あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「……まぁ、それに、あんたが元気ないとかすみが悲しむから……。」
エルの話の途中で被せる。

「本当でしょうか?」

「……え?」

「今日のかすみさんの異変、あなたも気づいていたでしょう?」

異変。
そうだ。
妙に余所余所しかった。

「……そうだね。」

「私……嫌われたんですよ、きっと……。」
辛うじて聞こえたそれは、声が震えている。

「……そ、そんなことは……。」
否定をしようとするゆかり。
しかし、最後まで言うことが出来なかった。

自身もそれを自覚していたからだ。
ゆかり自身も、うっすらではあるが、そう思っていたのだ。

「私には……もう生きている価値など……。」
エルの呟き。

それもまた、途中で止められてしまった。
彼女の口をゆかりの手の平が封じたのだ。

「それは違う、撤回して。違うから。そうでしょう?」
サファイアのように光る青い瞳がエルを捉えている。

彼女の手を剥がすエル。
「分かってる。ちょっと弱気になっただけじゃない。」
彼女の目は、赤く光っている。


「……なにがきっかけだったかは分からないけど……。」

「?」

「……また修正しないと……。」

その声に頷くエル。
そうだ。
今までもそうしてきた。

正体がばれそうになる度に、関係性が拗れそうになる度にそうしてきた。
また今回も同じことをすれば良い。

そう、今までと同じことをすれば良いのだ。
ただそれだけで良い。
そのはずだ。
そのはずだった。
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