あなたにかざすてのひらを

あさまる

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かすみは、彼女が言わんとしていることが分かった。
普段から話すことが得意なわけではないゆかり。
初対面の人物に人見知りをしているのだろう。

「すみません、エルちゃ、じゃなかった。……か、神良先輩いますか?」
ゆかりの代わりにかすみが言う。

「え?エル様ならもう帰ったと思うけど……。」

帰った?
「ほ、本当ですか?」

「え、うん……。というか、あなたよくエル様と一緒にいる子だよね?」

かすみは驚いた。
エルとゆかり。
彼女らはその美貌やオーラから人気があり、知名度も高いのは知っていた。
しかし、自身が認知されていることは考えていなかったのだ。

「そ、そうですけど……。」
初めての出来事である為、戸惑いを隠せないかすみ。

エルやゆかりと幼馴染。
その事実を知る者はそれほどいないだろう。
その為、平凡な自分が彼女らと仲が良い。
そのことに嫉妬している者や、快く思っていない者もいるだろう。
彼女もその一人であったらどうしようか。

「やっぱ、そうなんだね!ねぇ、普段のエル様ってどんな感じなの!?」

「え?あ、えっと……普段のエルちゃんですか……。えっと普段は……普段か……。」

エルは普段どんな人物だろう。
改めて考えると、説明できない。
なぜだろう。
幼馴染のはず。
そのはずなのに、そんな簡単なことが出てこない。

「……そこまで。すみません、先輩。私達急ぎますので……。」

思案するかすみ。
そんな彼女の考えを断ち切ったのは、ゆかりであった。

「え?そうなの?……もう少しだけ駄目?」

「……駄目です。すみません、急いでますので……。」

「分かった。気をつけて帰ってね。」
多少粘っていた。
それなのに、すんなりと受け入れ、彼女達から離れていった。


「……行こう?かすみちゃん。」

「う、うん。」
ゆかりに手を掴まれる。
そして、そのまま引きずられるようにその場を後にするかすみであった。


通学路を歩く二人。
いつも隣にいるエル。
彼女がいないだけで、少し寂しく感じるかすみであった。

「……かすみちゃんに何も言わずに帰るなんてエルも酷いことするね。」

「……。」

「……かすみちゃん?どうしたの?」

「ごめん、ゆかりちゃん。私、エルちゃんの家に行ってみる!」

「……え!?」
かすみの突然の言葉に驚くゆかり。
珍しく大きな声を出してしまうのであった。
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