あなたにかざすてのひらを

あさまる

文字の大きさ
上 下
67 / 151
9

9ー6

しおりを挟む
養護教諭。
そこにいる彼女を洗脳した。
しかし、その知識は元の人格に依存する。
適当なことを言っているわけではないはずだ。

「はい、寝不足です。」
再度言う。

「……本当に?」

「はい。」

「……神に誓って?」

「はい。」

「……もし、かすみちゃんに何かあったら一族郎党皆殺しするけど、大丈夫?」

「はい。」

「……そう。なら良い。ありがとう、もう戻って良いよ。」
安堵。

「え?……あ、あれ?」
キョロキョロ。
辺りを見渡す。
まるで今までの記憶がなく、現状を確認しているようだ。

「……先生大丈夫?」

「えっ!?い、磯飛さん!?あれっ?え?」
ゆかりに声をかけられたことで余計に混乱しているようだ。

「……先生ボーッとしてたみたいだから勝手にベッド使わせてもらっちゃった。」

「え?あっ、そうなの?」

「……うん。今かすみちゃん……紅花先輩が寝てるから静かにね?」

「え、えぇ。分かったわ。」

「……なら、私教室に戻るけど、紅花先輩のことお願いします。」
慣れない敬語を使い、頭を下げるゆかり。

それに了承すると、彼女は満足したようで、そのまま室内を出た。


ゆかりの居なくなった保健室。
そこには、かすみの寝息だけが聞こえていた。

「可愛かったな……。この子、ゆかりんこと仲良いのかな?……羨ましいなぁ。」
かすみを見て、誰に言うでもない本音をぽつりと呟いた。


「……さて。」
廊下を歩くゆかり。

かすみはもう大丈夫だろう。
次の目的地へ向かう。


他の者とは違う。
鼻をつく不快な血の臭い。
それを頼りに進んでいく。

すぐに見つかった。
人気のない空き教室。
そこに彼女はいた。
エルだ。

「……エル、かすみは保健室に運んだよ。」

「体調……体調はどうでしたか……?」

「……ただの寝不足だって。」

「そう……そうですか……。良かった……本当に良かった……。」

「……今はエルが心配なんだけど……。」

「私?私ですか?」

「……焦燥しきっているように見える。」

「ふふふ、かすみさんだけしか見えていないと思ってましたが、意外と周りのことよく見てるんですね。」
力なく笑うエル。

「……まぁ、あんたと私は一応、腐れ縁だからね。」

「そうですね……そうでしたね、すっかり忘れていました。私とあなたは……唯一の生き残り……でしたもんね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

自転車センパイ雨キイロ

悠生ゆう
恋愛
創作百合。 学校へと向かうバスの中で、高校三年生の中根紫蒼はカナダに住むセンパイからのメッセージを受け取った。短い言葉で綴られるちぐはぐな交流は一年以上続いている。センパイと出会ったのは、紫蒼が一年生のときだった。 一年生の紫蒼は、雨の日のバスの中で偶然センパイと隣り合わせた。それから毎日少しずつ交流を積み重ねて、毎朝一緒に勉強をするようになった。クラスメートとの交流とは少し違う感覚に戸惑いながらも、紫蒼はセンパイと会うのを楽しみにするようになる。

処理中です...