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「大丈夫!大丈夫です!外的刺激を与えれば起きます!」
バチン、バチン!
未だに止めない。
「止めて!止めてよ!」
「大丈夫です!私達はそんなにやわじゃありませんから!」
「あ、あの……エルちゃん?」
異変に気づいたかすみの母。
部屋を覗いている。
「大丈夫です。すぐに戻って下さい。」
「はい。」
鶴の一声。
エルが冷たく放ったそれに従い、すぐさま彼女は戻っていってしまった。
「え、おかっ、お母さん!?いや、ゆかりちゃんが……。」
オロオロ。
ただただ慌てるかすみ。
「かすみさん。」
「な、なに?」
「ゆかりさんなら大丈夫です。」
「え?いや……泡吹いてきてるし……。」
声が震えている。
ゆかりを見るエル。
鼻血の勢いは治まってきている。
しかし、その代わりに、彼女の口から泡をぶくぶくと出てきている。
その姿はさながら威嚇する蟹のようだ。
「泡?え、えぇ……。」
困惑するエル。
ここまでしてかすみの気を引きたいのか。
躊躇いない彼女の行動に内心引いてしまうエル。
チラリ。
薄目を開いている。
二人の目が合う。
口が微かに動くゆかり。
何かを言っているようだ。
よ、け、い、な、こ、と、を、い、う、な。
なるほど、これ以上何かを言われると困るようだ。
それならもっと邪魔をしてやろう。
ニヤリ。
ほくそ笑むエル。
「とにかく、落ち着いて下さい。救急車なら、私が連絡しますから。」
「え?いや、でも……。」
携帯電話を胸元に抱き締めているかすみ。
羨ましい。
無生物であるそれに嫉妬する二人。
「大丈夫ですよ。大丈夫。多分今のかすみさんでは落ち着いて状況を伝えることは出来ないでしょう?それに比べて私なら冷静なので大丈夫です。私が連絡しますから、どうか今は落ち着いて下さい。分かりましたか?」
彼女が先ほど言っていた番号は全て無関係なものだ。
万が一、警察へ誤って通報されようものならたまったものではない。
それで咎められてしまえば、かすみが無駄に傷ついてしまうかもしれない。
そんなことは阻止する他ない。
その意味も込めて、エルが早口で述べた。
「そ、そうだよね。」
思考が傾き始めた。
連絡はしなくても良いと思い始めたかすみ。
よし。
あと一押し。
エルがそう思った時、ゆかりの口が開かれた。
「……人工……呼吸……。」
「え?じ、人工呼吸?」
バチン、バチン!
未だに止めない。
「止めて!止めてよ!」
「大丈夫です!私達はそんなにやわじゃありませんから!」
「あ、あの……エルちゃん?」
異変に気づいたかすみの母。
部屋を覗いている。
「大丈夫です。すぐに戻って下さい。」
「はい。」
鶴の一声。
エルが冷たく放ったそれに従い、すぐさま彼女は戻っていってしまった。
「え、おかっ、お母さん!?いや、ゆかりちゃんが……。」
オロオロ。
ただただ慌てるかすみ。
「かすみさん。」
「な、なに?」
「ゆかりさんなら大丈夫です。」
「え?いや……泡吹いてきてるし……。」
声が震えている。
ゆかりを見るエル。
鼻血の勢いは治まってきている。
しかし、その代わりに、彼女の口から泡をぶくぶくと出てきている。
その姿はさながら威嚇する蟹のようだ。
「泡?え、えぇ……。」
困惑するエル。
ここまでしてかすみの気を引きたいのか。
躊躇いない彼女の行動に内心引いてしまうエル。
チラリ。
薄目を開いている。
二人の目が合う。
口が微かに動くゆかり。
何かを言っているようだ。
よ、け、い、な、こ、と、を、い、う、な。
なるほど、これ以上何かを言われると困るようだ。
それならもっと邪魔をしてやろう。
ニヤリ。
ほくそ笑むエル。
「とにかく、落ち着いて下さい。救急車なら、私が連絡しますから。」
「え?いや、でも……。」
携帯電話を胸元に抱き締めているかすみ。
羨ましい。
無生物であるそれに嫉妬する二人。
「大丈夫ですよ。大丈夫。多分今のかすみさんでは落ち着いて状況を伝えることは出来ないでしょう?それに比べて私なら冷静なので大丈夫です。私が連絡しますから、どうか今は落ち着いて下さい。分かりましたか?」
彼女が先ほど言っていた番号は全て無関係なものだ。
万が一、警察へ誤って通報されようものならたまったものではない。
それで咎められてしまえば、かすみが無駄に傷ついてしまうかもしれない。
そんなことは阻止する他ない。
その意味も込めて、エルが早口で述べた。
「そ、そうだよね。」
思考が傾き始めた。
連絡はしなくても良いと思い始めたかすみ。
よし。
あと一押し。
エルがそう思った時、ゆかりの口が開かれた。
「……人工……呼吸……。」
「え?じ、人工呼吸?」
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