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「……あっ。」
「き、奇遇ですね……。」
「……ふふふ、エル毎回それ言ってる気がする。」
「そう……でしたか?」
「……うん、そう。」
かすみの家の前。
ゆかりとエル。
二人とも、そこにいた。
理由は単純。
かすみと共に登校する為、彼女らは欠かさずにそこに来ていたのだ。
しかし、いよいよそれが叶わずに一学期もいよいよ大詰めとなってしまっていた。
夏休みが始まれば、さらにかすみと接触しずらくなってしまうだろう。
そうなってしまえば、いよいよ絶縁となってしまう。
それだけは阻止しなければならない。
そんなことになってしまえば、最悪な結果を覚悟しなければならない。
心臓の音がうるさい。
自身のものか。
それとも、隣に立つ者の音か。
その正体は、ゆかりにも、エルにも分からなかった。
二人の目が合う。
互いに分かった。
もう、覚悟は出来ている。
インターホンを押すゆかり。
ごくり。
彼女の隣で緊張しているエル。
ガチャリ。
扉が開いた。
場所は変わり、かすみの教室。
そこには既に彼女はいた。
「あれ?早いね、かすみ。」
クラスメイトのさくら。
彼女がかすみに向けて言葉をかけた。
「うん、おはよう。」
「おはよう。今日何かあったっけ?」
「そういうわけじゃないんだけどね……何となく早く起きちゃったから。……そういうさくらは?」
これ以上追及されたくない。
卑怯かもしれないが、話題を変えてしまおう。
そう思ってのかすみの発言であった。
「早く起きちゃったからかー、偉いなぁ、かすみは……。私は宿題やってなくて、早く来てやろうかなって思ってね。」
にしし。
幼い子どものような無邪気な笑みを見せるさくら。
「ふふふ、おだてたって見せてあげないよ?」
「えー!?そこをなんとかー、何卒ー。」
さくらの反応を見て、つい笑ってしまうかすみ。
楽しい。
いつ振りだろう。
それほど長い間ではないはずだ。
しかし、彼女にとっては長い間のことだ。
本心から笑えたのはいつ振りなのだろう。
最後に周りに気を使わずに、感情を表したのはいつだっただろう?
滅茶苦茶になった記憶。
否定された思い出。
今となってはもう、そんなことを考えても無駄なのだろう。
彼女自身、どれが正しいのか分からないから、意味がないのだ。
「ありがとう。」
「……え?」
キョトンとするさくら。
「き、奇遇ですね……。」
「……ふふふ、エル毎回それ言ってる気がする。」
「そう……でしたか?」
「……うん、そう。」
かすみの家の前。
ゆかりとエル。
二人とも、そこにいた。
理由は単純。
かすみと共に登校する為、彼女らは欠かさずにそこに来ていたのだ。
しかし、いよいよそれが叶わずに一学期もいよいよ大詰めとなってしまっていた。
夏休みが始まれば、さらにかすみと接触しずらくなってしまうだろう。
そうなってしまえば、いよいよ絶縁となってしまう。
それだけは阻止しなければならない。
そんなことになってしまえば、最悪な結果を覚悟しなければならない。
心臓の音がうるさい。
自身のものか。
それとも、隣に立つ者の音か。
その正体は、ゆかりにも、エルにも分からなかった。
二人の目が合う。
互いに分かった。
もう、覚悟は出来ている。
インターホンを押すゆかり。
ごくり。
彼女の隣で緊張しているエル。
ガチャリ。
扉が開いた。
場所は変わり、かすみの教室。
そこには既に彼女はいた。
「あれ?早いね、かすみ。」
クラスメイトのさくら。
彼女がかすみに向けて言葉をかけた。
「うん、おはよう。」
「おはよう。今日何かあったっけ?」
「そういうわけじゃないんだけどね……何となく早く起きちゃったから。……そういうさくらは?」
これ以上追及されたくない。
卑怯かもしれないが、話題を変えてしまおう。
そう思ってのかすみの発言であった。
「早く起きちゃったからかー、偉いなぁ、かすみは……。私は宿題やってなくて、早く来てやろうかなって思ってね。」
にしし。
幼い子どものような無邪気な笑みを見せるさくら。
「ふふふ、おだてたって見せてあげないよ?」
「えー!?そこをなんとかー、何卒ー。」
さくらの反応を見て、つい笑ってしまうかすみ。
楽しい。
いつ振りだろう。
それほど長い間ではないはずだ。
しかし、彼女にとっては長い間のことだ。
本心から笑えたのはいつ振りなのだろう。
最後に周りに気を使わずに、感情を表したのはいつだっただろう?
滅茶苦茶になった記憶。
否定された思い出。
今となってはもう、そんなことを考えても無駄なのだろう。
彼女自身、どれが正しいのか分からないから、意味がないのだ。
「ありがとう。」
「……え?」
キョトンとするさくら。
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