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決して気分が良いとは言えない。
むしろ、まだ悪いだろう。
しかし、それでも先ほどまでよりは前進した。
かすみは、そう思うことが出来た。

「かすみ。」
かすみを呼ぶ、さくらの声。

「うん?」

「どう?」

それは、非常に抽象的な質問だ。
しかし、その詳細を聞くまでもない。
「うん、お陰でいっぱい落ち込んだ。」

「うぐっ……ごめん、余計なこと言っちゃったかな?」

「あはははは!嘘だよー、べろべろばー。」
かすみもまた、戯けてみせた。

「もー!」
そう言いながらも、顔は笑っているさくらであった。

悩んでも良い。
落ち込んでも良い。
それなら、人の道から外れなければ、後悔するかもしれないような選択肢を取るのも悪くないかもしれない。

今ならいくらでもやり直せる。
それなら、後悔も思い出となるだろう。
いつか、笑い話になるだろう。
きっと大丈夫だ。


放課後。
帰宅の準備をするかすみ。
そんな彼女の真横に立つ者がいた。
さくらだ。

「どう、かすみ?」

「うん?」
席に座っている為、隣にいるが立っている彼女と目線が合わない。
その為、その声の主の顔は見えない。

声で誰が話しかけて来たのか分かる。
しかし、かすみは見上げて目線を合わせた。

「どうすれば良いか、どうすべきか分かった?」

「そう……だね……。うん、見つかったよ。ありがとう。」
本当は、見つかってなどない。

どうすれば良いか。
どうすべきか。
そんなものは見つかってないのだ。
そもそも、未来が分からない為、正解など分かるわけがないのだ。
しかし彼女自身が今やりたいことは、彼女にも分かった。

「そっか、良かった。じゃあ私は見守ることにするよ。」
にこっ。
彼女の言葉に笑みで返すさくら。

「うん、ありがとう。」
さくらへ礼を言うと、かすみは教室を出て行った。


「……はぁ、せっかくチャンスだったのに……私、何やってんだろ……。」
ぼそり。
かすみのいなくなった教室。
未だに何人かの生徒達がいる。
その中の一人、さくらが呟いた。

「……まぁ、でもしょうがないか。……あんなかすみ、いつまでも見ていられなかったし……。」
さくらは自身を納得させるように、そう続けた。


かすみが向かった場所。
それは、三年生であるエルの教室であった。
教室内にはまだ生徒が残っている。
彼女も、その中にいた。
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