あなたにかざすてのひらを

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6ー4

「おはようございます、皆さん。」

所変わり、エルの教室。
彼女もまた、注目の的であった。

ごきげんよう。
そんな挨拶、彼女以外にはしない。
その気品のある仕草や見た目。
それらがクラスメイト達にそう言わしているのだ。

彼女らは、ゆかりのクラスメイト達と違い、必要以上にエルに話しかけることはない。
そんな行為は烏滸がましい。
そう思っているからだ。

同じクラスにいるだけで、クラスメイトとして挨拶を出来るだけで満たされていた。

窓際の席。
エルは自身の席に座り、空に浮かぶ雲を見ている。

特別な動きではない。
しかし、そんな姿すら彼女が行えば画になる。

「はぁ……早くかすみさんにもう一度会いたいです……。」


時は進み、昼休み。
彼女らの待ちに待った時間がやって来た。

早速席を立つエル。
そんな彼女の前に、クラスメイト達が立っていた。

「皆さん？」
どうしたのだろう？
目の前の彼女らに言うエル。

「エ、エル様？たまには私達と一緒にお昼でもどうかな……？」

なるほど、そういうことか。
「すみません……その……。」

「どうしても……どうしても駄目かな？」
声が震えている。

ふと、目の前の彼女に、自身の過去が過る。


「私と……私と友達になってくれませんか？」

「うん！良いよ、よろしくね、エルちゃん！」

大切な思い出。
それが蘇った。


無下には出来ない。
しかし、自身の生き甲斐を急遽なくすわけにもいかない。

「すみません、今日は先約がありますので……。」

「そ、そうだよね……ごめん。」

エルの言葉に悲しそうに眉を垂らす。
そんな彼女に、心がちくりと痛む。

「しかし……もしも……。」

「うん？」

「もし、明日も誘って頂ければご一緒したいです……。図々しい申し出ですみません。」

エルの言葉。
それに、目の前の彼女の表情がパーッと晴れる。
それを見て、言って良かったと思うエルであった。

「うん！よろしくねっ！」

「はい、では私はこれで……。」
そう言うと、エルは教室を出た。


廊下を歩く。
先ほどまで話して彼女が着いて来ていないことを確認するエル。

良かった。
未だに教室内にいる。

「どうしましょう……。明日のお昼、かすみさんに会わずに……私、我慢出来るでしょうか……。」
ぽつり。
ため息をつき、そう呟くエルであった。