あなたにかざすてのひらを

あさまる

文字の大きさ
上 下
76 / 151
11

11ー1

しおりを挟む
「あら、おはよう二人とも。ごめんね、ゆかりちゃん、エルちゃん。かすみ、もう学校に行ったみたいなの。」

「え、そ、そうなんですか……。」

「……分かりました、ありがとうございます。」

翌日の朝。
エルとゆかり。
彼女らはいつも通りかすみの家に来ていた。
共に登校する為だ。
しかし、今日に限ってはそれよりも大きな理由がある。

彼女が無事かどうか。
そして、昨日の話の続きをすることが出来ればしておく。
その二つだ。
しかし、彼女らがそれを話すことは叶わなかった。
二人が訪れた頃にはすでにかすみはもう登校した後であった。


玄関の扉が閉まる。
その場に立ち尽くす二人。

それは、今までない明確な拒絶でたった。
それが少し続いただけ。
それだけで二人の精神は、磨耗していた。

「……もう、行こう。」

ジリジリとした暑さ。
それが彼女らの体力を奪っていった。

タラリ。
二人から汗が流れる。

何分いたのだろう。
そのままだった二人。
無言な空間を破ったのはゆかりであった。

「……。」

「……ここにいても時間の無駄になるだけ。……それに、迷惑になる。」

「……。」

「……ほら、行くよ。」
強引にエルを引っ張り登校する。

かすみのいない通学路。
彼女がいないのであれば、一人で歩いた方がまし。
二人ともそう思っていた。
しかし、今日ばかりは違った。

誰もいないよりも幾分かまし。
いや、少しだけだが楽になった。
そんな気がしていた。


校舎へ辿り着いた。
歩いている間、無言であった。

一年生と三年生。
教室の階数が違う。
階段を昇り、自身の教室へ向かうエル。
そして、そんな彼女を見送ると、踵を返して教室へ向かうゆかりであった。


授業を受けるエル。
上の空。
頭の中は真っ白。
たまに浮かぶことと言えば、かすみのことだけであった。

それはエルだけではなく、ゆかりもであった。
しかし、何も出来ない。
近づけば離れてしまう。
歯痒い。


結局、そのまま時は過ぎて昼になってしまった。
いつもかすみとともにする二人。
しかし、今日ばかりはそうするわけにもいかない。


「……あっ。」

「あっ……。」

声が重なる二人。
エルとゆかりは同じ場所にいた。

夏の暑さ。
それが直に反映する場所。
本来ならそんなところに自らの意思で向かわないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

タイツによる絶対領域

御厨カイト
恋愛
お昼前の授業も終わり昼休みになると、いつも私は彼女である澪と一緒に屋上でのんびり話をしながら過ごしていた。今日も私の膝の間に座り、嬉しそうに体を左右に揺らす澪とまったりと雑談をしていたのだが、その話の流れで澪の足を触る事に。しかし、そこで澪は足が弱いことが発覚し……

一口分の毒りんご

null
恋愛
人は愛されてこそなんぼだ。 アイドルとして順風満帆な人生を送っていた花月林檎は、自分の容姿、雰囲気、振る舞い…それらから得られる全てを享受しながら生きてきた。 そんな花月にも理解できないモノがあった。 友人もいない、愛想も悪い、本ばかり読んでいて、そして、私にも興味がない人間、時津胡桃。 一人孤独に、自分の中だけで生きている時津とちょっとしたことで共に行動することになった花月は、段々と彼女の隣で居心地の良さを感じるようになっていくのだが…。

さよなら、ダークヒーロー

null
恋愛
--自分を形作った、ダークヒーローを卒業する。 女性ながらも、自分のことを『僕』と呼ぶ、高校一年生の夕凪晶。 彼女は、友だちや恋人をつくるといった人並みの青春を謳歌するため、 内気な自分を変えてくれた存在でもある『ダークヒーロー』を卒業すると決めた。 拒絶的な言葉遣いや皮肉を抑え、たいした理由もなく遠ざけていた同級生とも距離を縮めるために努力した。 しかし、思うような成果はなく、晶はクラスで孤立したままであった。 そんなとき、晶は自分と同じようにクラスから浮いている同級生、北宿雪姫とひょんなことから親交を深めていくことになる。 彼女の歯に衣着せぬ物言いに辟易としつつも、自分がかつて憧れた存在、ダークヒーローと同じ強さを持つ雪姫に晶は心を惹かれていく。 相変わらず、友だちもできなければ、恋人もできない時間が続いたが、晶は雪姫との日々にある種の充足感を得て過ごしていた。 だが、ある日、晶のことを好きだと言う同級生が…しかも、女子が現れて…晶と雪姫の関係は変わり始めてしまう。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

処理中です...