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いつ生まれたのか。
どこで生まれたのか。
そんな昔の話、本人ですら思い出せるわけがないだろう。
時代の移り変わり。
彼ら彼女らは、様々な人物や、歴史的な事件を目の当たりにしてきた。
人よりも遥かに長い寿命。
そして、超人的な力。
人のように見えて、人ではない存在。
しかし、それでいて、人に依存しなければ生きられない。
それが、彼女らであった。
「お疲れ様です。」
そんな声で目を開く。
長時間寝ていたから身体中が少し痛い。
病院のような造り。
真っ白な天井が最初に視界に飛び込む。
「……看護師さん、あちらももう終わった?」
「はい、神良様も間もなくかと……。」
女性が答える。
その視線は、彼女の持っているカルテに向けられていた。
「……そう。」
自身が質問した。
しかし、それなのにやや興味なさそうに言った。
「今回も、また報酬はいつも通りで?」
「……うん。半分私の家に、もう半分は紅花家に。」
「……。」
「……なに?」
「い、いえ……。」
「……あっそう。」
言いたいことなど分かる。
なぜかすみに固執するのか。
それが気になるのだろう。
そんなもの、同族でなければ分からないだろう。
言葉での説明など無意味。
この快楽はどのような媒体を使用しても完全に説明しきれない。
一度でも体験しなければ無意味なのだ。
室内の扉が開く。
「ゆかりさん、お疲れ様です。」
「……うん、そっちも。」
「では行きましょうか。」
「……うん。」
室内から二人が出ていく。
「……。」
緊張の糸がプツリと切れた。
その場にへたり込む女性。
恐怖心。
得体の知れない彼女が恐くて仕方がなかったのだ。
彼女の持っていた数々の書類。
それらが床に散らばっている。
「……化物……。」
ぽつり。
誰もいない病室で、そう呟いた。
機械的で白い明るさ。
その蛍光灯に照らされながら歩く二人。
エルとゆかりだ。
「今日はお泊まりの日だったはずです。もう、このままかすみさんの家に行きましょう。」
「……賛成。」
二人の目的地は決まった。
出入り口から外へ向かう。
外は夕日に染まっている。
二人は日傘を差して歩き出した。
インターホンを鳴らす。
微かに聞こえる足音。
それすらも愛おしい。
扉が開かれる。
「こんばんは、かすみさん。」
「……こんばんは、かすみちゃん。」
どこで生まれたのか。
そんな昔の話、本人ですら思い出せるわけがないだろう。
時代の移り変わり。
彼ら彼女らは、様々な人物や、歴史的な事件を目の当たりにしてきた。
人よりも遥かに長い寿命。
そして、超人的な力。
人のように見えて、人ではない存在。
しかし、それでいて、人に依存しなければ生きられない。
それが、彼女らであった。
「お疲れ様です。」
そんな声で目を開く。
長時間寝ていたから身体中が少し痛い。
病院のような造り。
真っ白な天井が最初に視界に飛び込む。
「……看護師さん、あちらももう終わった?」
「はい、神良様も間もなくかと……。」
女性が答える。
その視線は、彼女の持っているカルテに向けられていた。
「……そう。」
自身が質問した。
しかし、それなのにやや興味なさそうに言った。
「今回も、また報酬はいつも通りで?」
「……うん。半分私の家に、もう半分は紅花家に。」
「……。」
「……なに?」
「い、いえ……。」
「……あっそう。」
言いたいことなど分かる。
なぜかすみに固執するのか。
それが気になるのだろう。
そんなもの、同族でなければ分からないだろう。
言葉での説明など無意味。
この快楽はどのような媒体を使用しても完全に説明しきれない。
一度でも体験しなければ無意味なのだ。
室内の扉が開く。
「ゆかりさん、お疲れ様です。」
「……うん、そっちも。」
「では行きましょうか。」
「……うん。」
室内から二人が出ていく。
「……。」
緊張の糸がプツリと切れた。
その場にへたり込む女性。
恐怖心。
得体の知れない彼女が恐くて仕方がなかったのだ。
彼女の持っていた数々の書類。
それらが床に散らばっている。
「……化物……。」
ぽつり。
誰もいない病室で、そう呟いた。
機械的で白い明るさ。
その蛍光灯に照らされながら歩く二人。
エルとゆかりだ。
「今日はお泊まりの日だったはずです。もう、このままかすみさんの家に行きましょう。」
「……賛成。」
二人の目的地は決まった。
出入り口から外へ向かう。
外は夕日に染まっている。
二人は日傘を差して歩き出した。
インターホンを鳴らす。
微かに聞こえる足音。
それすらも愛おしい。
扉が開かれる。
「こんばんは、かすみさん。」
「……こんばんは、かすみちゃん。」
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