つくようなことはなかった。


それは、三人にとってピンチであり、それと同時にチャンスでもあった。
部屋へ戻った一行。
休憩をし、談笑していると、かすみが席を外したのだ。

扉が閉まれば冷戦状態。
三人が互いに睨みを効かせ、拮抗状態が生まれた。

「……。」
立ち上がろうとするエル。

「……っ!」

「……。」

二人の視線が彼女へ注がれる。
それらは一挙手一投足見逃すまいとする、非常に鋭いものだ。
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