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「エルちゃん、もう大丈夫そう?」
「もうちょっとだけ……もうちょっとだけお願いします……。すみません……もう少しだけ……もう少しだけで良いんです……。」
弱々しく震える声。
かすみの胸元で、エルがそう言う。
結局、彼女の言うちょっとだけとは、三十分ほどであった。
解放された後、かすみの胸元は彼女の涙でびしゃびしゃになってしまっていた。
「すみません、見苦しい姿を晒してしまいました……。」
「あはは、だ、大丈夫だよ……。」
「……。」
「……。」
勢いで受け入れてしまった。
しかし、やはりどこかぎこちない。
無言になってしまう二人。
「あの……ゆ、ゆかりちゃんのところに行こう?」
会話を再開したのは、かすみであった。
「え……?」
また、彼女から聞くはずのない言葉が聞こえてしまい、聞き返すエル。
「ほ、ほら……私達、その……。」
「……?」
どうしたのだろう?
かすみの次の言葉を待つエル。
「お、幼馴染……なんでしょ?」
「か、かすみさん……っ!」
彼女の言葉に再び涙を流してしまうエル。
「ほら、泣かないで。さ、行こう?」
「はいっ!」
泣きながらも、笑顔でそう言った。
「か、神良先輩!?……と、二人とよく一緒にいる先輩……?でしたっけ?どんな用でしょうか?」
二人が向かった先。
それは、一年生の教室。
ゆかりのクラスだ。
いつも通りだ。
エルやゆかりはほとんど全校生徒にも知れ渡っている。
しかし、かすみの認知度はその程度だ。
二人とよく一緒にいる。
その程度だ。
しかし、今そんなことを気にしている場合ではない。
「えっと、磯飛さん、いらっしゃいますか?」
二人が来た訳。
それは、ゆかりに会いに来た為だ。
その旨を、エルがゆかりのクラスメイトに言う。
「ごめんなさい、ゆかりんこ、もう帰っちゃいました……。」
「そ、そんな……。」
かすみががっかりしながら声を出す。
当たり前といえば、当たり前だろう。
エルとの会話で時間を消費してしまった。
その間にゆかりが帰宅していても何ら不思議ではない。
ガシッ。
かすみの手を掴むもの。
エルの手だ。
「行きましょう、かすみさん!」
「え?」
「ほら、もたもたしている場合ではありません!行きますよ!」
「え?え?え?」
「ありがとうございました、私達はこれで失礼しますね。」
「もうちょっとだけ……もうちょっとだけお願いします……。すみません……もう少しだけ……もう少しだけで良いんです……。」
弱々しく震える声。
かすみの胸元で、エルがそう言う。
結局、彼女の言うちょっとだけとは、三十分ほどであった。
解放された後、かすみの胸元は彼女の涙でびしゃびしゃになってしまっていた。
「すみません、見苦しい姿を晒してしまいました……。」
「あはは、だ、大丈夫だよ……。」
「……。」
「……。」
勢いで受け入れてしまった。
しかし、やはりどこかぎこちない。
無言になってしまう二人。
「あの……ゆ、ゆかりちゃんのところに行こう?」
会話を再開したのは、かすみであった。
「え……?」
また、彼女から聞くはずのない言葉が聞こえてしまい、聞き返すエル。
「ほ、ほら……私達、その……。」
「……?」
どうしたのだろう?
かすみの次の言葉を待つエル。
「お、幼馴染……なんでしょ?」
「か、かすみさん……っ!」
彼女の言葉に再び涙を流してしまうエル。
「ほら、泣かないで。さ、行こう?」
「はいっ!」
泣きながらも、笑顔でそう言った。
「か、神良先輩!?……と、二人とよく一緒にいる先輩……?でしたっけ?どんな用でしょうか?」
二人が向かった先。
それは、一年生の教室。
ゆかりのクラスだ。
いつも通りだ。
エルやゆかりはほとんど全校生徒にも知れ渡っている。
しかし、かすみの認知度はその程度だ。
二人とよく一緒にいる。
その程度だ。
しかし、今そんなことを気にしている場合ではない。
「えっと、磯飛さん、いらっしゃいますか?」
二人が来た訳。
それは、ゆかりに会いに来た為だ。
その旨を、エルがゆかりのクラスメイトに言う。
「ごめんなさい、ゆかりんこ、もう帰っちゃいました……。」
「そ、そんな……。」
かすみががっかりしながら声を出す。
当たり前といえば、当たり前だろう。
エルとの会話で時間を消費してしまった。
その間にゆかりが帰宅していても何ら不思議ではない。
ガシッ。
かすみの手を掴むもの。
エルの手だ。
「行きましょう、かすみさん!」
「え?」
「ほら、もたもたしている場合ではありません!行きますよ!」
「え?え?え?」
「ありがとうございました、私達はこれで失礼しますね。」
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