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ミーンミンミンミン……。
蝉の鳴き声。

ジリジリジリジリ……。
そして、灼熱の太陽。

陽炎が発生し、ゆらゆらと地面付近が揺れるように見える。
それらが重なり余計に暑く感じてしまう。

夏休み。
その初日の朝。
雲一つない晴れた空の下、彼女らは歩いていた。

「うぅ……不快……不快です、不快極まりないです……。なぜ日本には夏があるのでしょう……。そして、なぜこれほどの暑さになるのでしょう……。いっそのこと夏を滅ぼしてしまいましょうかね……。」

「……文句を言うなら祖国に帰れば良い……。……でも、その意見には同感。流石に暑過ぎる……。なぜこんなにも暑いのか……昔はもっとましだったはず……。」

じんわり。
額に汗を滲ませながら、日傘を差して歩いているのはエルとゆかりだ。

彼女らがこんな苦行をしている理由。
それは、かすみの家へ行き、夏休みの宿題をやる為であった。

「いっそのことそうしましょうかね……。」
ぼそり。
呟くエル。

「……え?」
そうする?
聞き間違いか?
聞き返すゆかり。

「祖国に戻る時に、かすみさんを私の妻として迎えるのです。法律などどうとでもなります。……あぁ、我ながらなんて良いアイディアでしょう。今から楽しみです。」
幸せそうに口角を緩ませながら到底あり得ない夢を語り始めたエル。
彼女の脳内にはめくるめくかすみとの新婚生活が思い浮かんでいた。

「……暑さで脳みそやられた?」
辛辣ではあるが、思ったことをそのまま口にするゆかり。

「子どもは何人にします?え?野球のチームが出来るまで……?ふふふ、それでは頑張らないといけませんね。」

「……流石に気持ち悪い……。かすみちゃんに近づかないで。」

「ずいぶん失礼なこと言いますね、あなただって似たようなこと思っているのでしょう?」

「……そんなの当たり前。でもかすみちゃんはあんたの妻には絶対にならないし、あの子との間に子どもを作るのも私。」

かすみ自身が聞いたら卒倒しそうな会話を続ける二人。
空模様とは裏腹に、彼女らの間は段々と雲行きが怪しくなってきた。

「あら?分かりませんよ?」

「……いや、分かる。」

ギロリ。
睨み合い。
照りつける太陽に負けない熱さであった。

「止めましょう……。暑さで溶けてしまいます。」

「……さっきから同じ意見なのが不愉快だけど、同感。こんなことしてないで早く行こう。」
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