あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「はい。」
にっこり。
微笑むエル。

浴室へ向かうかすみ。
それに着いていくエル。

「いやいやいやいや!ちょっと待って!なんで一緒に入ろうとしてくるの!?」

「え?あっ、いけません。間違えました。いやぁ、失礼失礼。」
えへへ。
後頭部を手で擦り言うエル。

明らかにわざとだ。
そんなもの、かすみにも分かった。

「何か企んでない?」
ジッとエルを見つめるかすみ。

そんな行為、彼女の前では無意味だ。
ゆかりもそうだが、今までも、のらりくらりと回避されてきた。
きっと今回もそうだろう。
それでも問い詰めた。

「いやですね、何も企んでないですよ。さ、制服はそちらの籠に置いておいて下さいね。着替えをお持ちします。」
ニコニコ。
ここまでくるといよいよ胡散臭い。

何かしようとしている。
そんなもの、明白だ。
しかし、身体に張りつく制服や下着が不快で仕方がない。
どうやら彼女の提案に乗るしかないようだった。


「ほ、本当に良いの?これ、高いやつだよね?」
入浴後、用意されていた衣服に袖を通したかすみ。

彼女が今着ている服は、その全てが有名なブランドの物であった。
一度躊躇したが、それ以外に着ることの出来る服がなかった為、他の選択肢はなかった。

「はい、大丈夫ですよ。それは近々着古して破棄する予定のものでしたから。むしろ、かすみさんに着ていただけたので服も誉れ高いと思います。」


確実に分かることがあった。
それは、かすみが着ている物は全て、着古したものではないということであった。
ほつれやへたれなど一切ない。
それに、つい最近広告が出されていたものばかりであった。
新作で、新品なのだ。

もう一つ、気になる点がある。
それは、明らかにエルが自身の為に購入したものではないと考えられることだ。
エルの身長では丈が足りないのだ。
しかし、かすみが着れば、全てがぴったりだ。

考えたくない。
しかし、恐らく、それが意味するものが分かってしまった。
これらは、エルがかすみの為にわざわざ用意したものだ。

こんな高いものを、幼馴染とはいえ、こうも易々と買ってしまうのか。
恐ろしく思うかすみであった。


「これ、洗って返すね。」

「いえ、それらは全てかすみさんに差し上げるために……ごほん、失礼。」

これで誤魔化せると思っているのだろうか。
つい苦笑いしてしまうかすみ。
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