あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「い、良いよ……入ってって?」

なぜこんなことを言ってしまったのだろう。
自分を騙していた彼女らに情けをかけたのか?
それとも、今までのことを言及する為か?
かすみには、自身の考えが分からなかった。

「お、お茶もってくるね。」

自室へ招き入れたかすみ。
彼女らを自身の部屋へ入れるのも好ましくなかった。
それに、自身の監視の目がなくなってしまうのでなるべく離れたくはなかった。
しかし、今の二人は客人だ。
仕方がない。

「い、いえ……お構いなく……。」

「……大丈夫。それより座ってほしい。話を聞いてほしい。」

「う、うん……。」
ちょこん。
二人から少し離れた場所に座るかすみ。

「え、えっと……その……。」
しどろもどろなエル。

「……良い。私が言う。」
ゆかりがエルを制止する。

真っ直ぐにかすみを見ている。
その瞳は透き通っていて、彼女が反射している。

「……。」
ごくり。
唾を飲むかすみ。

「……私達何か悪いことしちゃったかな?」
回りくどいやり方は好きではない、ゆかりらしい聞き方だ。

「え、えっと……。」
どうしようか。
未だにどうすべきか迷っているかすみ。

「……大丈夫。思ってること全部話して?」

大丈夫。
それならば全て言ってやろう。
「な、なら一個聞きたいことあるんだけど……。」

「……うん。」
頷くゆかり。

「私達、幼馴染じゃないよね?」
単刀直入。
以前そして、今回ゆかりが使った幼馴染の特権。
それを、幼馴染であるということを否定するものに使うかすみ。

「っ!?」

「……え、え?」

驚く二人。
それはどういう意味なのだろう。

彼女らも知らなかったのか。
それとも、気づいていたことに対して驚いていたのか。
かすみには分からない。

「答えて……くれるんでしょ?」

「……分かりました。」

「ゆ、ゆかりさん!」

「……黙ってて。」
エルの言葉を一蹴するゆかり。

「……。」
何か言いたげなエル。
そわそわとしている。

「……そうだね、確かに私達とかすみちゃんは幼馴染じゃない。」

その言葉に脱力してしまうかすみ。
分かっていた。
気づいていた。
しかし、心の奥底では否定してほしかったのかもしれない。

ろくに働かない頭を動かす。
「じゃ、じゃあなんなの?これ……昔から一緒にいたじゃん……。覚えてるよ、私。」
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