あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「遊びに行くんでしょ!?」


そうだった。
二人は思い出した。

休日。
その為、かすみの家に泊まりに来たのだ。
そして、今日は彼女と遊びに行くことになっていた。

「お、起きます。起きますから……。」

「……その、カーテン閉めて。」

「あ、あぁ、ごめんね。」
慌てて窓へ向かい、カーテンを閉めるかすみ。

すっかり忘れていた。
確か彼女ら二人は以前言っていたはずだ。
皮膚が弱いので直射日光を避けなければならない。

幼馴染。
いつも一緒にいたはずなのに、そんなことを忘れてしまっていた。


「よしっ!行こうか!」

身支度を整えて玄関を出る三人。
赤と黒の日傘。
その間にかすみ。
それが彼女らのいつも通りであった。


「こっち!こっちに行きましょう、かすみさん!」

「……駄目、かすみちゃんは私とこっちのお店に行くの。」

三人の家から少し離れた場所。
大型ショッピングモール。
電車を乗り継いで、彼女らはそこに来ていた。

かすみの右腕をエルが、左腕をゆかりが掴み、引っ張りあっている。
どちらが彼女と店内に入るか争っていたのだ。

周りの視線が痛い。
早くこの事態を解決したいかすみ。
「じゃ、じゃんけん!じゃんけんして勝った方から行こう?ね?」

「むっ……仕方がありませんね……。」

「……かすみちゃんが言うなら……。」

両サイドからの力が弱まる。
良かった。
腕への痛み、そして、視線の痛みがなくなっていく。


「あいこでしょ、あいこでしょ、あいこでしょ。」

「……あいこでしょ、あいこでしょ、あいこでしょ……。」

一体いつまで続くのだろう。
一休み出来るように置かれたベンチ。そこに座り、エルとゆかりがじゃんけんをしている。
しかし、決着が着く気配は感じられない。

「二人とも仲良いね。」
つい出てしまったかすみの一人言。

「そんなことありません!」

「……そんなことない!」

息ぴったりではないか。
苦笑いするかすみ。


その後もまだ続く。
一体どこまで続くのだろう。
思えば以前もこんなことがあった気がするかすみ。

何が原因だったのかは分からない。
それは、かすみにとって、それほど些細なものであった。
その時はどう解決しただろう。
思い出そうとするかすみ。


「あっ……。」
思い出した。

「かすみさん?どうしました?」

「……かすみちゃん?」
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