あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「いや……私なんかと友達になってくれて……嬉しいなぁ……って思ってさ……あはは……。」

「は、はぁ……。」
いまいちピンと来ていないさくら。
急にどうしたのだろう?
なんとも微妙な顔をしている。

「まぁ、良いや……。今私は気分が凄く良いからちょっとだけ見せてあげるよ。」

「おー!ありがとう!流石かすみ、私の親友だよ。もう、大好きっ!」

大好き。
さくらのその言葉に反応してしまうかすみ。

「あ、あぁ……。」
そのかすみの声が、震えてしまっている。

「うん?どうしたの?」
彼女の異変に気づいたさくら。
怪訝な顔をしている。

「あっ、いや……。あはは……。どうしちゃったんだろうね。」
言葉が上手く出ないかすみ。
思考が上手くまとまらない。

「か、かすみ?」

「あはは……ごめん、本当に……ごめんね。」

今までならば、なんとも思わなかったものだ。
しかし、さくらの言葉の意味が、友情から来るものだと分かっていても、今のかすみには怖く感じてしまうのであった。

「……。」
彼女に何かあったこと。
それに気づいたさくら。
しかし、何も口にはしなかった。

今のかすみの怯え具合。
春から三ヶ月ほどだ。
そんな短い付き合いだが、さくらには、それが異常であることが分かった。

最近、たまに起きる彼女の異変。
それらは全て、エルとゆかりに関するものであった。
今回もきっと、それが原因なのだろう。

彼女が何も言わないのなら、聞かない。
きっと、聞いてほしくないのだろう。
だから聞かないのだ。


昼休み。
そわそわしているかすみ。

声をかけるべきだろうか?
そんな彼女を見て、そう思うさくら。

いつもなら、準備が出来次第、エルやゆかりの待つ中庭、乃至は屋上に行っているはずだ。
それが、いつまで経っても教室から出ていこうとしないのだ。

「かすみ?」

「っ!?」

「おうっ!?」
驚きが伝染する。

さくらの声に驚いたかすみ。
その身体をビクッと震わせたのだ。
そんな彼女のその様子。
それが、声をかけた張本人であるさくらを驚かせた。
端から見れば、滑稽な光景だろう。

「な、なに?」

「本当にどうしたの?」

「……ごめん。」

「謝らないでよ……。まだ話せないの?」

「……ごめん。」

「私、そんなに頼りないかな?」

「ち、違っ、そういうわけじゃ……。」
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