あなたにかざすてのひらを

あさまる

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分からない。
どうすれば良いのだろう。
脳のリソースをそちらに割いてしまっていた二人。
そのせいで会話もままならない状態になってしまった。

その結果。
彼女らが話さなければ、かすみも話せない。
無言のまま校門を潜る三人であった。

「はっ！？あ、あれ？」
気づくと自身の席に座っていたかすみ。

「おーい、大丈夫？」
手の平をかすみの目の前で動かすさくら。

「あっ、さくら……。おはよう。」

「うん、何度目か分からないけど、はい、おはよう。」

「え？何度目か……？」

「うん。私、何回か挨拶したけど無視されちゃって傷ついちゃってるんだよなー。」

「ご、ごめん……。」

「あはは、嘘嘘、冗談だよー。」
ヘラヘラと笑うさくら。

さくらはどうだろう。
彼女は、高校に入学してからの付き合いの友人だ。

「ね、ねぇ、さくら？」

「うん？」

「私達って、いつから友達だっけ？」

「え？」
何を言っているのだ？
そう言いたげな表情をするさくら。

当たり前だろう。
いきなりそんな質問をする意図が分からない。
かすみも彼女の立場なら似たようなリアクションをとっただろう。

「お願い、大事なことなの……。」

「ここに入学してからだけど……。」
かすみの真剣な表情。
それを見て、ただならぬ空気を感じ取ったさくらであった。

良かった。
記憶のズレはない。
あとは客観的な証拠があれば良い。

「も、もう一個確認……良い？」

「良いけど……。」
事情を聞きたい。
しかし、先にかすみの質問を聞いた方が良さそうだ。
そう思うさくらがぽつりと呟くように答えた。

「ゴールデンウィークに一緒に遊びに行ったことあったじゃん。」

「え？うん。まぁ、そうだね。でも最近遊べてないよね……。」

グサリ。
痛いところを突かれる。
しかし、傷つくのは後だ。
「その時の写真、残ってる？」

「え？自分のは？」

「あっ……。」
それもそうか。
携帯電話を取り出す。

「まぁ、良いけど……。」
さくらも携帯電話を出す。

画像フォルダ。
両者のそれには、その時の写真が残っていた。

良かった。
この記憶は本物であった。
安堵するかすみであった。

「ねぇ、本当にどうしたの？」
声色が変わる。
先ほどまでの疑問を含んだものではなく、心配そうなものになっていた。

「大丈夫、ありがとう。」
にっこりと微笑むかすみ。

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