あなたにかざすてのひらを

あさまる

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長年に渡り、行われてきたそれらも徐々に廃れていった。
吸血鬼の減少。
そして、彼らの血が薄くなっていり、紅花の血は強過ぎて不要になってしまったのだ。

自身の家に、そんな秘密があったなど、かすみは知らなかった。
両親からそんなことは聞かされなかったし、そんな素振りもなかったのだ。

そして、そこまで聞き、かすみにはまた一つ分からないことが出来た。
「つまり、私に固執したわけじゃなく、昔からの付き合いってこと?それなら、やっぱり無理に幼馴染って設定なんかにしなくとも、友達とかでも良かったんじゃ……。」

「……違うよ、かすみちゃんだから、私達はずっと一緒にいたいって思ったの。友達なんかじゃ足りない、もっと深い絆、例え偽物でも欲しかったの……。そこには紅花の家とかは関係ない。」
彼女と話す相手が、エルからゆかりへ変わる。
口数の少ない彼女が、これほどの長文を話すのも珍しい。

「……?」

「……私達、かすみちゃんと始めて会った時、すぐに吸血鬼だってバレちゃったの。それで、すぐに記憶を改竄しようとしたんだけど、怖がらないし、気味悪がらないし……。それが嬉しくて……。」

「今までの紅花の者達は、私達のことを、恐怖の対象として見ていました。当たり前ですよね、人間から見れば、私達吸血鬼は化物ですから……。」
エルが続ける。

「……昨日までの、かすみちゃんと同じ目をしてた。……前、受け入れてもらえたけど……今度もまた受け入れてもらえるか分からなくて……恐かった……。今まで、誰にどんなことを思われても良いと思ってた。でも、かすみちゃんにだけは嫌われたくなかった……。」

「そう……なんだね……。」
二人の話を聞き、そんな声が出た。

そんな記憶などない。
幼い頃、二人と出会った時のことなど、覚えているわけがない。
しかし、その時の自分は、彼女らを受け入れたのだと言う。

「今思えば、それも当たり前なのかもしれません。」
エルが言う。

当たり前。
そう言う根拠は何なのだろう?
疑問に思うかすみ。
「なんで?」

「きっと、その頃には既に彼女と接触していたと思いますし……。」

「彼女?」

「城原美咲です。もし、彼女がその頃既に吸血鬼だとかすみさんに話していれば、私達が受け入れられてもおかしくはありません。」

「……悔しいけど、もしそうならあいつは恩人。」
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