あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「ご、ごめん、やっぱり駄目だよね……。あはは……。紅花先輩と、エル様と帰るんだよね。」
苦笑いする彼女のクラスメイトの女子生徒。
気まずそうに、そうするしか出来ないでいたのだ。

いつもならそうだ。
しかし、今日は違うのだ。

こんな些細なことすら非日常になってしまうものなのだな。

「……今日は……。」

駄目だ。

「うん?」

言うな。

「……今日はその……。」

甘えるな。

「ゆかりんこ?」

彼女らの善意を利用するな。

「……行ける……と、思う。」

「本当に!?」

誘いはした。
しかし、断られると思っていた。
駄目で元々であったのだ。
それを、良い意味で裏切られた。
目を輝かせる。

「……うん。」

「嬉しいよ!」

申し訳ない。
違うのだ。
ただ誰かの側にいたかった。
それだけなのだ。

誰でも良かった。
この気持ちを一時的にでも忘れられるのなら何でも良かったのだ。

「あっ……。」

廊下を歩いていたゆかり。
そんな彼女へ向けられたであろうものだ。
彼女にとって、有象無象なものであれば無視していた。
しかし、そういうわけにもいかない。

その声の主。
それはエルであった。

「……あなたも今帰りなの?」

「え、えぇ……そうです。そちらも?」

「……。」
コクン。
頷く。

「そうですか……。」
明らかに元気がない。

原因は分かりきっている。
しかし、それはゆかり自身もだ。
それでいて、解決法が思いつかないから困ってしまう。

「……一人で帰るの?」

「いえ、クラスメイトの方達と……。そういうゆかりさんは?」

「……私もそう。」

なるほど。
後ろで熱い視線を向けているのが彼女のクラスメイトか。
納得するゆかり。


帰り道。
両隣にクラスメイト達。
彼女らと会話をしながら帰宅しているゆかり。
本来ならば、楽しいのだろう。
しかし、今の彼女には、何も感じることは出来なかった。

「早く……。」

「……うん?」

「早く紅花先輩と仲直り出来たら良いね。」

「……そうだね……。」
本当に、そうだ。
いつもよりもさらに力なくぽつりと呟くゆかり。


こちらからはどうすることも出来ない。
もどかしい。
もしも、このままの関係が続いていったらどうしようか。
どうなってしまうのだろうか。

不安。
それが、ネガティブな思考のせいで、より大きなものになっていく。
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